陽織、似ている新入社員(就職編)
2人目が5月に生まれる。
黎人にとっては、待望の2人目!
あと、4、5人は欲しいかなー。
でも、陽織嫌がるかなー?
などと廊下を歩きながら、考えていた。
すると、隣の神柴綾人が
「今回、社長のお休みはどうされますか?」
と聞いてきた。
そう言えば、鷹人の時は2ヶ月半休んだ。
本当はもう1ヶ月休むつもりが、会社で湊人と大喧嘩し、父である会長から、そのペナルティで1ヶ月無給で仕事させられた。
まだ4年前のことなのに、すごく懐かしい。
「んー、とりあえず会長にはGW明けから6月いっぱいとは、言ってあるけど。」
と答えると
「かしこまりました。」
と綾人がタブレットのスケジュール管理にメモしてる。
陽織も、あと少しで産前休業に入る予定だ。
先日のジェフの一件があった時は、マジで退職させようと思ったが。
その日の午後は、取引先全社との会議。
昼休み、大会議室の前で、綾人が秘書課の新人2人に、会議の時の流れを説明してる。
しかし2人はその間も、黎人をチラチラ見ていた。
が、そう言った視線に慣れてる黎人は全く興味を示さない。
黎人が何人かの役員と会議室に入り、綾人も中に入ると、新人2人はヒソヒソ話し始めた。
「あの方が、噂の若社長。」
「そうそう、イケメンだよねー。」
「確かに。」
と、高坂志織はため息をつく。
「ほんと、高坂さんくらいの美人じゃないと、絶対釣り合わない。」
同期の大澤将吾に言われ、志織は顔を赤くする。
翌日、広報部にいる林田が、出勤するとすぐに声をかけてきた。
「おはよーございまーす。」
彼は黎人がここの社長に就任した年に、院卒で入社した1人だが、黎人よりも年上、と言うこともあるのか、なんとなく気さくに話しかける。
はじめは、礼儀がなってない、と気にしていたが陽織の、同期が欲しい、と言う言葉に、なんとなく理解ができるようにもなった。
それに、林田は仕事中はきちんとわきまえている。
「社長、知ってますか?秘書課の新人に、奥さんそっくりの子がいるの。スッゲー可愛いって、評判すよ。
もう、そばにいたら、浮気したくなったりして。」
と、ケラケラ笑っている。
??
綾人に聞いたら、
「似てますか?」
と、逆に質問された。
まあ、綾人は陽織をよく知ってるから、たぶん、あまり似てるとは思っていないようだ。
それに、そんなに似てるなら、黎人だっで気づく。
「たぶん高坂さん。高坂志織さん、あ、名前が似てますね。」
と、綾人はのんびりと笑った。
なんだ、名前が似てるってことか。
翌日から、陽織は産前休業に入る。
黎人は午前中、健康食品コシロの社長との打ち合わせを入れ、その前に秘書課に立ち寄った。
課長と絵梨花を除く秘書課の面々は、親会社の社長が何用?と不思議顔で、迎えた。
黎人は課長に菓子折りを渡すと、陽織を呼んで
「短い間でしたが妻が大変お世話になりました。」
と頭を下げた。
(れ、黎人さん!それじゃわたし退職するみたいじゃない!)
陽織は黎人の顔を睨みながら、自分も頭を下げる。
「あ、あの、産休?終わったら、わたし、戻りますからね!」
と本人は訴えているが、どうなるのだろう。
まさか、親会社の社長夫人だったなんて。
入社早々の産休なんてゴリ押しがきくはずだわー。
でも、優秀なのは間違い無いよねー。
それに超絶可愛い!
面白いし。
秘書課の面々はそれぞれの思惑でいっぱいになる。
4月末GW前に、今年も恒例の新人懇親会が行われた。
黎人はその席で初めて高坂志織をちゃんと見た。
確かに美人だとは思う。
すでに、どこからか話が捩れて、志織は社長好み、と言う噂まで、出ていた。
おそらく、チラッと写っている、メイクばっちり陽織を見て似てるになったらしい、
陽織は、素顔が可愛いのに。
しかし、どうやら、志織が陽織に似ている。
と言う話から、社長の好みはああ言うタイプ。
社長の好み。
と、なったらしい。
バカバカしい。
好み、云々じゃ無くて
陽織だから、良いのに。
志織を見た黎人は、綾人に
「似てるか?」
と、眉間に皺を寄せて聞いてくる。
「美織ちゃんの方が似てると思うけど。」
「確かに、美織さんは奥様の再従姉妹さんですものね。」
と綾人が笑う。
確かに!
しかも、陽織は意識的に、お淑やかに、と言われる席では美織を真似たところがある。
それを思い出し、黎人はブハッと、吹き出してしまった。
「どうかしましたか?」
と、近くにいた林田が聞いてきた。
今日は広報として、ここにいるらしい。
「イヤイヤイヤ、お淑やか、お淑やかって!」
自分で思い出して、自分でツボってしまった。
「社長?」
いつのまにか、周囲の新人も、黎人が大笑いしてるのを見ていた。
「綾人ー、陽織この前、あのお腹で、ジャンプしてたぞ!」
と、素の言葉で、綾人に話しかけてしまった。綾人だけが、それを聞いて青くなっていた。
「黎人くん。ちゃんと注意したんでしょうね。」
綾人は、ちょっと怒った小声で黎人に聞く。
「したした!クビにするって。シュンとしてた。」
と答えながらも、黎人は笑っていた。
翌朝、林田がまた出社してきた黎人に声をかけてきた。
「おはようございますー!昨日、高坂さん、みました?奥さんに似てたでしょ?」
と言ってくる。
しつこい!
「おはよう。林田くん。全然似てないよ?悪いけど、うちの妻は、あれより100倍以上可愛いから。それに、面白いし。」
と、冷たくあしらった。
(100倍?面白い?)
林田はどうしても、陽織を見たくなった。




