陽織、黎人のぶっちゃけ(神様の娘編)
結婚式の翌日、終業時間になると、林田と二次会に参加したメンバー全員が、社長室に呼び出されて。
社長室までの廊下、5人はもしかしたら脅される?口封じ?などと、ちょっと不安になりながら。
部屋に入ると、綾人がソファーに腰掛けるように手招く。そして、5人の前にお茶が並べられた。
「あ、コーヒーがよろしかったらですか?」
と聞かれて、5人は首を横に振る。
社長はまだ仕事をしているとのことで、少し待って欲しいと言われた。
10分ほど待つと、奥の執務室から研究開発室長が出てきて、5人の顔も見ず、さっさと退室していった。
彼が退室すると、まもなく黎人がやってきた。
「え、と。綾人も座って。」
と、綾人にも対面の席を勧める。
そして
「昨夜はありがとうございました。」
と、頭を下げた。
え?
えー?
えーっ!?
5人は驚いて目を開く。
「黎人くん、まずは説明。」
なんか、この2人の雰囲気もいつもと違う。
「あの後、彩奈さんから、5人が奈緒さんに頭を下げたって話聞いて、本当に感謝しています。あ、えと、今はプライベートね。」
なるほど、と5人は納得した。
「特に、林田さん。そのぼくを庇ってくれたそうで。その、本当に色々と。」
黎人が顔を赤くして目を背ける。
あ、昨夜の大学生モード?
さん付けで初めて呼ばれた林田はなんかこそばゆい。
「とりあえず、二次会の話を少し説明したくて、あ、会費も。」
「イヤイヤ、それはいいです。社長、翔太くんの相談に乗ってただけですから。」
そう言うと、黎人がため息をつく。
「翔太ねー、あそこも本当に。もう!なんで色々ややこしいことするんだろう!」
すると、黎人が二枚の写真を出してテーブルの上に置く。一枚は高校の卒業式。もう一枚は大学の卒業式。
「あれ?1人いない、あ、翔太、くん?」
「そ。これを見るのが一番わかりやすいから、って陽織から借りてきた。」
「まあ、林田さんも彩奈さんから色々聞いてると思うけど、僕たちの世界って、なんか、密って言うか、仲間意識が強いっていうか。とくに湊人と翔太、美織ちゃん、千織ちゃんは小学生からの付き合いなんだ。」
うわ、長い!
「僕も洸太、あ、彩奈さんの弟ね。とはずっと一緒。親同士もみんな、親戚みたいだよなー、ね、綾人。」
「そうですね。僕も彩奈とは小学校から一緒でしたから。」
綾人が彩奈と呼び捨てにすると、林田がわかりやすく、面白くない顔をする。
「あ、大学は京都に行ったので、林田くんとはすれ違いです。」
「それって、みんな明王?」
「まあ、そう言うこと。中でも、湊人と翔太、陽織は高3の時同じ医学部受験で、ほぼ毎日一緒で、仲良かったよねー。陽織は最後、辞退したけど。
で、高3の頃は、翔太、羽織ちゃんと付き合ってたんだよ。でも、大学生になって、色々あって別れて、今は彼女は宏輝の婚約者なんだ。」
「なんか、それって。」
「まあ、長いから、色々あるよね。」
「でも、小学生からって、すごいですね。」
「まあ、そう言うこともあって。医歯薬は大学の卒業が違うじゃない?それで、学部の卒業式の時、医歯薬組がみんな来たんだ。ところが、翔太だけ来なかった。で、そのことを陽織は怒ってるんだ。まあ、寂しかったんだと思う。本当に仲良かったから。」
「そうですねー。陽織さんは黎人くんよりも湊人くんたちとの方が、一緒の時間も長かったし、色々あっても当然ですよね。」
「なに?その言い方。湊人のことは、もういいんだって!」
「なるほど、それでその、織姫ズ?でしたっけ?の4人は翔太くんのことを怒ってたわけですね?」
「誰がつけたんだろう。織姫ズって。」
「まあ、全員名前に、織が付きますから。」
「あ、で本題ね。」
こっから本題?
「え、と、奈緒さんのこと。」
あ!
「剛志さんが、酔って変なこと言ったみたいだけど、彼女とかじゃないから!」
「奈緒さん、来たんですか?」
「んー、また離婚したみたいで、きっと健太さんあたりに、本当は愚痴りたかったんだよ。」
「で、その、社長とは?」
しばらく沈黙が流れた。
どこまで話していいのか。
荒れてた頃の高校時代のこと。
奈緒との関係。
んー。
「まあ、5歳も歳上だし、その、ウブな高校時代のぼくを、だまくらかした、お姉さん?」
!うわっ、うまい!
綾人は内心そう思った。
「騙された、って?」
「だから、色々!」
そう言って、黎人は顔を赤くしてそっぽを剥く、
まあ、社会人5年目にもなると、みんな色々察する。
「いや、黎人くん。ウブは盛りすぎです。正直に荒れてたと。」
「あれ?でも俺、大学の時、理系の友人から社長、高校時代、女子人気すごくて、いつも女の子はべらかしてたって。」
「は?はべらかしてなんかいない!10人くらいと、付き合ってやっただけだろ!」
だんだん、黎人が素になる。
10人って、十分じゃ。
「だいたい、二次会なんて行きたくなかったのに!洸太のやつが!そうだよ、だいたいなんで、あの兄弟は、自分の弟のことなのに。いつも、オレに丸投げすんな!」
黎人が、とうとう立ち上がって力説すると、5人は目を丸くする。
対面では
「あ、アレが素ですから、お気になさらず。」
と、綾人がのんびり、お茶を飲んでいる。
そうなんだー。
中身はやっぱり普通の20代なんだよなー。
言いたいことを言って、スッキリしたのか
「綾人ー、オレ帰る。」
と言って、5人を綾人に丸投げして、サッサと帰りの支度を始める。
「ちょ、黎人くん!ちゃんと最後くらいは、きちんと5人に!」
と、綾人が止めるのも聞こえず、帰ってしまった。
唖然とする5人と、苦笑する、綾人が残された。
「まあ、あんな子です。小学生の頃から跡取り教育されて、色々プレッシャーもあって、大学生の時には、会社1つ任されて、ですからね。
林田くんは聞いたかもしれませんが、いま、術者をまとめる十神家でも、年寄りが多くいる中、長を任されていて、色々溜まっているんでしょう。
その、時々は嫌じゃなければ、付き合ってあげて下さい。よろしくお願いします。」
はじめはポカーンとしていた5人も、だんだん吹き出してしまい、なんか普通なんだ、と再確認する。
「良いですよ。彩奈とのことで、意外な接点もできたし。」
林田が笑って答えた。
「うん、オレも、同じ歳って知ったし。」
「ガス抜きって、必要ですよね!」
と、意外なところで、黎人の理解者が増えた。
帰りの電車で、林田と綾人が一緒になると、林田がポツンの言い出した。
「小学生のころから、って大変だったでしょうね。でも、双子なんですよね。」
「はい、もう一人の悠人さんは、いま医療機器メーカーコシロの社長です。」
あー、と林田は思い出す。
「でもなんで高校生で反抗期?」
「おそらく、私が京都に行ってしまったせいだと思います。それまではずっとお目付け役がいたから。」
「神柴さんって、ずっと社長のお目付け役を?」
「はい。それに、高校生の時はまだ奥様ともお会いになっていなかったので。」
「奥様って陽織さん。」
「はい、ご実家がずっと社長と会わせたくなくて、お嬢様を隠していたんです。そのため、カナダやドイツといった海外で生活していたので。」
「会わせたくないって。」
「ご両親が、可愛がっておられたようで。ご祖父母さまも。お嫁に出したくなかったのでしょう。」
「え?ちょっと待って、それって小さいころからの政略結婚?的なやつですか?」
「まあ、そうですね。生まれたときから決められていた、と、おっしゃっていたので。でも、奥様のご実家は色々と。お父様は大学病院の院長先生ですし。」
「その神柴さんは、彩奈とはそういったことは?」
「僕は絵里香がいましたので。」
「そのそちらも?」
「そうですね?まあ、多いです。遅い人でも大学に入るころには、おおよその伴侶を決められているというか。彩奈さんのご実家は比較的自由ですが。」
林田は遠い目をする。
こんな世界の人と結婚してしまって、これからやっていけるのだろうか、と。
黎人が家に帰りつくと、陽織が姫花を抱いて迎えに出た。
「おかえりなさい。」
黎人は、ただいま、と陽織と姫花にキスをする。
足元には鷹人もいた。
「なんか、楽しそうだけど?いいことあったの?」
と陽悪に聞かれた。
楽しかったのかな?
まあ、いろいろぶっちゃけたから気楽にはなった!
「うん、そうかもしれない。」
そう答えると、陽織がニコニコした。
「黎人さん、お仕事から帰って楽しかったなら、よかったです。」
そういって、中に入り、夕飯の支度を始めてくれる。
陽織は、大きなことや自分に関係あることでなければ、詮索をしない。
「あ、写真ありがとう。」
「わたしも、その、翔太から連絡があった。卒業式行かなくて、ごめんって。また、湊人のところに行ったらこっちにも来るって。」
「そうか。良かった。翔太も吹っ切れればいいのだけど。」




