陽織 学園祭で疲れる?
本物の巫女がいるSクラスの文化祭の出し物は、神社喫茶。
メニューは和菓子にしよう、ということになり、お団子やお饅頭、磯部焼きに飲み物。そして、シャレでジンジャーエールになった。
神明祭は土日の2日。
1日目は学内の生徒と教員だけ、2日目は保護者ゆ受験生、招待客も来る。
「それじゃあ、今日も一日頑張ろう!」
二日目の朝、実行委員の掛け声で、神社喫茶オープンだ。
巫女服姿の女子が給餌してくれる。
それが話題になり、他のクラスのメイド喫茶や大正ロマン喫茶の上を行く人気。
初日は恥ずかしかった陽織たちも、メイド服に比べたら、と開き直ってしまった。
朝一番の開店に並んでいたお客様を中へ案内すると、黎人と悠人がやってきた。
2人が並んで歩くだけで、女子が視線を向けるのに、そこに巫女服姿の美織と陽織がいたから、廊下はすごいことになっている。
「すみませーん、神社喫茶にお並びの方はこの後ろから、整理券を配ります。整理券に書いてある時間に、再度ご来店下さい。」
あまりの人気に実行委員が急遽、整理券方式と時間制限を設けた。
そうしないと人数が捌けない。
「陽織さん!」
黎人に声をかけられて、陽織は美織の背中に隠れた。
「ちょ、陽織ちゃん、なんで隠れるの?」
いや、別に。と答えたかったが声にならず
「ちょ、ちょっとおトイレ!」
と言って、廊下を歩いて3人の前を去ろうとした。
その時、陽織は見知らぬ男性にぶつかってしまう。まるで漫画のワンシーンのような状況。
すると
「あ、すみません。この子ちょっとトイレに急いでいて。」
と後ろから黎人が、ぶつかった人に謝っていた。
ぶつかった人もイエイエ、と笑って手を振って行ってしまった。
陽織はどうしたら良いのか分からず、そのまま廊下の隅にソソソっと寄る。
黎人は、いつも通りニコニコと、
「可愛いね!巫女姿の陽織さん!」
と、言ってくれた。
陽織は、つい数日前、黎人にキスをされる夢を見てしまった。なんで?どうして?わたし、欲求不満?
と、今朝黎人の顔を見た途端に思い出し、恥ずかしくなった。
ないないない!頬はあっても、口なんて口なんて!
ん?
陽織の百面相に気づいた黎人が、陽織の顔を覗き込んだ。
陽織は慌てて
「あ、美織ちゃんのところ、戻らなくちゃ。」
と、教室の方へ向かって歩き出した。
黎人はクスクス笑いながら、そんな陽織の後ろをついて行った。
その後、黎人は陽織の休憩時間を待っていてくれた。
巫女服は目立つので制服に着替えて、黎人と歩く。
どこを歩いても、どこに行っても、多くの視線が集まるので、陽織は落ち着かない。
巫女服は脱いだものの、慣れない着物だったからか、暑さのせいか、人が多すぎるのか、寝不足か、少しクラクラする。
校舎裏のベンチに座って休憩。
ここなら、あまり人が来ない。
「穴場なんだよ。」
と、黎人が笑って言った。
黎人が神社喫茶で買ってきたお団子を出した。
「はい、あーん?」
そう言われて、陽織は口をあけ黎人が持つ串団子の一番上を食べる。
と、その下を黎人がパクっと口に入れていた。
しばらくすると、陽織は先ほどまでの緊張が抜けたのか、フラッと黎人の肩に倒れ込んだ。
なんだろう、唇からスーッと心地よい風が入ってくる。気持ち良い。安心する。
ハッとすると、陽織は黎人に抱き締められたまま、少し眠ってしまったようだ。
「え、えと、ごめんなさい。」
「大丈夫?まだ、顔色あんまり良くないけど。」
また、やってしまった!
陽織は顔を赤くして黎人の腕を振り解こうとした。しかし、本当に心配しているのか、黎人の腕は振り解けない。
振り解けない?
なんだろう。黎人さんに抱かれていると安心する。嬉しい?幸せ?気持ち良い?ホッとする?ずっとこうしていたいような‥。
そんな心地よさにまた目が閉じかけてしまう。
その時、黎人の口から
「陽織さん、陽織、僕のお嫁さんになってくれる?」と言う言葉が。
その途端、陽織は覚醒し、パッと立ち上がった!
「それと、これは、違います!」
なにが?と、黎人は不思議な顔をしていた。




