陽織、約束?(神様の娘編)
陽織のおかげで、思った以上に早く解決しそうだと、黎人はご機嫌だった。
もちろん、新しいモノが到着し、確認してみなければ明確な答えは出ない。
「こめんね、今日は急に呼び出しちゃって。」
「大丈夫だよ?姫ちゃんには、ちょっと可哀想なことしちゃったけど。でも、ちゃんとみてもらったし。」
そう言って陽織が甘えてきた。
「何かご褒美あげなくちゃ。何が欲しい?」
「?わたし、欲しいモノ、なんでももらってるから、何もいらないよ?黎人さんがいればいい。」
と、陽織はニッコリ笑って答えた。
そう言われると、答えなければいけない!
「強いてあげるならー、もっと今日みたいな、お仕事がしたい。」
黎人の腕の中で、陽織がそう答える。
「なんか、ちゃんと誰かの役に立ちたい。」
「?陽織は、ちゃんと役に立ってるよ?姫花は、陽織がいるから、ちゃんと元気でいられるんだし。それに、僕も安心して仕事行けるし。」
「うん、わかってる。東山先生にも言われた。でも、もっとたくさんの人の、役に立ちたいなー。ちょっと、自分勝手だけど。」
全然自分勝手な考えじゃない。
むしろ、逆に考える人の方が多いのに。
「じゃあ、もっと僕の役に立ってくれる?そしたら、僕が陽織の願いを叶えるから。」
「黎人さんの役に?今日みたいに?」
「うん、それもあるけど、いつもみたいに。もっと僕の願いを叶えて。」
「?黎人さんの願い?うん、わかった。」
「約束だよ。」
そう言われて、陽織はコクンとうなづく。
なんでうなづいてしまったんだー!
陽織はうなづいた後で、後悔した。
黎人さんの願いって、アレだよね!
陽織はそのまま、頭を抱えた。
翌日、アイラーから新しい契約書が届いた。
陽織の方で、デンマーク語で、とお願いしたせいか、英語の時には気づかなかった、細かい齟齬があった。
そのまま、陽織が英語と日本語に翻訳し、黎人が手直しして、それを互いの会社に電子メールで送ってもらう。
その後、それぞれの社長と責任者の自筆サインで、新たな契約書が作成され、翌々日には正規の素材が送られてきた。
その件に関して、綾人はすぐに厚生労働省にも通達、同様の問題がない、他社でも確認してもらうためだった。ただ一社だけ、田中製薬は神代より1日早く知っていたにも関わらず、この件を隠蔽していた。
それを知るのは、神代だけ。田中製薬はの件に関しては無関心を貫いた。
また、同じようなことで、日本国内にも参入している、アメリカのイデア製薬も、田中製薬と同じ態度だった。
そのことはアイラー側が、陽織との会話で話していた他社からの苦情の中で、明らかにはなっていた。それでも、英語でやり取りした田中製薬とイデア製薬、現地の言葉でやり取りした今回、当然のことながら、神代の方が優位に立ち、現物も先に搬入することができた。陽織の笑顔も大きかっただろうが。
「今回の件に関しては、陽織さんの功績が最も高いな。湊人もよくやったけど。言語の問題一つがこれほどまでとは。」
「イデアは、アメリカ企業です。世界で誰もが英語でのやり取りをするのが、常識、と考えていますので、こんな方法は思いつかなかったのかもしれません。他社も同じです。今後は、取引先の現地の言葉に堪能な社員を、一人は確保したいですね。」
会長室で蓮也と黎人が話をしていた。
「まあ、それだけじゃないだろう。話によれば、アイラーの社長が、ぜひこの前の通訳の女性に会いたいから、日本に来る、と言う計画が出ているらしい。」
「は?何言ってるんですか!アレは臨時です!無理です!絶対に、もう連れてきません!パーティー関連も全て、お断りしてください!では、失礼します。」
黎人はそえ言うと、会長室を出た。
「ファンクラブの会長としては、もう少し彼女の活躍の場を与えてあげたいのだが、アレがアレでは。」
隣で神柴父が苦笑していた。
まだ、アイラーとの件でバタバタとしているので、あまり早く帰れない。
それでも帰宅すると、陽織が姫花を抱いて迎えに出てきた。鷹人はもう寝てしまったと言うことだ。
「ごめんなさい、姫ちゃんがさっき起きちゃって。」
と言うので、大丈夫だよ。と返して、自分の服を脱ぎながら2階に上がった。
陽織が授乳しているので、先にお風呂に入ってしまう。
お風呂から出ると、姫花が2階で眠ったらしく、夕飯の支度をしてくれた。
「こっちこそごめんね。この前の件で、まだ慌ただしくて。」
「ううん。黎人さんはお仕事頑張ってるんだもん。わたしはおうちのことくらいしかできないから。」
「イヤイヤ、あの契約書のことだって、本当に助かったんだよ。」
そう言うと、陽織はちょっと照れたように笑った。
「ただ、アイラーの社長が陽織に会いに日本に来たいっていうから、それだけは丁重にお断りしてもらう。断固、拒否!」
え?陽織の意見は?丸無視?
まあ、いいけど。
食事が終わって、後片付けの後、ソファーに座らされて、何かと思ったらそう言われた。
本当に、これから先もやっていけるのだろうか?
陽織がため息をついた。
「ん?なに?会いたかった?」
「ううん、それはないけど。」
「けど?」
「んー、黎人さんは、いつも陽織のこと、守ってくれて、嬉しいよ?」
「うん?」
「でも、もう少し陽織のことを信用して、欲しいかな?」
と、答えたら、なんか変な顔をする。
「ねえ、それって、もっと信用できる行動をとれたら言おうか。」
えー、わたしってそんな信用ないの?
そう、目で訴えると
「できないよ!だって、色々迂闊だし、ぽややんだし、突然わけのわからないこと、平気でするし。」
そんなこと
そんなこと
ない、と思うんだけど?
「例えば、」
「たとえば?」
そう言って、いきなりソファーのうえで、押し倒されて、抱き始めた??
「ほらー。」
「えー、それは、黎人さんだから、安心して。」
「って言う割には、もう、子どもいらない、とか言うじゃない。それ、矛盾だからね!もう、ほんと、ぽややんなんだから!」
と、いきなり、終わり、とばかりに立ち上がる。
え?怒ってるの?
よくわからない!
「じやあ、続きは上でね!」
なんか、よくわからないまま、陽織は頭がクラクラした。




