第二章 陽織 学祭準備を楽しむ?
まだ残暑厳しいというのに、9月1日になると、なぜ新学期が始まるのだろう。
陽織は制服に袖を通しながら、ぼーっと鏡の前の自分を見た。
サマースクールでΓクラスに落とされた陽織は、他のクラスメイトより、古文の課題がなぜか多かった。
昨夜はその課題を終わらせるため、ほぼ睡眠が取れなかった、というのが今の状態。
この頭で、あの暑さを歩いたら、やばい。
わかっていても、遅刻はできない。
なぜなら、真面目くんの兄が、先ほどから玄関で待っているから。
「大丈夫か?」
と言いながら、手伝ってくれなかったのは、どこのどいつだ!と、言い返したいところを、ぐっと抑えていた。
陽織が玄関を出ると、高嶺が車を用意して待っていた。
さすが、高兄様!
たとえ10分弱でも、車の中で睡眠が取れるのは、ありがたい!
学校の正門には、当番なのか担任で古文担当の大神が、偉そうに足を広げて立っていた。
「おはよう、って、なんだ?陽織、目が死んでるぞー!」
新学期一番の挨拶がそれか?
陽織は睨む気も失せて、ぼーっとしたまま、挨拶を返した。
(悪魔めー!)
以前、鬼!と言ったら、酒呑童子を使役する大神は、逆に大喜びした。
(もう、絶対言わない!)
始業式の後は、再来週行われる明王中高の学園祭「神明祭」の話し合いだった。
一学期のうちに、Sクラスは神社喫茶?(なんだそりゃ?)に決まっていた。
簡単にいうと、男子は神職、女子は巫女服でカフェをやる、ということ。
一部の男子(湊人)は、猛反対したが、女子の中でも、巫女服着たい!という希望が多く、通ってしまった。
今日は、メニューの内容や、服の調達、内装などを話し合っている。
そして、話し合いの間、陽織は爆睡していた。
それを知らない、斜め前の千織がくるっと後ろを向きながら
「黎人さん、絶対喜ぶよ!」
とニヤニヤしながら声をかけてきた。
しかし、陽織な机の上で爆睡中!
「それじや、メニュー考案は神城、神先、神澤、神月の4人な。当日は、巫女服で接待、と。」
ホワイトボードに実行委員が書き出す。
「巫女服の調達は、犬神と楠木‥。」
前の方では巫女服調達メンバーが、作るか、アキバでコスプレ衣装を買うか、で話していた。
次々と担当が決まる中、陽織は夢の中。
気づくと話し合いは終わっていた。
帰り道、かなり寝てスッキリした顔をする陽織に、美織たちは思い切り呆れていた。
「図書館でお話はできないから、学食に行きましょう。」
美織の提案で、学食へ行く。
が、みんな同じことを考えているのか、学食はいつもよりも混み合っていた。
ちょうど隅に4人分の席が空いていたので、飲み物を持って移動した。
と、隣は和嶺が座って、友人と定食を食べていた。
「あら、和兄様。もしかしたら美織ちゃんとしめし合わせていたりして?」
陽織の言葉に過剰に反応したのは、和嶺ではなく、美織の方だった。
「え?あ、いや、偶然よ!偶然!」
しかし、美織が席を探してキョロキョロしているところ、和嶺が手招きしていたのを、陽織は見逃していなかった。
「兄様、今日は遅くなるの?」
陽織が聞くと
「んー。これから学祭の話し合い。」
と、最後の麦茶を飲み込むと、友人と席を立ち手を振って行ってしまった。




