陽織、龍に乗る
女性2人は一階の裏口付近で見つけられた。
しかし、まだ男性3人は見つかっていない。
今いるのは、この建物の最上階となる四階。
しかも、ここにはかなりの大物がいる。
小さな子どもの霊が全て昇華されて行ったあと、残るは男性3人の行方と、かなり強い大物の霊だった。
「四階にも手術室があるの?」
陽織はどこからが漂う血の匂いに、また口と鼻を抑えた。
「いや、違う。あれは。」
高嶺が言いかけて、陽織と黎人の方を向く。
「犯人の霊だ。」
黎人が答えた。
陽織はその言葉を聞くと、知らないうちに拳を握りしめていた。
「許せない!地獄に送ってやる!」
陽織が顔をあげて高らかに宣言したが、それはダメだろう。
「まあ、ここまで悪いことをやっていれば、地獄行きだろうね。」
悠人が苦笑いした。
「でもどうして四階?」
湊人の声に全員が振り向くと、小さな声が聞こえてきた。子どもではない、大人の声。
「や、め。」
「助け、」
途切れ途切れに聞こえる声の方へ、少しずつ進んで行く。
扉をそーっと開けると、そこはベッドカバーなどを保管するリネン室だった。
狭いリネン室の中に、大人の男性が三人重なるように倒れている。
血だらけの者。
気を失っている者。
そして狂気に震える者。
「大丈夫か?」
高嶺がそばに駆け寄ると、血だらけの男性が手を上に上げ何かを掴むようにしている。
その下には気を失っているのか、それとも。
全く意識のない男性が下敷きにされていた。
狂気に震える人は立ち上がると、いきなり高嶺に襲い掛かり返り討ちに合う。
「狭いな。」
高嶺が血を出す人を引き摺り出し、そこに2人の兄が手を貸して意識がない人も廊下に出した。
最後に高嶺が昏倒させた人も外に出すと、その足にもう一人の手がしがみついている。
汚れた白衣を纏った、初老の男性だった。
「四人?」
「コイツか。」
しかも、その手にはメスが握られていて、血を流していない二人からも、出血の痕が見られた。
悠人は、その手を掴み捻りあげるが痛みを感じていないのか、ずっと薄ら笑いを浮かべている。
そこに黎人がスッと指を突き刺し、力を込める。
メスが床に転がり、悠人が遠くへ蹴り飛ばした。
それでも這いずりメスを探そうとする。
しかし黎人の指が男性の動きを止めている。
黎人が目を閉じて祓いの言葉を呟くと、その男は
徐々に苦しみ始め、目を見開き黎人を睨んだ。
陽織はただその姿を見つめていた。
男性は、やがて霧のように姿を変えて、消えて行った。
霊障がなくなったのか、薄暗さはなくなった。徐々に建物全体がただの古ぼけた病院に姿を変える。
「高嶺さん、3人は?」
湊人が廊下にいる高嶺と、男性3人のところへ駆け寄った。
「一人は出血は多いが意識はあるようだ。」
高嶺が応急処置をして止血している。
精神的にダメージを受けてしまった人は、そのまま起こして何があるかわからないので、とりあえず担いで降りることになった。
意識を失っていた人は、友人と湊人によって意識を取り戻し、なんとか階段が降りられそうだ。
それぞれ三人の男性を担ごうとした時、三匹の龍が姿を大きくして、それぞれを背に乗せた。
急に体が浮いた二人は驚いて落ちそうになったが、龍の主が後ろで支え、下まで無事に降りた。
しばらくすると白龍が戻ってきた。そして何か黎人と話している。
(え?龍と話してる?)
すると、黎人が近づいてきて白桃を出すように言った。
「ハク、頼むよ。」
黎人が白桃にそういうと、白桃が大きくなって大量の光を出した。
「ハク?」
陽織はこんな白桃を見たことがない。
「ハクはね、こういう所を浄化させることができるんだ。」
黎人がニッコリ笑って言う。
白桃が陽織の腕の中に戻ると急に身体が浮き上がる。
「じゃあ、僕たちも下へ戻ろう。」
黎人がそう言って陽織を抱き上げ、白龍の背に乗った。
『我が主人様、花嫁はとても可愛らしい方ですな。』
白龍に言われ黎人の顔がニヤけた。




