陽織、十字架をさげる
この病院がもし陽織の想像通りなら、上の階にいるのも子どもの霊になる。
そう2人は考えた。
子どもで大物?一体どんな恨みが残っているんだ。
三階へ行くと、悠人と湊人が三人を待っていた。
「良かった、まだここにいて。」
高嶺はそう言って、二階であった出来事を話す。
陽織の想像通りなら、と言う話しをすると、二人も思い当たることがあったのか、目を合わせた。
「なんとなく、子どもかな?って気はした。」
「なんか、すごく感情むき出しって感じで。」
すでに怒りモードの黎人と高嶺に加え、話を聞いた二人も今まで以上、気持ちが引き締まる。
「霊は悪くなくても、やっぱりこんなところにいちゃいけない!」
「うん。ちゃんと、送ってあげよう。」
四階へ登ると、二階、三階とは違う気配が強くなる。
陽織は黎人に、もう大丈夫、と言うとまだ少し潤んだ目を、強く前に向けた。
(そうだ!ちゃんと送ってあげなくちゃ!)
陽織は長野でコーチから受け取ったものをポケットから出して、首に下げた。
怖がりの陽織に、と言って、クリスチャンの彼女がくれた十字架だ。
海外が長いコーチらしい。
「え?」
「うわっ!」
「まじ?」
神代三兄弟が目を向く。
(いや、同じ神様でも、うちはキリスト教じゃないんだけど!)
(まあ、あれも気持ちの持ち様だから!)
その会話を聞いて高嶺は頭を抱えたくなった。
四階も階段を上がって中央まで来ると、右手と左手に別れる。
気配は右よりも左の方が大きい。
一番小柄な陽織が引きずられないよう、必ず誰かが後ろから助けられる陣形を作った。
高嶺が小声で「龍太郎」と黒龍を呼ぶ。
湊人も「銀」と同じように呼んだ。
悠人は白龍を呼んでいる。
黎人を見たら、右手と首を横に振られた。
小さく力を抑えたとはいえ龍3匹、3頭?3羽?は、相手も気づくだろう。
どこからか聞こえていた声が怯えたように小さくなる。
逆にはしゃぐような声もあった。
子どもの声。
「かっこいいだろう?この子たちはすごく優しいんだ。怖くないよ。出ておいでよ。」
黎人が優しい声で話しかける。
しばらくすると、ぼんやりとした小さな光が一つ、二つと集まってきて、子どもの姿に変わる。
3匹の龍は、子どもが近づいても何もしない。大人しく撫でられている。
陽織はこれなら、とハクを出そうとしたが、黎人の手で止められた。
そのうちたくさんの光が近寄るたびに、子どもの姿にかわり、そして龍のそばで、消えて行く。
(ちゃんと送ってあげているんだ。すごい!)
陽織は黎人の背中に隠れて、その様子を見ていた。
キラキラと、一つ二つ三つ、集まった子どもは、はじめのぼんやりした光ではなく、綺麗な光になって、消えて行った。
まるで白い雪の結晶のように。
「さてと、それじゃ大物に行きますか?」
「ところでヤローどもはどこだ?」
そういえば、男性3人の姿は見ていない。
もしかしたらどこかで、切り刻まれてしまったのだろうか?それはそれで怖い。




