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黎人、使えない若手たち

黎人は桐吾たちを車に乗せて、高嶺と待ち合わせの場所まで行った。

「黎人、今日はよろしく!」

待ち合わせ場所には、神明優太、神代陸斗と言う、黎人の従弟、それに神月大樹と言う高嶺の従弟がいた。

陸斗と大樹は高三、桐吾と優太は高二だ。

10月末の今、すでに大学合格は決めた。

もちろん、大樹は医学部になる。


「黎兄、今日陽織さん、来ないのー?」

優太は湊人の真似をして黎人のことを黎兄と呼ぶ。

「なんで?今日、陽織、用ないから。」

「なんだー、テンションだだ下がりー。」

なぜか陸斗と優太の2人が真似して言った。

「お前ら、自分の巫女がいるだろう。なんで陽織がいないと、テンション下がるんだ!」

黎人に言われて、

「だって。」

「ねー。」

と、優太と陸斗が顔を見合わせた。

「やっぱり、女神のご加護があるのとないのとじゃ、違うじゃん!」

と、桐吾まで訳のわからないことを言い出した。

「そうなんだ。陽織、人気だねー。」

と高嶺が呑気に話す。そして自分の父方の従弟に

「大樹は?」

と聞くと

「いえ、ぼくは幼少の頃、姉と2人で陽織さんをいじめて、高樹さんとお祖父様に、これでもか、と怒られた記憶があるので。」

と、ちよっとトラウマになっているようだ。


高嶺の車は5人乗りなので、大樹と巫女の円香が乗った。それ以外は、ワゴン車の黎人の車に乗る。

「えー?今日6人も乗るのー?やだなー。」

と言っている。


大樹の姉、麻美は陽織よりも一つ上。

自分が最初に生まれた神月家の孫娘。

そう言う自己愛が強かった。

しかし、それから一年後、陽織が生まれ、神様の花嫁であることをを隠すために、祖父母や高樹が様々な方法で大切に守ってた。理由を知らない麻美たち家族からしたら、麻美と陽織に対する祖父の扱いがあまりに違う、と言うことだったのだろう。


そのため、麻美自身、と言うより、おそらく麻美の母、夏美が陽織に対して良い感情を持っていなかったようだ。

親戚で集まると、必ず陽織と陽香は悪く言われた。

無能、見鬼の才がない。一族の恥。

しかし、陽織が高一の時、力の封印が解かれ、その後、陽織は神様の花嫁として黎人に嫁いでいる。


麻美は巫女ではない、ただの術者。

未だに伴侶がいない。

麻美にとって、今の陽織の存在は妬ましさから、男に媚びるだけの女、と言う見方に変わっている。

だから、同じ"いとこ"でも、神代のように親しい雰囲気はない。陽織も、麻美や大樹と関わることは、避けている。


車は甲州街道をひたすら西へ向かった。途中、立川のあたりから青梅方面へ北上する。

拝島あたりから山が迫ってきて東京とは思えない光景になる、

「やっぱり免許取りに行こうかな。」

助手席の陸斗が言う。

「湊人も、大学入試終わってから教習所行ってたよ。みんなそんな感じかなー。女性も持ってる人多いし。確か神澤さん、羽織さんは持ってるよ。」


青梅市の先にある、奥多摩町の中でも、今にも熊でも出そうな場所に到着する。

「とりあえず、今日は廃校の処理です!さほど難しくないので、僕たちは見てますから、みなさんで頑張りましょう!」

黎人がそう言って、高校生組が、おー!と声を上げた。


桐吾は銀虎と巫女の鈴奈、大樹は赤虎と巫女の円香、優太は碧狼と巫女の楓、陸斗は翠虎と巫女の七緒の8人が、まずは話しあって、廃校の中に入っていく。

「偉いなー、ちゃんと話してる!湊人に見習わせたい!」

「しょうがないよ。湊人や和嶺は個々の力が強いから。」

8人は、それぞれ場所を四分割にして外側から内側へ攻める陣形をとった。最後に中心に強いのを集めて、全員で叩く、と言う戦法らしい。

「でも、うまくいくかなー。」

黎人は笑って見てる。

強い霊が動かせなかったら?

強い霊が逆に端にいたら?

「それに、なんでみんな結界はらずに、始めるんだろうねー。外からこう言う場所は、新しいのが入りやすいのに。」


それを聞いて

「それじゃ、結界を張っておくよ。」

と、高嶺が笑って動く。

現地に着いたのは10時を過ぎた頃。

この規模なら1時間と見ていた。

しかし、もうすぐ、12時になる。



「意外と時間かかってるねー。」

高嶺が腕時計を見て言う。

「確かに12時過ぎました。それほど強いのがいたのかなー?」

心配になり、中へ入ろうとすると、一組が出てきた。

「終わり、ました。」

2人とも肩で息をしてる。

「結構たくさんいたの?」

「そう、ですね。だいたい、12体、くらい。」

「それって、中級クラス?まさか、小物じゃないよね?」

黎人がニッコリ笑うと、2人はヒッと怯えた。

「で、陸斗先輩の方に、ちょっと大物いたみたいで、3組がそちらに行ってます。」

なるほど、と言うと、黎人は高嶺にその場を任せて、中に入った。


中はほとんど、霊らしきものはいない。

いても浄化すれば、空っぽになる程度。

2階の校舎右手に折れると、確かにかなり不穏な空気を纏った霊がいた。

優太、桐吾、大樹の3人がそれぞれの使役獣を出して、対峙してるが、

「ここ、どれくらい時間かかってる?」

一番近くにいた巫女の楓に声をかけた。

「えと、30分くらい、です。」

(時間かかり過ぎ)

「この中で、誰か土か氷、使える人いる?」

すると、鈴奈が手を挙げた。

「じゃあ、あれの足止めして。」

「え?あれ全部へ無理です!」

「黎兄、俺やる!桐吾となら、凍らせることできる!」

その中で、優太がそう言ってきた。


2人は氷系が得意らしい。

「じゃあやって。」

といわれると、2人は使役獣を戻そうとしたので、

「待て待て!その前に、ほら巫女の3人は結界!」

言われて初めて、あっ、と結界を張って使役獣を戻してもすぐに攻撃されないようにした。

そのあと、すぐに、使役獣を引っ込めた2人が思い切り氷を悪霊に向けて解き放った。


足元から、徐々に凍っていく。

が、なかなか一気にいかない。

ちょっとイラッとした。

湊人なら、圧縮できるのに!

完全に凍った霊に向けて、黎人が手をかざし、握り潰すように、思い切り拳を握る!

と、バリーン!!と言う音と共に、霊が霧散する。


その様子に、6人は呆気に取られてる。

違いすぎる。

力が桁違い!


「で?これで終わり?」

桐吾が、おそらく、とうなづいた。

本来なら、大樹と陸斗の方が年上なんだから、指揮をとって欲しい。

(湊人や葉鳥たちは、こう言うの教えてないの?)

とイラついて、あ、あいつらができなかった、と、頭を抱えたくなった。


7人で外に出ると、高嶺がお疲れ〜、と声をかけてきた。

「じゃあ巫女は、この辺りを浄化して、パートナーに供給ね!」

と高嶺が言うと、全員がポカーンとしてる。

「え?巫女の仕事、知ってる、よね?」

「ちゃんと、神嶋さんたちに教えてもらってるでしょう?」

と2人がたたみ込む。

「え?でも、ここで、ですか?」

と、鈴奈が顔を赤くした。

「じゃあ、浄化は?」

「え、と、わたし、もう、無理、です。」

と、七尾。

チッ!

それを聞いて、黎人が舌打ちをした、

「巫女じゃなかった頃の、羽織さんの方が使えた、」

と一言。










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