↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
261/278

陽織、新たな悩み(就職編)

まだ、夜と言うには早いので、陽織の部屋へ2人は行った。

「ママ?」

陽織はベッドのうえで、勉強していた。

「はい、神代さん、病室内は勉強禁止!」

「えーっ!ひどい。」

「ちゃんと守れたら、明日退院していいです。」

「う。」

ベットの横には、手付かずの夕飯が置いてあった、

「神代さん、管理栄養士になりたい人が、きちんと食べないのは、本末転倒では?」

そう指摘されて、慌ててテーブルの上を片付ける。

夕飯のトレイを置くと、ため息をついた。

「また、市原先生が、献立作って、くれたんです、よね。」

手を拭いて、もそもそと、食べ始める。


いつものことだが、食べきれない。

時間もかかってる。

なのに、東山はずっと見てる。

監視してる?


そのうち、退社時刻を過ぎた高樹も現れた。

「東山さん、もしかして見張っていてくれたんですか?」

と苦笑いしている。

「あ、いえ、神代さんのご主人と話したくて。」

「それなら、来たら連絡します。たぶん、今は忙しいので、遅くなると思いますから。」

黎人さん?

陽織は箸を止めて、不思議そうな顔をした。

そこを

「陽織、食べるのやめない!」

と、陽香まで注意する。

   ママが羽織になっている。


黎人は来る早々、前に陽織を迎えに来たカンファレンス室に案内された。

そこには高樹もいた。

東山は二人に椅子をすすめると、午後陽香から聞いた話をする。

すると、思い当たることがあるのか、二人ともなるほど、という顔をする。

「そこで、国家試験までの対策を考えてほしいのです。」


黎人はそれを聞いて、小さくなる。

国家試験どころか、そのあと陽織には今年度の年度末決算と来年度の予算会議に出席してもらう算段までしていたのだから。

それをボソッと伝えると、

「神代さん。鬼ですね。」

と、東山に言われた。

「いえ、でも本人が仕事をしたいというのだから。」

と言い訳を言ったが、

「本当に陽香さんがおっしゃる通り、似た者夫婦ですね。今はどちらが大切なのですか?お子さんですか?お仕事ですか?」

それは鷹人が生まれる前に、神鬼にも言われた言葉だ。

黎人は美咲が専業主婦だったので、陽織にもできれば家庭の中で子育てを中心にやってもらいたい。その中でもできる仕事をと考えたからこそのレイリーの仕事だった。

まさか、普通の企業に就職するとは。


「子どもです。協力してください。よろしくお願いします。」

黎人は意を決して頭を下げた。


その後高樹は神薙に連絡を入れる。

なぜ陽織の論文がいまだに完成しないのかを聞くと、意外な返事を受けた

本人が納得しないだけで、四年生のレベルなら十分、大学院でも通用する内容らしい。

「本当にこれドクター論文でも出す気でいるのかしら。って、笑うくらいだもの。」

そういわれて、本人の承諾なく、陽織的には未完成なまま論文を提出してもらった。

あとは国家試験だけ。

年末の決算関係は、来年度から園長に内定している神北物産の社長の甥で、男性保育士の神北康介にお願いすることにした。彼はもともと小学校教諭と幼稚園教諭の免許があったが、園長先生を任せるには保育士の免許も必要ということで、そちらをとってもらっていた。

昨年無事に、保育士免許を取得したので、4月から正式にレイリーの園長先生になる。

今年は陽織と一緒に年度末の会議に出てもらうつもりでいたが、こうなると彼一人に頑張ってもらうしかない。後は叔父の神北に聞いてくれ!


「それではあとは、国家試験だけということですね。」

東山に確認されて

「はい、あとは僕の弟と、陽織の兄の結婚式だけです。」

と黎人が答えると、東山がまだあるんですか。

という顔をした。


翌朝、約束を守るという条件で退院を許可してもらった。

色々とひどい。

問題集も返してもらったが、そこにいろいろな付箋が貼ってある。

誰が貼ってくれたのだろう。


黎人は仕事、鷹人は保育園で家には誰もいなかった。

このまま大学に行こうかな、と思ったら美咲がやってきて、お昼の支度を始める。

食べろ、ということらしい。

午後、美咲がそのままいると、祈梨がやってきた。

祈梨は3月に悠人と結婚することになったので、12月に仕事を辞めた。

今はお料理を習ったり、マンションの片づけをしているということだった。

「お仕事はしないのですか?」

と陽織が聞くと、

「わたし、家事とか得意じゃないし、それに夏に、その赤ちゃんが生まれるから。」

と聞いて、思わず

「おめでとうございます。」

と喜んでしまう。自分のことは忘れて。

そんな風に喜ぶ陽織の顔を見て、美咲が

「これが普通なのよ!どこの母親が5月に子供が生まれるのに、4月から新しく就職するのよ!」

と怒っている。

「で、どうしてここでお話をしてるのですか?わたし、勉強したいんですけど。」

と、美咲の言葉を軽く流して陽織が言うと、

「ちょっと、今の話、聞いていた?」

とさらに怒られてしまった。

「すみません。」

「だから、監視しろって、黎人から言われたの!」

「え?ひどい!昨日一日、何もさせてもらえなかったのにー。」

と陽織は膨れた。

「いいです。わたし明日は大学にいきますので。」


そういって、陽織はリビングに美咲と祈梨を残したまま、2階の自分たちの部屋にあがってしまった。


今朝返してもらった問題集を開くと、付箋にいろいろな言葉が書いてある。

字が違うものがあり、複数人が書いたことがわかる。

どうやら、市原たち明王大学病院でお世話になった、管理栄養士の先輩たちが、陽織に問題集の中でも特に覚えておいたほうがいいところや、ポイント、法律が変わっていて古いところなど、様々な指摘をしてくれていた。

それを見たら、嬉しくなった。

そして最後に、それぞれの言葉、プラス東山から一言が添えられていた。

「無理をしても成功に結び付くとは限らない。休むことも大切!一番良い体調で臨むこと!」

と書き添えられていた。

(う、痛い!)


リビングでは、美咲がお茶を入れている。

「あの、良いんですか?ここで、お茶していて。」

祈梨は自分が陽織たちの家にいて良いのか不安になる。

「そのうち、降りてくるわよ。まさかお客様放って部屋で勉強なんて。」

と、美咲は言うが、陽織は降りて来そうにない。


1時間が過ぎた。

「まさか、本当に勉強しているんじゃ!」

1時間半が過ぎた。

「ちよっと、見てくるわ!」

そう言って、美咲が2階に上がろあとしたら、陽織が降りて来た。

「何やってたの?」

「え?勉強してました、けど?そろそろ、お夕飯の支度、と思って。」

陽織の答えに、美咲は唖然とする。

まさか、な子だった。

「あなた、お客様を放って!」

「えー、だってわたし、勉強する、って言いました!」

「おバカ!お医者様になんて言われたか忘れたの?」

んー?

なんだっけ?

「えと、万全の体調で、試験に臨んでね!だったような?」

後ろで聞いてる祈梨がクスクス笑っている。


「それじゃ、わたしも夕飯の支度がありますのでそろそろそろ。」

と言いながら、ちょっと気分が悪そうになった。

「大丈夫、ですか?おトイレ、そこですので!」

と、陽織が支えようとする。

「大丈夫です。わたし、あまり大したことは、ないです。急に立ち上がったから。」

「その、もしよかったら、うちでお夕飯、ご一緒しませんか?わたし、作りますので。」

と陽織が言った。

「そうね。鷹人はわたしが迎えに行くから、悠人にこっちに回ってもらいなさい。」

美咲にも言われ、祈梨はソファーに座り直した。


「あの、食べられないものとか、ありますか?」

「特には。揚げ物のような油っぽいもの以外なら大丈夫です。」

と祈梨に言われ、陽織は良いなーと言う。

祈梨を座らせ、陽織は夕飯の支度を始めた。

あっさりしたものが良いなら、と大根のサラダと魚の塩焼き、味噌汁、青菜の辛子和えをつくった。


「手際良いですねー。」

祈梨に言われるが、それを仕事にするのだから、と陽織が笑った。

「あ、でもわたし、秘書課なんです。」

およその下拵えの後、陽織がソファーに座って言う。

「秘書課?」

「その、暫定的なのか、わからないです、けど。」


黎人たちは遅くなるからと、鷹人が帰ってくると、お風呂に入れて、3人でご飯にする。

以前は子どもがいる食卓に慣れなかった祈梨も、一生懸命勉強しているようだ。


鷹人は3歳過ぎて上手にご飯を食べるので、前のようにこぼすことはほとんどない。

むしろ、あまり食べない上に、遅い陽織の口に、時々突っ込んでくる。

「ママ、赤ちゃん、おなか空いちゃう!」

と言って。


9時を過ぎた頃、黎人と悠人がほぼ同じタイミングで帰って来た。

「そっかー、今日祈梨さん、来てるんだ。」

と、悠人と話しながら入って来た。

「ただいまー、陽織ー!大丈夫?ちゃんとやすんでた?ダメだよ、無理しちゃ!」

と、立て続けに言いながら、ぎゅうぎゅう抱きしめて、何度もキスをする。

「ちょ、黎人、さん、恥ずか、し。」

「パパー、たっくんも、ぎゅー!」

「鷹人も、だだいまー。」

「あのね、パパ、みぃちゃんが、ママ、おべんきよー。って、パパに、言って、って。」

はあ?

黎人はそれを聞いた途端、陽織を抱き上げると

「悠人、ちょっと待ってて!鷹人も、もう遅いから寝ようね!その前に、ママを寝せようね!」

と言って、鷹人を連れて2階に上がってしまった。


「あ、じゃあ、わたしがお二人の支度しておきます。」

祈梨が言って立ち上がった。

「え?黎人さん、今祈梨さん、悪阻の時期なのに!」

陽織が必死に言っても、黎人は離さず、2階に連れて行くとベッドの中に放り込んだ。

「明日も、大学いっちゃダメだからね!今週いっぱいお休みだよ!」

と言って部屋の灯りを消す。

「ひどーい!」

「さ、鷹人もお部屋で寝ようね。」

「うん、たっくん、にいしゃまだから、一人で、ねんねする!おやしゅみー。」

そう言って、自分の部屋に入って行った。

「おやすみー。」


黎人はほっと一息つくと、ダイニングに降りた。

下では、祈梨が一応テーブルの上に並べて、悠人が、食べずに待っていてくれた。

「あ、ありがとう。で?なに?悠人のところも、おめでた?」

黎人はさっきの陽織の言葉を聞き逃さなかったらしい。

「うん、一応7月の終わり。」

「え?その、式の時大丈夫なの?」

「うん、もう結構、落ち着いて来たよね。」

悠人が祈梨の手を握っている。

「わたし、わりと軽いみたいで。」

それを聞いて、黎人がいいなーと言う。

「陽織ちゃんは、また?」

「んー、2週間入院した。頑張ったんだけど、起きられなくなっちゃって。鷹人の時よりは良かったんだよ。でも、大学でも倒れちゃって。もう、みんなに迷惑かけるからって。」

「あの、今回は?」

「あー、今回は寝不足?と栄養不足。もう、毎日寝ないで勉強とか、論文とか。食事もチョコレートとかで。本当、本末転倒だよ!で、論文発表会の後、大学で立てなくなって、高樹さんに連絡したら、そのまま。」

あはは、と黎人が笑う。

「まあ、こう言うことでもないと、本人も周りも、気づかないから。平気な顔して頑張っちゃうからねー。もう、通常運転が常にリミットブレイク状態。」

悠人と祈梨は唖然とする。

「それなのに、年度末決算やらせるの?」

悠人に言われて、黎人も気まずい顔になる。

「それ、注意されたので、他の人に頼みました。」

注意?

「えと、東山先生に鬼かって。」


「なのに、なんで4月から就職するんだろー。」

「え?それ本気?」



















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。