↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
294/301

陽織、生き霊に会う(神様の娘編)

今回はムーゼの森というところに行く。

絵本の森美術館やおもちゃ博物館がある、というので、鷹人も興味がありそうだ。

カナダに行った時は、ほとんど黎人も陽織も仕事や論文目的で、鷹人はその間、カナダの保育園で過ごしていた。唯一の観光が、陽織と行ったナイアガラの滝。

今回は、観光や遊びに連れて行ける。


まずは絵本の森美術館に入ると、本好きの鷹人は目をキラキラさせながら、色々な本を夢中になって見ている。


さらに、陽織もピーターラビットの絵本の展示コーナーでは、なかなか動かず見入っている。

あまりにも夢中で、今にも姫花を落としそうになり、黎人が変わって抱いた。

「ほらほら、姫ちゃんのお洋服と一緒だよ!」

というが、姫花には全くわからないだろう。

「可愛い、可愛い!ね、黎人さん、わたしポストカード欲しい!買って良い?」

と鷹人以上にはしゃいでいる。


そのあと、おもちゃの博物館にも移動した。

中は子ども連れの家族がたくさん訪れていて、鷹人も同じくらいの子どもがたくさんいることに、いつもよりはしゃいでいる。

同世代の子ども、というと、レイリー以外で出会うことがほとんどない。

家の周りはお屋敷だらけで、公園も落ち着いたものばかり。陽織が大学生だったことで、保育園以外で遊ぶ相手は美咲だった。

おもちゃで遊ぶと言っても、レイリーの友だちだけ。わりと世界が狭い。  


そのためか、同世代の子どもがぐずったり、喧嘩したり、駄々を捏ねる、というのが、鷹人には不思議な光景に見えた。


「どうしたの?たっくん。」

「ねえ、あの子、迷子?なの?」

鷹人が指を指した先に、1人の女の子がいた。

アンティークなドレスを着た、薄茶色の髪をした綺麗な子だ。

陽織はその子をうーん、と唸りながら凝視する。

別におかしなところはないが、周りの子どもたちは無視している。

「へえー、珍しい。生き霊だねー。なんでこんなところにいるんだろう。早く戻らないと、戻れなくなるよ。」

黎人が陽織の耳にコソッと話しかけた。

やっぱり普通の子じゃない。

生き霊、ということは、どこかにこの子の本体はある。そして、おそらく意識はない。

しかも、ぱっと見日本人離れしている。

「本体はどうしちゃったんだろう。」

「意識的に離れているのか、それとも事故か何かで、突然離れちゃったのか。」

「パパ、あの子戻らないと、死んじゃうの?」

そうだ。その可能性はある。あんな小さな子が意識的に離れるなんて、ありえない。


鷹人はいつのまにか、女の子の近くに寄って話しかけている。周りの人は、気味が悪そうな顔をする。

それはそうだ.何もないところに向かって、話しているのだから。

しばらく話しをすると、鷹人は女の子の手を引いてやってきた。

「あのね、車に乗ってたんだって。そしたら、何かにぶつかったみたい。」

鷹人の話で、事故の可能性が大になった。

「まあ、これだけ目立つ子なら、搬送された病院もわかるだろう。」

黎人はそう言うと、どこかに電話をかけた。

おそらく、神嶋あたりだろう。


それから数分後、女の子の身元と、搬送先の病院がわかり、鷹人が送って行きたい、と言い出した。

「どうやって、送るの?」

と、陽織が聞くと黎人が

「ちょっと人目のつかないところに行こう。」

と陽織の手を引いた。


黎人は小龍を出すと、病院の場所を教えている。

そして、ハクを出すように陽織に言う。

「鷹人、その子の手をしっかり掴んで。」

黎人が言うのと同時に陽織が

「ハク!お願い!」

と叫ぶ。


ほとんど間髪を入れず、4人は軽井沢にある、総合病院の廊下にいた。病室の中に女の子が、たくさんのチューブに繋がれて眠っている。

陽織は、女の子の霊に

「さあ、あそこにあなたがいるよ。帰れるよ。」

と声をかけた。鷹人も

「バイバイ、またね。」

と言って手を離した。

すると、女の子の生き霊がすーっと消えて、数分後、中で、女性の喜ぶ声が聞こえた。

「良かったね。戻れて。」

「うん、じゃあ僕たちも、戻ろう。車もあっちに置きっぱなしだし.」


「じゃあ、ハク、また戻して。」

今度は黎人が言う。

陽織は行きで4人を移動させたことで、かなり消耗してしまった。

博物館の裏手にある、林の中に戻ると、とっさに黎人は陽織にキスをする.本当はそれくらいでは足りない可能性があるが、今は仕方がない。


「どこか良いお店があったら、少し早いけどお昼にしよう。」

黎人がそう言って、車に乗り込んだ。

この後は展望台に登り、それから軽井沢教会へ行く。

その間に、黎人は昼食を取る場所を探した。


車を走らせしばらく行くと、素敵な古民家風のお店があった。黎人が調べると、畳敷きの個室もあるとのことで、そこに入ってみることにした。


「いらっしゃいませ。」

明るい声に迎えられ、開店間近の店に入った。

小さい子連れ、と言うこともあり、快く希望の部屋に案内されると、陽織は真っ先にオムツを変えて、先ほどからグズグズ始めた姫花に母乳を上げ始めた。

しばらくすると、店の人が水と注文を取りに来た。


「いらっしゃいませ。」

女性が個室の戸を開ける。

黎人がその女性を見て、あれ?と言う顔をした。

そう、あの教会で出会った女性だった。

「まあ、あの時のカップルさん!確か去年も、お会いしたわよね。」

「あ、お久しぶりです。」

「パパ、この人、だれ?」

「え?あ、え、と。」


黎人も顔しか知らない。

だれ?

「あ、ごめんなさい。この店の女将の藤上良子です。よろしくね。」

「あ、こちらこそ。神代と申します。」

黎人がお辞儀をした。

「神代鷹人です。3歳です。」

鷹人が続くが、陽織は現在後ろを向いて、姫花に母乳をあげている。

「あらあらが丁寧に。ご注文がお決まりになりましたら、ベルを押してくださいね。」

そう言って、良子は戸を閉めた。


「姫ちゃん、お腹いっぱい?」

陽織は姫花にゲップをさせると、そのまま、しばらく抱いている。


数分後、良子を呼んで、信州牛の定食と地鶏定食、子ども向けのランチを注文する。

「こちらは、女将さんがおひとりで?」

「いえ、主人が6年前に脱サラしましてね。以前は都内の製薬会社のサラリーマンだったんですよ。」

オホホ、と笑う。

「なぜ、お辞めに?」

「なんでも、社長さんが若い方に交替されるからと。そういえば、主人がいた会社と同じお名前ですね。」

良子は笑っている。


黎人は、しばらく考えて

「父は今でも、会長として一線にいますよ。」

と返事をした。


注文の品が揃って食事をしていると、良子がお茶をもぅてきた。

お肉もご飯も美味しいが、陽織は相変わらず食べきれない。お肉の半分は鷹人が食べている。

ご飯も半分食べられない。

「陽織、さっきハクを使ったんだから、もう少し頑張って食べないと。」

「いつもより、頑張って食べたよ!」

仕方なく、残りを黎人が食べる。

そのとき、部屋の戸がノックされた。

「はい?」

戸が開いて、白い調理着姿の男性が現れた。


「黎人坊ちゃん、お久しぶりです。」

ご飯を食べていた黎人が、思わずむせた。

「ゴホッゴッ。」


「ぼっ、ちゃん?」

黎人も、目を見開いている。

陽織は思い切り吹き出し、下を向いて笑ってる。

「ぼっ、ちゃん?て、だれ?」


「あの、15年ほど前、坊ちゃんにドイツ語の先生を紹介させていただきました、藤上です。」

「黎人さん、ドイツ語習っていたの?」

「陽織よりは下手だよ?」

黎人は、そのあとの15年が色々ありすぎて、子どもの頃の記憶が途切れ途切れだが、なんとなく思いだした。ただ、坊ちゃんだけは、辞めて欲しい!

「あ、え、と、お久しぶり、です。」

黎人は、気まずさを隠しきれずに挨拶をした。


「ご立派になられて、評判は八神たちから聞いております。大変、素晴らしい若社長だと。」

「はあ、恐縮です。」

黎人は、どう返事をしたら良いか、わからない。

「あ、えと。わたしの家族です。その、妻の陽織と、息子と、娘です。」

そう言われて、陽織は居住まいを正して挨拶をする。

「あ、その、よろしかったら、上がってください。」

黎人は藤上に席を勧めた。

「あ、こちらこそ、申し訳ございません。ご家族でお食事のところを。」

失礼いたしました、藤上は戻って行った。


その後、黎人も鷹人も食事をおえて、会計を済ませると、良子に

「また、来ますね。」

といって、店を後にした。


















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。