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陽織、林田を助ける(神様の娘編)

翌日の夕方。黎人は今日も早めに仕事を上がり、陽織を連れてやってきた。

子どもは美咲に任せて。


さらに、神鬼のもとには、大学生組と葉鳥、健太、洸太、翔太が集まる。

健太と洸太の二人は、翔太のお手並み拝見といったところか。


全員がそろうと、翔太が三人の巫女に結界を貼らせる。

いくら林田の病室が神鬼のところで、他の三倍近く広くても、音が漏れては困る。そして、逃げだした「何モノか」が外に出ることも防ぐためだ。

「では、姉上、陽織、お願いします。」

翔太に言われて、陽織は彩奈の手をつかむとハクを召喚した。

「ハク!お願い。」

陽織が唱えると、陽織と彩奈の姿が消えた。


「消えた?」

「彩奈?」

兄二人は、驚愕の声を上げる。


「彩奈さん、わかりますか?ここは、たぶん林田さんが今見ている世界だと思います。」

目を閉じている彩奈に、陽織が声をかけた。

目をあけた彩奈は、懐かしいような景色に思わずきょろきょろする。

「東京でもこんなところ、残っていたの?」

「んー、20年くらい前の風景だと思うんですが。」


すると、二人の目の前に件の駄菓子屋が見え、その店先に複数の子どもの姿がある。

林田はいない。

「俊介、どこにいるんだろう?」


そのとき、子どもたちの中で

「俊介!お前また嘘ついただろう!」

一人に男の子が、隣にいた男の子の肩をグイっと押す。

「嘘なんかついてねえ!あの道にお化けがいたんだ!」

彩奈は、おばけがいた、といった男の子の顔を見た。

「俊介だ。」

陽織はそれを聞くと、うなづき、彩奈の手を外す。


そして、俊介のそばに近寄っていく。

「ねえ、俊介くん?こんにちは」

俊介は陽織に声をかけられて、

「なんだよ!」と悪態をつこうとして、綺麗なお姉さんに声をかけられ、ちょっと赤くなっている。

「俊介くん、そのお化けがいた道を教えてもらってもいい?」

「なんだ?どうせ、嘘だと思っているんだろ!」

「そんなことないよ、わたしはお化けを祓うことができるから。」

「お化けを祓う?」

「うん、一緒に見に行く?」

陽織は俊介に声をかけて、道案内を頼む。


俊介が二人を連れていたた道には、いわゆる悪霊と呼んでいる禍々しいものがどんどんと膨れ上がっていた。

「うわ、これやばくない?」

彩奈が小声で陽織に言う。

「お姉さんたち、僕が言うこと、ほんとだって信じてくれた?」

「うん!俊介くん、これはちょっと怖いね。」

陽織も言う。

「どうしますか?ここて祓いますか?それとも外に追い出しますか?」

「それは追い出さないと、彼らがやることないでしょう?」

彩奈に言われて陽織は笑ってしまう。

「それじゃ、追い出しましょう!」

そういって、二人でどんどん膨れ上がっている者に対して、攻撃を仕掛ける。

攻撃を仕掛けながら、それが異界から外に出るように、あえて隙間を開けておく。


二人が消えて、30分もすると、翔太たちの目の前におどろおどろしい、薄汚れた一つ目の物体が現れた。

「うわ11なんだこれは!」

洸太が思わず後ろに飛びのいた。

林田の体の中から飛び出してきたものが、ずっと彼を付け狙っていたモノらしい。

するとすぐに、翔太が自分が持っていた護符で、それを縛り上げる。

「葉鳥!頼む。」

そして、葉鳥、大樹、陸斗の三人がそれをめがけて、自分の使役獣を放った。

狼に虎、と猛獣たちの一斉攻撃をうけ、翔太が締め付ける護符も効力を発揮する。


巫女たちは自分たちの結界が敗れるのではないか、と冷や汗をかきながら、必死で守っている。

神鬼と黎人はその様子をじっと見ている。

「黎人さん、お手伝いしないんですか?」

「僕は今日は依頼人ですから。」

「でも、陽織さんはお手伝いしているでしょう?」

「陽織は、ただ彩奈さんを向こう側に連れて行っただけですよ。」


目の前からずっと自分を付け狙っていたモノが消えると、俊介はほっとする。

「良かった。これで彩奈のところに帰れる。」

そうつぶやくと、男の子は徐々に消えて、異界の風景も崩れ始めた。

「彩奈さん、私たちも出ないと、閉じ込められちゃう!」

そう陽織に言われて、彩奈はまた陽織の手を握った。


目を閉じて、はじめにいた林田の病室に出ると、まだ翔太たちが戦っていた。

「頑張っていますね。」

陽織がのんきに言うので、彩奈も傍観することに決める。

そして、自分は林田のほうを向く。

「俊介。」

彩奈がぽつりというと、林田の目が動く。


まだ翔太たちは戦っている。

だいぶ弱ってはいるが。

すると、

「やれやれ、ちんたらしていると、また林田さんに取り付いてしまいますよ。」

という神鬼の声がする。

イラっとした大樹が大きな声で使役獣に指示を出した。


すると、咆哮をあげた使役獣がまがまがしい悪霊の喉元に食いつき、そのまま霧散するように消えていった。

「や、やった?」

「消え、た。」

「よ、かった。」

三人は肩で息をしている。

陸斗は床に大の字になる。

翔太もその場に座り込んだ。

葉鳥に肩を叩かれた。


「終わっ、た。」

翔太が言う。

健太も洸太も、翔太に何も言えない。

自分たちは、何もできなかった。

弟が自分の仲間たちを使って終わらせた。

「洸太、帰るぞ。」

健太はそう言って、病室を出ていく。

黎人は、陽織の元に駆け寄って抱き上げる。

「彩奈さん、ぼくはあくまでも依頼人なので、帰りますね。あとは、翔太に報告書の書き方、教えてあげて下さい。


そう言うと、2人はその場から消えた。


家に戻ると、黎人は陽織をベットに押しこんで、1人で鷹人たちを迎えに行った。

「パパ、あのおじさん。大丈夫?」

鷹人に聞かれて、うん、と大きくうなづく。

姫花を抱き抱えて、家に戻る。

「今日のおゆーはんはねー、春巻きだったよ。ママ食べられるかなー。」

鷹人がそう言って、美咲から預かったお皿を大事そうに両手で抱えている。


鷹人が持ってきてくれた春巻きで夕飯をとろうと思ったが、陽織はそのままぐっすり眠っている。

陽織はおそらくかなりこ霊力を失っているだろう。

補給したいところだが。


鷹人をお風呂に入れると、鷹人は自分の部屋に行って眠ってしまった。

姫花は、スヤスヤ眠っているので、ベットに横たえる。と、突然、陽織の匂いに気づいたのか、フニャフニャと泣き出した。

絶対に起きそうになかった陽織が起きて、姫花に授乳を始めた。

オムツは?と思ったが、そこまでは頭が回らなかったらしい。姫花も、お腹が空いて、と言うよりも、陽織の匂いに目が覚めて、少し欲しかっただけらしい。

すぐに離すお、またスヤスヤ眠ってしまった。

「え?姫ちゃん、起きて!そんなちよっとじや、またお腹空いちゃう!」

と、陽織が慌てる。


「陽織もだよ。」

背中を支える黎人が言うと、やっと自分の現状も理解したのか

「?わたし、林田さんの病室にいた、よね?」

と聞いてきた。

ハクで戻った、と言うと、またー!と、怒る。

「ハクはタクシーじゃないんだから!そんな、便利に使っちゃダメ!」

「ウソウソ、車までハクで移動しただけ。車、おいてくるわけにいかないから。」


そのまま2人でダイニングに行き、夕飯を食べながら、今日の林田の案件について話した。

陽織たちが見たもの。

翔太たちの活躍。

「そうかー、翔太頑張ったんだね。」

陽織は嬉しそうに微笑んだ。




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