陽織、召喚される?(就職編)
半日がかりでなんとか校舎内の悪霊は一掃した。
もう8人の力は、カラカラだ。
「黎人ー、まだここを浄化しなくちゃならないんだよ?どうするの?」
「んー、困ったなー。なんでこんなに弱いんだろー。」
大人2人は高校生たちを見て頭を抱える。
「この中で、まだ浄化するチカラ残ってる人いる?」
と聞いても、誰も返事をしない。
来年大学生になる、大樹たちでさえ。
「じゃあ、僕たちがやろうか。あまり得意じゃないけど。」
高嶺の言葉に、黎人が待ったをかけた。
「ここはやっぱり見本見せておかないと。」
「え?何する気?」
「でも往復できるかなー。今日は8人乗りだから大丈夫か!」
「ちよ、待って、まさか!」
高嶺が止めるままなく、黎人がハクを呼び出した。
2人の目の前に、突然現れたのは、鷹人を膝に乗せて本を読んでいた陽織だった。
「な?」
陽織の驚く声と、周りの高校生が、唖然とする顔。
「陽織ー、ごめんね。ちょっとチカラ貸して欲しいんだけど。」
黎人がそう言って、高校生の前で、陽織を抱き上げてキスをする。しかも、かなり濃厚な。
「だめ?」
「な、何考えてるんですか!わたし、一昨日退院したばかりですよ?そんなに、チカラないです!それに今、わたしのハク使ったでしょ!」
「僕もチカラわけたから。それとも、もう一回わけたほうがいい?」
「け、結構、です!」
そう言うと、陽織は黎人の腕から飛び降りる。
「ちょっと、黎人!陽織は悪阻酷くて入院してたんだよ!わかってるの?あとで、父上に怒られるよ!」
流石に黎人も高樹を出されてちょっとたじろぐ。
「え?もしかして、お二人目ですか?おめでとうございます!」
優太がキラキラした目で陽織に駆け寄ってくる。
「あ、うん。ありがとう。」
その時、
「ママー、あのばっちいの、キレイキレイするの?」
と、鷹人が聞いてきた。
「うん、そうだよー。」
と答えると。
「たっくんもやるー。」
と言い出した。
「たっくん、キレイキレイできるよー!」
それを聞いて、黎人は高校生たちにドヤ顔をした。
「お前ら、3歳児に負けんの?ダサ。」
「たっくん、とりあえずママのお手伝いをしてください。たっくんは、お兄さまだから、赤ちゃんを守ってね。」
そう言うと、陽織はみんなの前に立つ。鷹人は陽織のお腹に抱きついて、赤ちゃんを守る。
そして、小龍の力を借りて白桃を出した。
「ハク!お願い!」
陽織が白桃を掲げると、周りに白い光が広がり、廃校舎を包んでいた淀みが徐々に綺麗になっていく。
そして、その光が消えた後には、最初の薄暗い汚れた廃校舎の姿はなかった。
巫女の4人は、その様子にただ感嘆の目を向けている。
チカラが違いすぎる。
「んー、十分の一くらいで済んでよかったー!」
と、陽織が呟く。
鷹人がひっついていたからか、陽織は意識を手放すことなく振り向いた。逆に鷹人が、寝てしまう。
陽織はしゃがんで、鷹人を抱きしめる。
重くて抱き上げられない。
「さて、これで終わりだから、遅くなったけどお昼にしよう。反省会も兼ねて。」
「もう、わたし明日大学なのに!」
陽織が膨れる。
「ねえ、昨日からそれ言ってるけど、明日は祝日だよ?」
陸斗たちは帰りは高嶺の車に移動し、黎人のワゴン車にチャイルドシートを取り付けた。
優太が助手席で、一番後ろに残りの3人。
お昼は個室のある和風のファミレス。
「まずは食事!これは言われてるからわかるよね?」
と黎人に言われて、全員がコクコクうなづく。
「で、次なんだけど、大学生組から、色々教えてもらってないの?」
と言われて、全員が困惑する。
(湊人たちめー!全く自分のことしか、考えてないんだから!)
「特に、高3の2組は帰りに高嶺さんから、しっかり教えてもらう!大先輩なんだから!」
「え?僕が教えるの?」
高嶺が顔色を変える。
「当然です!一番見本として適任です。」
そう言われて、返す言葉がない。
黎人の横で起きた鷹人が、ご飯をパクパク食べている。お子様ランチじゃ足りなそうだ。
「たっくん、ママのおうどんも食べる?」
と陽織が聞くと、うん、と子ども用のお椀を差し出す。
「陽織は、ちゃんと食べる!チカラ使ったんだから!」
「誰のせいよ!」
と、陽織に返された。
「まず、現場に行ったら、何するの?」
黎人に聞かれて桐吾が手を挙げた。
「え、と周囲の様子を見て、必要なら結界‥。あ。」
そう答えて、まず自分たちのミスに気づく。
そのあとは、黎人と高嶺に次々と質問されて、答えて、を繰り返し、反省会は終わった。
「大学生組、指導者としては、使えないのが多いからなー。」
「みんな個々が強いし、仲良いから、なんとなくでわかっちゃうんだよね。ぼくたちの時は黎人がいたし、湊人たちの時は陽織がいたから、なんとなくで、できちゃった?」
高嶺に言われて、黎人は初めて一番の問題点に気づく。
「絶対的な強者がいると、楽なんだよ。」
高嶺の言葉に、過去の自分たちの行動を反省する。
「これは、父上世代に教えてもらうしかないかなー。」
と言われて、それはダメ!と言い放つ。
「大神先生、世代が一番いいんじゃない?」
と陽織が言って気づくが、それに教えてもらってるはずの高校生ができないって意味ある?
となってしまう。
「やっぱり、彩奈さんかな。」
「そうだね、僕たちの先輩世代が一番適任かもしれない。本当は大学生組が、毎回指導するのに‥。」
高嶺も弟の和嶺が使えないことに気づいた。
「あとは巫女の子たち、わかってる?隣にいるのはただのパートナーじゃないんだよ?天神さんのパーティーでも言ったけど、隣の相手が一生涯の相手だからね!高嶺さんや僕みたいに。」
親があのパーティーに出席していた神薙、神明の2人は、あっという顔をする。他は、まだ意味がわかっていない。
「再度、各家の当主に通達するけど、他の人を選んだら生きていけないと思っていいよ。そう言う相手なんだから!」
食事が終わると、各自、高嶺と黎人の車に乗り、そのまま発進しようとした。
その時、陽織が突然話す。
「ダメだよ!ここに来ちゃ!ちゃんと逝って。わたしの赤ちゃんに触らないで!」
その声に、黎人が慌ててエンジンを切った。
陽織の声に振り向いた優太と黎人は、ワゴン車のステップに、禍々しさを発する子どもの霊を見た。
咄嗟に
「みんな、巫女を守れ!」
と、黎人が叫び、運転席から飛び降りた。
優太も助手席から降りる。
隣の車から、高嶺も降りて、中の4人は外に出ないように指示する。
優太が、ワゴン車の後ろの扉を開けると、鷹人が
「ママと赤ちゃん、たっくん守る!」
と言って、えいー!と叫んだ。
すると、子どもの霊がワゴン車から外に飛び出す。
そこを優太が見逃さずに、祓った。
鷹人と優太の機転に、周りが感嘆の目を向けた!
「すごい!」
「やったな!」
「偉いぞー!鷹人ー!」
黎人は我が子第一だ。
それに、陽織が唖然とする。対話もへったくれもなく、祓っちゃった。
「陽織、今のは祓って正解だから!」
陽織の心を読んでか、黎人が冷たく放った。
陽織も、渋々頷く。
「とにかく、巫女の霊力は悪霊にとってのご馳走ってことも忘れない!自分の巫女は自分で守る!これも鉄則!」
と黎人が付け加えた。
その後、三年生組は高嶺の車で、延々と色々聞かされ赤くなったり、青くなったり、大変な思いで都内に戻った。




