↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
255/276

陽織、卒論と事件と(就職編)

12月に入って、陽織はますます勉強に没頭する。

没頭すると、食事を忘れたり、寝るのを忘れたり。

ちゃんと2人のご飯は作るのに、なぜか自分のことはおなざりになるので、周りが気を使う。

「陽織ちゃん、食べないと赤ちゃんが!」

と美咲に言われたり。

「陽織、ちゃんと寝ないと、お腹の子に。」

と黎人に言われて、ハッとする。

特に悪阻が収まり、まだお腹も目立たない、安定期に入ってから、酷かった。


「絶対に妊娠中って、忘れてるわよ!」

美咲に言われて、黎人はどうにか対策がないものか、と考える。

ある日、本を読みながら歩いていて、階段から落ちかけた。

ここまで来ると、さすがに周りも目を瞑ってられないと、まだ早いが腹帯を巻かせることにした。

これなら、少しは意識するだろう。

それでも、初めは、面倒だの、熱いだの文句を言っていたら、美咲、高樹、黎人に加えて、陽香にまで怒られた。


「て言うわけなんだもん!」

陽織が珍しく遅刻しそうになった理由を聞いていた羽織たちも呆れた。

まださほどお腹があまり大きくなってないので、うまく巻けない。下着タイプが良いと、前の時に言ったら、神明神社の由緒ある腹帯!と、美咲に言われて、仕方なく使うことにした。

今使うと、まるでサラシをただ巻いてるようで、熱いし、ズレる。

気持ち悪い。

「だいたい、階段から落ちそうになるのが悪いんでしょう?うっかり過ぎだよ!」

そう言われて、陽織も黙るしかなかった。

「で、どこの階段落ちそうになったの?」

「んー、1回めはウチの中で、2回めは病院。」

と陽織が言うと

「え?2回も?さすがにそれは。」

と佳織も驚く。

「ううん、3回!でねー、3回めは大学。」

と言ったら、さすがに羽織から久しぶりにお馬鹿!と怒られた。

「でも、よく落ちなかったね。」

と、言われたので

「ウチの中の時はたっくんが助けてくれた!すごくない?ウチの子!2回めは、そばにいた看護師さんが、真っ青になってたー!あはは。3回めはゼミの先輩がねー、やっぱりびっくりして。」

「あははじゃない!3回めの時は、わたしもそばにいたけど、本当に、びっくりしたんだから!」

と日緒理も怒る。

「あれから、神薙先生まで、陽織から目を離すの禁止令が出てるんだよ!」

え?そうなの?

と、本人は相変わらずだ。


「なんか、黎人さんの心労がわかる。外に出したくないって言う意味。」

そう羽織に言われて、ちょっと膨れた。

「羽織ちゃん!まるでわたしが、うっかりさんみたいじゃない!」

「まるで、じゃない!うっかりどころか!もう、目が離せない、幼稚園児か!陽織は!」


うーっ、となりながら、そういえば、と伝言を思い出した。

「そうだ、黎人さんから何か連絡あった?」

「?特には。陽織の監視任務くらい?」

「なに、それ。まあ、それは置いといて、宏輝くんと2人に頼みたいことがあるみたい。忙しいところ悪いんだけどって。」

「まあ、いいよ?わたしも、陽織ほどじゃないけど、国試はそこそこ自信あるし、卒論ももうおわったから。宏輝は年明けにCBTとかあるけど、年内ならまだ平気だと思う。あ、長期は無理だけど!」

「卒論、終わったんだ。良いなー。」

日緒理と陽織の2人は遠い目になる。

何せ、神薙はその点では厳しい。


なかなかに、理系学部の黎人のようだ。

重箱の隅を突くようなことを指摘してくる。

特に陽織は、1ヶ月近くなんだかんだと、休んだに近い。しかも、最初はいい気になって、カナダにまで行った。他にも、イギリス、北欧、ドイツと広げた。しかしながら、陽織はアジア圏が弱い。

そこで、今度は神北を頼った。正確には脅した?

黎人にチクった!と。初めは負けそうになったが、電話をしたのが研究室内だったので、途中から、神薙が参戦し、勝ち取った!これで、陽織にとっては鉄の壁の向こうの情報も手に入った!


と言うことで、陽織は今、日本と海外の幼児食の栄養バランスについての論文を延々と書いていた。

幼児期は味覚の基礎ができる時期。なのに、意外とそこに関する研究は少ない。児童期ならあるのに。

そう言うわけで、今は神北に紹介してもらった、アジア圏の商社マンの解答を元に、データを作り直している。

さらに、味覚についての研究論文まで探したが、大人はあっても、子どもの、しかも幼児となると、さすがに少ない。

まあ、2、3歳の子どもに聞いても、正確なデータが取りにくいのが、現状なのだろう。

そのため、全然先に進まない。

(たっくんは、何食べても、美味しいしか言わないし。今度苦いものでも、食べさせてみようかなー。)

などと、恐ろしいことを考え始めていた。


そして、陽織からの伝言を受けた、羽織たちは高3生と一緒に六本木のカフェにいた。

神嶋から、六本木で行方不明になった女子大生が八王子で遺体で発見された件だった。

「だから、わたしたち警察じゃないのに!」

羽織が怒った。

神嶋が黎人に話を持ってきた理由が、その女子大生の遺体と酷似したものが、なぜか吉祥寺や世田谷、二子玉川の方でも見つかっている、という点だった。


ただし、いなくなったのは六本木、という共通点もあった。それに、その事件が始まったのが、15年以上前で、その間全く進展していない、というのも、神嶋に依頼された理由のようだ。


そして、もう一つがそこから助かった?らしき人の不思議体験が、神嶋のところに報告されたのも理由だった。

「なんか、それってグロテスクな話、じゃ、ないですよねー?」

羽織は嫌な予感がする。黎人は

「グロテスクっていえば、グロテスクかなー。みんな顔が潰されてるし。」

と言った。それを聞いた羽織は真っ青になる。

「顔‥。それって、関わるこちらも、危険って、こと、ですよね?」

宏輝も考え込む。

「んー、全員、とにかく結界だけは強化していくしかないなー。」

と、黎人はどこか他人事だ。

「とりあえず、今回は彩奈さんと剛志さんが行くから。今更だけど。」

黎人にいわれて、今更?と、不思議顔になった。

「まあ、いざとなったら、剛志さんを盾にすればいいから!」

と、黎人はそう言うと、あとはお願いね!と、帰ってしまった。

一緒に来てた陽織は

「えー、陽織、六本木って行ったことない!行ってみたい。」

と、言ってついて来た。が、黎人に色々口を出そうとしたいたら、陽織は黙って!と、口を塞がれていた。

そして、そのまま抱き上げられて、帰って行った。


なんだったんだろう?


六本木の依頼は警察からのものだった。ただし相手は人間とは限らない。

もし、犯人が霊的なものだった場合、どうするんだ?と思いながら、羽織は打ち合わせ場所に行った。


メンバーは数年前に明王大学附属高校の教師になった、神林剛志。そして今や、神嶋の右腕となった彩奈、宏輝、羽織、大学1年生の神城聡志と巫女の高校3年神西有紗、高校3年の神月大樹と巫女で同じく高3の楠木円香だった。円香は舞香の妹。舞香は普通の術者だけど、円香は巫女。だから舞香が最近焦っている。


まずは彩奈が今回の事件のあらましを話し始めた。

今から2ヶ月前、六本木の街中で、友だち3人で普通に歩いていた大学生の関根由里が、忽然と姿を消した。

そして1週間前、八王子の公園で遺体となって発見された。

顔を潰されて。由里だと分かったのは、指紋とDNAの鑑定によるものだった。

しかし、調べていくと同じように、一年前六本木で忽然と消した女子大生の雪乃沙也加は、吉祥寺で見つかっている。


3年前には世田谷で、6年前には二子玉、10年前には青梅、12年前は豊洲、15年前には国立。

まず、初めはシリアルキラーの犯行、と警察は考えて捜査を開始していた。

しかし、それではどうしてもわからない点が多すぎて、毎回先に進めなかった。

コレ、と思った犯人には、どうしてもアリバイがあったり、移動手段の決めてがなかったり。


そうこうしているうちに、15年になってしまった。

「被害者の共通点は女子大生、と言うことと、もう一つは、ちょっとした霊的な力があったらしい、ということ。」

彩奈の話に

「霊的な力?」

と、学生組が、全員注目する。

「とは言っても、神家のように正式なものじゃないと思う。で、一人助かったのは、実は神家の1人だったんだよねー。」

「神家?」

「だから、助かった?」

「んー、まずは、会ってみる?」

彩奈が言ってみると、羽織はノリノリだった。

しかし、顔が潰されて、と言う話を聞いてから、高校生組は全員引いている。

「じゃあ、私が代表して会います。高校生には、刺激強すぎかもだし!」

羽織は、宏輝と一緒に、剛志、彩奈についていくことにした。


生還した被害者は神林恭子。神林剛志の祖父の従兄弟の孫だとか。確かに遠い。

彼女は事件の恐怖から立ち直れず、その後ずっと家に閉じこもっている。

現在23歳の女性だ。

他の女性との違いは顔を怪我したものの、傷が残ることもなく済んだこと。そして何よりも生還できたことが大きい。

しかし、その時の恐怖から、彼女は心に大きな傷を抱え、今でも部屋から出られない。

そのことが原因で、大学も中退、就職もできず、2年がすぎた、と言うことだ。

恭子の家は、神家の中ではごく一般的なサラリーマン家庭で、家も東京郊外にあるマンションだった。


恭子の家に行く時、一応陽織もついて来た。

何かヒントがあるかもしれない。

ただそれだけの理由ではなく、陽織は恭子が助かった理由の神家、と言うものに、引っ掛かりがあったから。
















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。