↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
251/284

陽織、最強!(就職編)

陽織が落ち着いて眠ったのをみて、黎人は病院を後にした。

陽織のことは心配だけど、鷹人を置いて来てしまった。早く帰らないと。

それにしても、と黎人は頭を抱えた。

どうして面倒なことが次々と起こるんだ。


はじめは、中間決算の会議の日。

陽織が倒れて、本人は、妊娠がわかった。

そのあと、新薬の開発が進んでいた部署から、同じような薬を他社が開発中との情報が入る。

完全に同時発表となれば、権利問題、そして訴訟問題になる。

そして、陽織が中絶したいと言い出した。

なんとか産むことを決めたものの、今度は悪阻で日常生活が送れなくなった。

その間、秋の会合が開かれて、先日の全国的な神社の封印の話が出た。

陽織は、自分の体調が悪いのに、就職のことを優先して考えている。

新人の術者がなかなか出てこない!

これも、いつまでも重鎮たちがうるさく口を出していたくせに、神嶋がうまくかわせなかったせいだ。

ふざけるな!


もう、何をどう順番に対処したらいいのか、わからなくなる。


その中で、和嶺と美織、悠人と祈梨、笹神弁護士と神岡梢絵の結婚が決まった。


銀虎を使役する神薙の息子、神薙桐吾が高校2年になり、大学一年生の美織の弟、神城聡志が白虎を使役している。この二人には巫女も現れている。

羽織の双子の弟、葉鳥は今黒狐を使役して、幸穂がその巫女だ。彼らは戦力になるし、前回の神社の修復にも、先頭を立って頑張ってくれた。


黎人は家に帰りながら、頭の中で色々整理をしている。

絶対的な力を持つ自分と陽織が、今は戦闘不能状態だが、それを埋めるのは、人海戦術しかないのが痛い。

いざとなれば、自分だけで、小龍を飛ばせば、龍を使役する者は楽になる。


母屋で夕飯をとり、鷹人と帰って、お風呂、そして寝かせようとしたら、一緒に寝たいと言い出した。

陽織が一人の時、一緒に寝ているらしい。

お休みなのに寂しい思いをさせたので、初めて2人で一緒に寝た。


朝の5時を回ったころ、いきなり鷹人が泣き出した。

ママ、ママと、何回も言っている。

嫌な予感をしたら、病院から電話で、陽織が血を吐いた、と言うことだった。

すぐに二人で着替えて、車で駆けつけた。


病室に入れず、しばらく待っていると、意外にも本人はケロッとしていた。

「やだ、大袈裟なんだから!」

と怒ってる。

「だって、血を吐いたって。」

と聞くと

「吐くもの無くなっちゃったら、どこか切っちゃったみたいなんだけど、検査ができないから、しばらく様子見て、だって。今日は桃のゼリーだから、食べたかったのにー。」

と怒っている。

しばらくは食事ができないみたい。

「陽織、傷はすぐ治るのに。」

と話していると、看護師からマスクを渡された。

どうやら喉を切っている可能性があるから、喋るな、と言うことらしい。

うーっ、と怒って、紙とペンを渡された。

筆談しろ、と言うことらしい。


早朝から車を出していたことに気づいた両親から、何度も、何があったんだ、と電話が入っている。

鷹人は、早く起き過ぎて、眠くなって、陽織のベッドの中で、寝てしまった。


慌てて美咲たちも駆けつけたが、思ったよりも大事に至らなかったことに、ホッとしている。

それでも、日曜日なのに高樹は出勤してきて、ちゃんと陽織のことを色々と調べたり、吐いた血を検査に回したりしていた。


なんだか目が回るくらい忙しい。

神嶋からは、鎌倉の神社の結界が敗れた場所で厄災が起こったので対処してほしい、という依頼が入った。ので、手が離せないから悠人にお願いした。

悠人は笑いながら、祈梨と湊人、千織、桐吾と巫女になる高校一年の神明柚乃羽を連れて行った。

本当は桐吾と柚乃羽の力を知りたかったので、ついていきたかったが、その日に陽織が吐血した騒ぎがおこってしまい、結局行くことができなかった。


今思うと、こういうことを長の立場だった、天神がやっていたような様子を見ていない。すべて神嶋が一人でやっていたような気がする。

一体あいつは何をやっていたのだろう。そう考えると、さっさと退陣してくれて良かった。


よく月曜日は、例の新薬の件で知財と弁護士、弁理士との話合いをする。

どこまで同じような手法を用いているのか、どこが違うのか、もちろん全く違うものなら問題はない。

一日中、そちらの話し合いがもたれて、梢絵は昨日も休日出勤になっていた。

競合する他社の情報を得ることができれば一番だが、違法な方法で情報を得るのは何かあったときに面倒になる。やろうと思えばできるが、そこのところも難しい。

何せ、神様の力(小龍)を使えば、人の情報を得るのはたやすい。しかし、悪いことに使えば、それには必ずリスクが伴う。だから絶対に使うことはない。

となると、あとは競合他社と駆け引きをするしかなくなる。


新薬の開発にはどの会社も億単位のお金をかけている。簡単に負けるわけにはいかない。なかなか厳しい世界だ。

「社長、開成製薬の大石社長からお電話です。」

来たー!と思ったが、顔に出さず電話に出る。

向こうが動き出した。

こちらが若造だと思って、なめてかかってくれるのが一番なのだが。


夜遅く、色々頭を使いすぎて疲れていたが、自分の補給も兼ねて病院に行った。

面会時間ギリギリだったが、高樹が気を利かせて入れてくれた。

高樹も昨日のことがあったので、遅くまで陽織のことを見ていたらしい。

陽織の部屋に入ると、今日も夕飯を食べることができず、ちょっと膨れていた。

「やっと少し食べても大丈夫になったのに!わたし、絶対に傷は塞がってると、思うんだよね!」

と、怒っている。

入れ替わりで高樹が帰っていったので、黎人が上着を脱いでネクタイを外していた。

「もしかして、今日すごく疲れてるの?」

と聞いてきたので、そのままギュッと抱きついた。

「もう無理!今日は陽織分補給。」

「え?わたし相手できないよ?」

「できることだけで良い。」

と言って、シャツを脱ぐととにかくギュッギュッと抱きつく。

「頭を使い過ぎてパンクしそう。」

黎人のそんなセリフ、出会ってから初めて聞いた。

ちょっと目を丸くしたが、なんか可笑しくて笑ってしまった。

「なに?」

「黎人さんでも、そんなこと言うんだな、と思って。」

「え?一応、人間だよ?」

と言われて、あははと笑い出してしまう。


陽織も、上だけ脱いで肌を重ねた。

龍と花の痣が重なると、たくさん補給できるらしい。

「黎人さん、忙しいのに大丈夫?」

と聞くと

「んー。むしろ陽織分を補給して、明日の決戦に備えます。」

と言った。

「明日、決戦なんだ?」

「そう。絶対に負けられない!」

今まで、仕事のことは、ほとんど話すことはなかったのに、珍しいな、と思った。でも、それがなんとなく嬉しかった。


翌日、黎人は綾人、研究開発室長、今回の新薬の開発者、知財こ弁理士、梢絵、弁護士の笹神と共に、敵地の開成製薬本社に乗り込んだ。

元々、神代が持っていた薬の権利が切れ、それを改良したものの権利を争うものだった、


開発段階の手法、対象、薬効などはほぼ同じ。

後はどちらが先に手掛けたか、開発したか、成功したか、などさまざまな論点での争いになる。

その時、黎人は相手の思わぬミスを見つけてしまった。

おそらく、それは当たり前過ぎて相手も見逃したのだろう。しかし、そこを崩せば、向こうは販売開始が確実に遅れる。


「開成さん、こちらの対象の点ですが、対象外のところに、妊娠中の女性への文言が抜けていますが、これは妊娠中も安全である、と言う確認が取れている、と言うことですね。」

黎人が切り込んだ。

内服薬の多くは、妊産婦への注意勧告は必須だ。

それが抜けていた。

だったそれだけのことだった。

しかし、そこから梢絵が授乳中も抜けている、高血圧も、と次々と相手の砂城を切り崩していく。

そしてこの会議については、特許申請の手続きにもかかわるため、すでに知財は全ての申請書類を用意して望んでいた。

相手も同じだったはずなのに、たった一つのミスから、次々とミスが見つかり、あとは神代の大勝利だった。


すでにお昼は回っていたが、まずは申請と審査が先と、知財部と笹神は別行動になった。

黎人と綾人は会社に戻り、遅いお昼にする。

広報室にも今回の朗報を伝えて次の戦略に移る。

「それにしても、相手も妊娠中が抜けるなんて、ありえないミスをしていましたね。」

綾人が言った。

「年齢的に一番遠い立場だったのかな。僕も独身なら見抜けなかったかもしれない。」

と、陽織と鷹人の写真を見ながら話す。

「やっぱり、陽織分は最強だな。」

















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。