陽織、京都からの来訪(神様の娘編)
姫花が生まれて数日後、紗香が突然電話をしてきた。
「あの、お子さんが生まれたと、聞いたのですが。」
なぜ紗香さん?
しかも、紗香たちは陽織たちがまだ病院にいる間に、親子でやってきた。
2歳になった友樹は、もうしっかりと歩いてお話しもしている。
友樹は、トコトコと姫花のベッドの近くにやってくると、紗香に抱き上げられて、手を撫でている。
「お嫁しやん。」
その声を聞いた途端、陽織は目の前が真っ暗になる。
紗香は慌てて友樹をベッドのところから引き離す。
「お嫁、さん?まさ、か。」
陽織は、呟く。
そこに、友春と黎人が入ってきた。
駐車場に車を置いて。
「どうした、の?陽織?」
陽織は、いつの間にか泣いていた。
「れい、と、さん。」
陽織は黎人の名を口にすることしかできなかった。
「何かあったの?」
陽織は黎人に縋り付く。
「黎人さん!」
陽織はウワーッと泣き出した。
「姫ちゃん、姫ちゃんが。」
「え、と。紗香さん。まさかとは思うのですが。」
黎人は2人に椅子をすすめて、陽織に優しくキスをし、ベッドの上に腰掛けた。
「もしかしたら、ですが、友樹くんの胸には、何らかの痣、がありますか?」
紗香は友樹の服のボタンを外し、胸の痣を見せた。
桃の花と鳥の絵。
「鳥、朱雀?鳳凰?」
「鳳凰、だそうです。」
「だから、か。僕が全く気づかないわけだ。鳥系はわりと無関係なんだよなー。」
黎人は呑気な顔をする。
「黎人さん、どうしてそんな。」
「大丈夫だよ。友樹くんは多分ぼくと同じだと思う。
普通の術者としてこれから、西を束ねることになる。その時、姫花はいずれ‥。いずれ…。やっぱり、やだな。やっぱり、許さない!」
黎人の目の色が変わった。
「で、京都最大の神家、神月家の当主様が姫花を迎えに来たってわけ?」
「違うわ!ただ、陽織ちゃんの時のように、隠されたら困るから!」
紗香はそう言って、あっと、口を塞いだ。
なるほどと、黎人は思った。隠された。陽織は確かに神月家が隠していた。
「あの、決して今すぐとかは考えていない。黎人くんのように、ちゃんと法律を守って、本人たちの意思も尊重する。」
友春の言葉に、黎人が呆れたような顔をする。
「あなたは、何もわかっていない。神様と花嫁のことを。もし、友樹くんがある程度成長すれば、どれほど花嫁を欲するか。」
その時、ノックの音がして、陽香が入ってきた。
「あ、ごめんなさい。お客様、って、あら紗香さん。京都から、わざわざきてくださったの!?」
陽香が入ってくると、黎人は立ち上がった。
「紗香さん、ちょっと外でお話ししませんか?」
黎人は陽織と姫花の2人を陽香に頼み、京都から来た3人の親子を下のカフェにと連れて行った。
「何か、あったの?」
陽香は4人が部屋を出ると、陽織のそばに行った。
陽織は真っ青な顔で姫花の方を見て放心状態だ。
「マ、マ。やっぱり、姫ちゃん、花嫁。」
陽織はそう言うと、そのままベッドにうずくまるようにして泣き出した。
?え?
まさか?
陽香はさっきまでいた紗香が、2歳くらいの男の子を連れていたのを見ている。
紗香たちが、姫花のことを知って、すぐに京都から確かめに来たのだ、と、気づいてしまった。
陽香はそのまま部屋を飛び出すと、スマホを取り出して高樹に連絡を入れた。
姫花の伴侶が来た!と。
黎人は3人を病院のカフェに案内した。
そして、注文をすると、すぐに結界を張る。
「先ほどの話の続きをしましょう。」
黎人が、話し始めると流石に紗香も友春も、緊張で息を呑む。
「紗香さんは普通の術者ですよね。巫女ではないと聞いてます。」
「はい、そうです。」
「巫女と、術者の関係については、どれくらいご存知ですか?」
紗香は友春の顔を一瞬だけ見ると、答え出した。
「霊力を共有する、生涯の伴侶となる関係だと。」
紗香の答えに、黎人はゆっくりと頷く。
「概ね、正解です。では、なぜ生涯なのかご存知ですか?」
「あ、いえ、そう言うものだとしか。」
黎人は一瞬考えて、答えを言う。
「それは、他の相手では子どもができないからです。術者とその巫女、の場合。」
黎人の言葉に、2人は目を見開く。
「そして、それは神様と花嫁。つまり、ぼくと陽織も同じです。」
2人は、来てよかった、と言いたい顔になる。
「では、神様については?」
「あ、の、不老不死、だと。」
紗香の答えに、黎人は苦笑した。
「友春さん、あなたは陽織を見て、普通何歳くらいに見えますか?」
「え?普通?て、お子さんがお二人いるから。」
「いえ、そういうことは抜きで、ぱっと見です。」
友春はしばらく考える。
「あの、失礼かと思いますが、その、高校生、くらいかと。」
そう言われて、黎人は頷く。
「そうでしょう?だって、陽織は18歳の時から、歳をとってませんから。」
2人は、理解していた知識と現実の差に驚きが隠せない。
「ぼくも、20歳くらいから、ほとんど変わってません。まあ、元々老け顔で良かったです。」
黎人の冗談とも取れない言葉に、ただ驚く。
「では、友樹も?」
「んー、個人差はありますが、おそらく20歳前後くらいで、そうなります。そこからは10年に一歳くらいかなー、歳を取るのは。」
「500年生きて、やっと60代後半から70代前半です。もっとも、それ以上の人は大勢いますから。」
「では、姫花ちゃんも、いずれは?」
「いえ花嫁は神様次第です。」
黎人は注文したものが運ばれると、一瞬だけ結界を外した。そして、大人3人の前にコーヒーを、友樹の前にプリンを置いた。
また結界を張り直すと、話を続ける。




