↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
292/301

陽織、お料理の違い(神様の娘編)

いつのまにか、キッチンは、羽織1人になっていた。

とりあえず、三友記念美容院の調査の話が終わったが、料理はもう少しらしい。

「えー.みんな陽織のところに行ったの?」

と、宏輝が言う。

「俺たちも、いこーか。」

と湊人が言うと、いきなり黎人からゲンコツを食らった。

「女子だけだ!もし、姫花がオムツを変えたり、母乳を飲んでたらどうするんだ!」

と、怒られた。

それを聞いた、颯斗を始め慣れない男子3人は、赤くなりまたソファーでおとなしく座っている。


「こっちももうすぐ終わるから、宏輝たちはおとなしく待ってて!」

羽織に言われると、2人もおとなしく腰掛けた。


その時、大樹がサイドボードに飾ってある、陽織の写真に気づいた。

高校生の時、卒業式、結婚式、子どもが生まれた時、どの陽織も可愛い。

姉の麻美が、同じ従姉妹なのに、といつもイラついている人。幸せそうな陽織の笑顔を見ると、姉が少し可哀想になる。

前に、円香の母が、陽織なりにきっと大変な思いもしたにちがいない、と言っていた。でも、この写真からはわからない。

その横顔に気づいた黎人が、

「どうしたの?」

と、聞いてきた。

「あ、いえ。僕の従姉なんだな、と思って。」

陽織はあまり大樹や麻美の話はしない。

ずっと、嫌な思いをしてきたから。

「陽織は、僕と会わせないために、ずっと力を封印してたんだよね。」

え?

大樹は知らなかった。

「あれ?知らなかった?君のお祖父様の命だったみたいだけど。だから、会ってすぐの時、花嫁を辞退したいって言われたんだよ!」

黎人が苦笑した。

「できるわけ、ないのに。」

黎人は呟くように言う。

「今も変わらず、可愛いでしょう。陽織は18歳の時から、成長が止まっているから。」

大樹は、そんなことを聞いていいのか?という顔て、黎人を見た。

「ここにいる、湊人や羽織さんたちはみんな知ってる。知ってる上で、僕たちと一緒にいてくれる。陽織は特に、外を一人で歩くこともできない。さっき、三友の話、したでしょ?ちょっと油断すると、悪霊やら妖やらが、ウジャウジャ群がってくる。

だから、一人で外に出せない。

僕が一緒にいるか、羽織さんたちといるか。

お守りもたくさん持たせたいる。


それでも、何回も異界に連れ込まれたり、誘拐された。怖い思いをたくさんした。

だから、就職したがった。

普通に生きたいって。

普通の人と同じ生活がしたいって。


みんな花嫁になりたい、憧れるって言うけど、そんなにいいかなー。陽織は、いつも泣いてるよ。

ついこの前まで、眠りながら悪夢にうなされて、泣いていた。」

黎人はそう言うと、大樹の方を向き

「それでも、羨ましい?」

と聞いた。


大樹は知らなかった。

ただ、大企業の社長夫人になった。

可愛くて、いつもお洒落な服を着ている。

頭が良くて、運動神経もいい。

誰もが羨む、陽織しか知らなかった。


「大樹もさー、ちゃんと円香守んないとダメだぞ。」

後ろから湊人が言う。

「陽織ほどじゃないけど、巫女も霊に好まれやすいんだ。陽織と美織、祈梨さんが前線離脱している今、千織なんか、ワンシャカついてきて、最近ぎゃーぎゃー言ってるもん。」

そう言う物なんだー、と思っていたら、上から女子たちが降りてきた。

「羽織ー、できた?」

「あ、ナイスタイミング!テーブルの上、セッティングしよう!」

「陽織さんも、もう少ししたら来ますって。」

「姫ちゃんが、寝ないみたい。どうしよーって言ってた。」

そんな声のあと、諦めた陽織が姫花を抱いて降りてきた。

「黎人さん、姫ちゃん、なんか興奮しちゃったのかなー、全然眠くないみたい。」

「んー.夜たくさん寝るからいいんじゃない?」


キッチンのテーブルは8人掛け。

今いるのは、全部で姫花を入れると14人。

仕方ないので、6人はリビングで食べることにした。

「ウチも、父上のところみたいな、20名くらい座れるテーブル必要かなー?」

黎人が言い出すので、陽織がいらない!と即座に答えた。

もう、3階の増築と言い、自分たちの寝室と言い、なんで贅沢なの!?

結果、女子6人と姫花はリビング。

男子5人と黎人、鷹人はダイニングに座った。

食べ始めて5分。

母親が巫女で、陽織の食事をよく食べている湊人は、あまりわからないが、他の4人はなんとなくわかった。

「確かに、霊力が違うかも。」

颯斗が驚いた。

大樹も気づく。陸斗もなんとなく違いがわかる、と言う。その時、黎人が

「陽織、昨日焼いてたフランスパン、僕食べてないんだけど。」

と、言い出した。

隣で鷹人が自慢したらしい。


陽織は立ち上がり、羽織たちにゆりかごの中の姫花を頼んで、キッチンに行く。

オーブンの中に、昨日焼いたフランスパンを2本入れて、温め直し、食べやすい大きさに切って、皿に盛り付けた。

「突然、言うんだもん!」

「昨日も、母上に頼まれたの?」

「ううん、どうして?まだ、冷凍にも何本かあるけど。」

そう答えると、黎人が何か考えてる。

「まあ、いいや!」


?

一皿ずつ、ダイニングテーブルと、リビングのテーブルに置くと、香ばしい香りがした。

それぞれが口にして

「え?何これ、すっごく美味しい!」

「懐かしー、陽織のバゲット美味しいんだよねー。」

「なんか、霊力もすごいんだけど。」

「なんで?こんなにすごいの?」

「お店のより美味しい!」

と、感想を言う。


「どう?湊人はちょくちょく食べてるからわからないけど、これが花嫁のチカラだよ?あ、味は別だからね。陽織が上手なだけだから。」

黎人がドヤ顔で言った。


「陽織、今度、コレを教えてあげれば?それなら、みんな持って帰れるし。」

なるほど、と考える。でも、パンは発酵時間とかあるから、と、陽織は悩んだ。

「んー、考えとく。」

と答えると、

「え?教えてくれるの?」

「わたし、チーズケーキも教えてもらいたい!」

「ケーキもなんですか?」

と、女子がはしゃぎ出した。

すると、

「ちょっと待て!」

と、黎人が止める。

「やっぱりやめよう。前回それで、陽織が具合悪くなったんだから。」

「ん?なってないよ?」

「チョコレートケーキの時!気持ち悪くて、夕飯食べられなかったじゃないか!」

あー、そんなことあった、と陽織が思い出すと

「え?陽織、バレンタインのとき、そんなことあったの!?ごめんね!」

「ごめんなさい、陽織ちゃん!」

と、羽織と千織が謝ってきた。

「大丈夫だよー。わたしが食べないのは、いつものことだからー。」

いや、ダメだろう。


食事の後、陽織はまた姫花を連れて2階へ行った。今度こそ眠くてぐずり出している。

オムツに、母乳!

そしてゲップをすると、姫花はスヤスヤと眠り始めた。

母乳はそんなに飲まなかった。

お腹はたいして空いてなかったのだろう。

甘えたかったから。

だから、陽織はそのままベビーベッドに寝かせずに、しばらく抱いていた。

「可愛い姫ちゃん、ママの可愛い姫ちゃん。どうか、遠くに、行かない、で。」

陽織はどうしても、この前のこと、この先のこと、考えてしまうと、姫花を離すことができなかった。


キッチンも、ダイニングも、リビングも綺麗になった。几帳面な颯斗が最後に何度も確認した。

それでも陽織は降りてこない。

上に上がってから一時間は経っている。

「ちょっと見てくる。」

黎人がそう言って、上がって行った。

部屋に入ると、陽織が姫花を抱いたまま泣いていた。

やっぱり。

「あ、ごめんなさい。」

涙を拭って、姫花をベットに寝せようとすると、黎人がそのままでいいと言って、部屋を出て行った。


黎人が下に降りると、鷹人が小さな声で

「ママ泣いてた?」

と聞いてきた。

なんで、わかるんだろう。

「大丈夫。」

と、頭を撫でて、適当な理由を言って、解散をお願いした。

どうせ、このメンバーは近いうちに、三友記念病院の件で、集まってもらう。

今は、陽織もみんなに会いたくないだろう。


家に帰る道すがら、大樹は陽織のことを考えていた。帰り際、鷹人の声が聞こえた。黎人の言葉を思い出す。

「ママ泣いてた?」

「陽織はいつも泣いてるよ。」

18歳で、成長が止まった身体。

1人で外に出られないほどの恐怖。

大学の時、2回誘拐れた、と言う噂は聞いていた。


あの広い家の中で、外に出ることができない。

料理が上手で、可愛くて。

姉が、大学時代、アルバイト一つしない陽織のことを、妬んでいた。お金持ちと結婚したから、働く必要がないなんて、羨ましいと。

時折、豪華なドレスとまばゆいほどの宝石で包まれた陽織を見ることがあった。

それは、本当に幸せな姿なのか?

彼女が、そう言ったものと引き換えにしたものは?

でも、それは。

姉は何も知らない。

母も。

僕が知ったことは、話しても良いのだろうか?

話したところで、あの2人は変わらないかもしれない。


ぐるぐると悩みながら、家の玄関を入ると、現実の世界に戻ったような気がした。





「




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。