陽織、お料理教室(神様の娘編)
翌朝、湊人が若手を連れてやってきた。
黎人も用があったのでちょうどいい。
「陽織ー、久しぶり!」
羽織が陽織に抱きついた。
彩奈の結婚式のビデオレター以来だ。
「わ、この子が姫ちゃん?可愛いー!」
佳織は初めて見る姫花に、ニコニコする。
「久しぶりー、会いたかったー!」
と、千織も羽織と同様だ。
美織の結婚式には出てない佳織に千織と羽織は、代わる代わる、陽織がチョロチョロしていて大変だった話をしている。
「ちょっと、羽織ちゃん!やめてくれる?」
陽織が怒る。
「だって本当のことじゃない!」
うーっ、と陽織は膨れるが、事実なので黎人も何も言えない。確かにあの時は、大変だった。
円香や七緒は、伝説?の陽織に会えたことで、感動しているし。しかも今日はお料理を教えてもらえる?
はず。
「で、何買ってきたの?」
と袋の中を見ると、肉!が大量に入っている。
「やっぱりバーベキューかなー。」
それを見て黎人が笑う。
「ねえー、何を作りたいの?」
と湊人に聞くと、なんでもいーと答えた。
「それ、1番面倒なんだけど!」
「じゃあ、とりあえずビーフシチューとか?かなー。」
と陽織が言いながら、深い鍋を二つ出した。
玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、ブロッコリー、マッシュルーム、赤ワイン、ドミグラスソース、バター、と揃えて、野菜を切る人と、牛肉をカットして炒める人に分かれてもらった。
牛肉は、バターで炒めて、赤ワインで煮込む。
「わたし、アルコールだめだから、そっちはハオちゃんたちに任せるねー。」
そう言って、野菜をカットしてもらう。
「え?マッシュルームって皮剥くんですか?」
と聞かれて、わたしは剥くよ、と答えた。
すると、鷹人がやってきて
「僕も作るー、」
と言い出す。
「たっくんは、今日はみんなの監督!」
と、手を出さないようにお願いする。
たぶん鷹人が手を出したら、効果がわからない。
大学生2人は、玉ねぎの皮を剥いたり、ピーラーでにんじんの皮を剥いたりして、そこからカットする。
野菜が揃うと、もう一つのお鍋に、またバターを入れて、野菜を炒める。
30分くらいお肉を煮込んだら、野菜と合わせる。
本当は1時間以上煮込みたいところだが。
合わせたら、ドミグラスソース、塩コショウして、あとは煮込むだけ。
「じゃあ、煮込んでる間に、ローストポークを作ろう。」
陽織が低温調理器を出して、塩コショウした豚肉の塊をタコ糸で結んでもらう。その後、生姜やニンニクで下味をつけてしばらく放置。その後、低温調理器に入れた。その間に、手の空いている人に、ソースを作ってもらう。
陽織が作ったら、意味がないので。
「ほんと、湊人に頼むと肉だらけなんだから!千織ちゃん、ダメじゃない、ちゃんと言わなくちゃ!」
とりあえず、付け合わせの野菜も用意。
その間、男子はリビングで黎人から、新しい依頼の説明を受けていた。場所は三友記念病院。
ここのところ、特別病棟の患者さんの変死が続いている。それを神嶋が依頼してきた。
「三友って企業の病院ですよね。」
「そう、三友商事、三友銀行、三友証券といった金融がメインで、千織ちゃんならよくわかると思う。その他にも三友不動産なんかもあるけど、うちとは真逆な巨大企業かな。」
「真逆!?」
「まあ、簡単に言うと、高樹さんが好きな会社と、嫌いな会社?」
「なんで、陽織のお父さん?」
「高樹さん曰く、人を助けるのが仕事!医師や看護師、消防士!一番最低の仕事は、お金を右から左に動かすだけの仕事や、人の弱みに漬け込んで儲ける仕事。金融、マスコミ、弁護士、ってね。」
「えー、それ何?」
「まあ、医学部第一主義らしいから、法学部はバカでも入れるって言われた。あはは。」
と、法学部出身の黎人が笑った。
「でも、実際には銀行がなければ、国も個人もお金はしっかり管理できない。経済は回らない。だから、大切なんだ。」
「ですよね。」
「ウチは薬を作る、食品を作る、医療機器を作る、健康のためのスポーツ用品、器具、そのための貿易もする、って言うところが気に入っているみたい。物を作る、と言う企業も好きなんだって。」
はあ、とみんな不思議顔でプロローグを聞いていた。
「で、問題の三友は去年陽織が管理栄養士として、面接を受けに行って、玄関に入る前に、回れ右して帰ってきた。」
「え?そんなにウジャウジャいるの!?」
宏輝と湊人は嫌な想像をして顔を合わせる。
「陽織曰く、気持ち悪くて入れなかったそうだ。」
「陽織ー、あとどうするのー?」
佳織が聞くと、レシピを見てー、と言われていなくなった。
どうやら姫花のオムツと授乳タイムらしい。
陽織はそのまま2階に上がって、後を羽織と鷹人に任せた?鷹人は、見てるだけだが、偉そうだ。
「姫ちゃん、ごめんねー。」
陽織はお尻を綺麗にした姫花を抱いて、おっぱいをあげる。いつものように、歌のようなお話をしながら。
姫花はこのわけのわからない言葉を毎回聞かされるうちに、なんとなく心地よくなっているのか、この声を聞くと、少しだけ笑うようになった。
たぶん、この声を聞くと、おっぱいをもらえて、嬉しい、と言うことをおぼえたのだろ。
「くくり、くくり、もろ、わたしの姫ちゃん。」
陽織はお腹いっぱいになった姫花を抱いてゲップをさせながら、
「姫ちゃん、可愛い、ママの大切な赤ちゃん。」
と色々な言葉で繰り返していると、
「陽織ー、調理器が終わったー。」
と、羽織がやってきた。
「可愛いねー、女の子。陽織、本当に幸せそうだね。」
と、羽織が覗き込んで言う。
「そう、かなー?」
「えー、自分でわからないの?もう、幸せいっぱいっていう顔で、姫ちゃん抱いているよ。」
そう言われると、そうかもしれない。
鷹人の時もそうだったけど、それ以上に可愛い。
「しかも、陽織そっくりだよね。赤ちゃんなのに、目がぱっちりしていて。」
ゲップをした後、最初の頃は寝ていたが、最近は起きてあーうー、と話している。だから無視はできない。
「姫ちゃん、お腹いっぱいなのに、おネムじゃないの?今日は、お話したいの?」
と、陽織は聞きながら、何か話している。
「何いってるの?」
と羽織に聞かれて、
「あー、えと。美味しそうな匂いがしてきたね、って。姫ちゃんが言ったから、そうだね、って。」
???
よくわからない。
「あとは、ハオちゃんに任せるよー。陽織が手を出したら、巫女の効果がわからないじゃない。」
陽織はそういうと、姫花をベッドに降ろして両手を掴んで笑ってる。
「姫ちゃーん!ばあー。」
ウフフ。
羽織は、まあいいか、と下に降りた。
「陽織ちゃんは?」
「なんか、姫花ちゃんが寝ないみたい。お話してる。」
「え、わたしも見たーい!」
千織が言うと、わたしも、わたしも、と全員が言う。
仕方ないので、羽織がしたで火を見ているからと、女子4人は2階へ上がった。
「陽織ちゃん、入るよー。」
千織が声をかけて、部屋の中へ入った。
相変わらず広い!
千織の家一軒分くらいある!
「わ、広い!」
次々とはいると、陽織が目を丸くした。
「え?みんなできちゃったの?」
「火は羽織が見ててくれるって。」
佳織に言われて、陽織がもう!と、ちょっと膨れた。
「姫ちゃん、お姉さんたち来ちゃったから、ねんねできないねー。」
今日は、たくさんの人の気配があるので、もしかしたら、興奮しているのかもしれない。
「え、ここって、先輩たちの寝室、ですよね?」
「えー、入って、いいんですかー?」
大学生2人は顔を赤くしてる。
あ、可愛い。
「男子はダメね!」
と、陽織が言うと、最後に入った七緒が後ろ手に扉を閉めた。




