陽織、鷹人のしつけ(神様の娘編)
康介がレイリーでの様子を話していると、陽織のところに式が飛んできた。
「ママ、姫ちゃんが起きた。」
陽織はそれに驚く。
「黎人さん、たっくんに教えたの?」
黎人は、もっと驚いた目をしている。
「ちょっと失礼。」
黎人はそう言うと、慌てて2階に駆け上がる。
ドアを開けて怒っているのか、黎人の声が聞こえた。
「鷹人、パパの机を勝手に開けたのか?」
鷹人は急に怒られ、泣いている。
「え?あ、の。すみません。」
陽織も、慌てて2階に上がる。
鷹人は、勝手に黎人の机の引き出しから、式の用紙を出して使用したらしい。
陽織は、そちらは黎人に任せて、姫花だけを抱いて下に降りた。
「えと?今のって式ってやつですよね?」
「はい、そうですね。わたしはできませんけど。」
陽織も、驚きすぎて、まだドキドキしている。
なんで、あんなことできたのだろう。
「鷹人くんがやったんですか?」
「そう、みたいです。わたしも初めて見たので、ちょっと、まだドキドキしてます。」
本当に、陽織の顔は真っ青だ。
「いやー、ウチも末端とは言え神家だけど、あんな小さな頃から、式を使うなんて、できるって聞いたことないですよ。」
直哉が目を見開く。
「強いらしい、と言うのは聞いてましたが。」
え?誰に?
しばらくすると、黎人が鷹人を連れて下に降りてきた。
「申し訳ありません。あとは何か急ぐお話は、ありますか?」
黎人は少し不機嫌になっている。
「あ、いえ。それでは我々はこれで失礼します。」
「鷹人くん、また明日ね。」
康介に声をかけられて、鷹人は涙目になりながら、さようなら、と言った。
2人が帰ると、鷹人はリビングのソファーに座らされて、黎人に色々聞かれている。
どうして、下に来て直接話さなかったのか。
なんで、勝手に机の引き出しを開けたのか。
あの紙が、式だと、どうして知っていたのか。
どうやって式を飛ばすことを知ったのか。
一応あと2ヶ月とは言え、4歳に間も無くなる幼児に、そんなことを聞いても、半分はわからないだろう。
下に来なかったのは、姫花を1人にできない、と思ってのことなので、それは許してあげたい。
後半の半分は、黎人がやっているのを見て真似たらしい。カッコいいと思ったみたいだ。
それで、できてしまうのは、はっきり言ってすごい。
陽織は怒る以前に、すごいと感心してしまう。
しかし、黎人は勝手に他人のモノを使う、開ける、と言うことが悪いこと、と、この際きちんと教えたいと思ったようだ。
確かに、朝、ドアを開けられるのは困る。
「泥棒さん?」
「そう。泥棒が悪い人って、わかるよね。」
うん。
「鷹人はノックもしないで、パパたちの部屋にも入るけど、それは、ピンポンって、チャイムも鳴らさずに他人の家に入ることと同じことだ。」
鷹人はしゅんとしている。
「今までは赤ちゃんだから、仕方ないと思っていた。でも、鷹人もお兄さんになったんだから、そう言うこともちゃんと覚えなさい。」
赤ちゃんと、言われて鷹人はショックだったようだ。
「それと同じで、パパやママの机にはお仕事のものだって入っている。勝手に開けるのは、悪いことだ。わかった?」
「うん、、わかった。」
「で?わかったら、なんて言うの?」
「ごめんなさい。」
「はい。」
黎人は論理立ててそう叱ったが、本当に理解できるのだろうか?
「で、なんでできたの?」
「え?パパがみぃちゃんにやってるの見て、真似した。」
やっぱり、すごい!
真似だけで、できちゃったんだ。
陽織はただ驚く。
「もしかして、黎人、さんも?」
「イヤイヤ、僕はちゃんと父上に教えてもらった。まあ、一回でできるようにはなったけど。」
「わたし、できない。」
「うん、あれは得手不得手分かれるから。湊人もできないよ。」
なんとなく、想像がつく。
その後、黎人はきちんと蓮也に今回のことを報告した結果、鷹人が覚えるのには、まだ早いとなったらしい。
「ネェ、黎人さん。他人の部屋のドアを勝手に開けるのは悪いことなら、他人の服を勝手に脱がせるのも、悪いことだと、思うのだけど。」
陽織がその晩、黎人に言ったら、
「ん。他人、の場合でしょ?陽織は他人じゃないから。」
と、言い訳をして、陽織の服に手をかけていた。




