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陽織、知らないところで嫉妬される

黎人がかなりへこんで、再起不能状態。湊人は、陽織のせいで、というが陽織は黎人を見ていない。正確には意識下出会っていないので、自分が責められても、理由がわからない。

期末試験が返される。やった!と陽織は小さくガッツポーズを決めた。今回赤点はない。

周りからは当たり前だろう、と生暖かい目で見られていることも気にせず。


夏休み中も、夏期講習やサマースクールがある。

サマースクールは涼しい長野にある、学校の大きな寮で行われる、大規模夏期講習だ。

同じ学年をクラス関係なく、教科ごとの成績に分け、毎日10時間勉強、というなかなかハードな勉強合宿になる。

高一、高三は8月の初め。高二は7月末に行われ、そのあとカナダに修学旅行。

中学生も8月の終わりに行われる。

「陽織は古文と日本史、一番下のΓクラスだなー。」

翔太に言われて、ちょっとムッとした。自分だって、ほとんどがβクラスのくせに!

クラス分けを見ていると、確かに古文と日本史でΓクラスにいるのは、Sクラスではわたしだけだ。ちょっとショック!


湊人は、千織と美織に説得され?なんとか怒りを収めてくれたが、正直陽織は意味不明で、謝罪するにもできない。

期末の返却が終わったあとは、新しい生徒会の選挙があった。7月に新しい役員が決まり、夏休み中に引き継ぎ、9月の学園祭が終わると、正式に新しい生徒会が始動する。

今回、湊人は副会長として立候補し、もちろん当選した。湊人は自分の兄が、高嶺と和嶺の不信を買ったことで、関係が拗れている中でも、生徒会長の和嶺とは、なんとかうまくやっている。さすがだ。


終業式の前の日、生徒会の仕事が終わったあと、和嶺は湊人に呼び止められた。

「あ、あの。和嶺先輩、ちょっとお時間いただいて、よろしいですか?」

湊人は改まった話し方で、和嶺のところにやって来た。

「なに?生徒会のことなら。」

「あ、いえ、個人的なことで。」

和嶺は湊人が何を聞きたいのかなんとなく想像できたが、あえて知らないふりをした。

「ごめん、今忙しいから、個人的なことなら夜でも良い?」

湊人は和嶺がたぶん面と向かって話したくない、ということだろうと考えた。

「わかりました。では、夜に連絡します。」


その日の夜、湊人は和嶺になんと連絡を入れたら良いか分からなかった。とりあえず、

『今、お時間良いですか?』といれてみた。が、和嶺にはのらりくらりとかわされて、肝心なことは聞けなかった。

あの日、どうして黎人はあんなにショックを受けて帰宅したのか。なぜ、こんなにも長く引きずっているのか。


終業式の日をモヤモヤしたまま迎え、湊人は少し不貞腐れていた。

「おはよう。」

と陽織に声をかけられても、半分適当に返事をしてしまった。

終業式の後、モヤモヤを引きずって夏休みに突入するのは、精神衛生的に良くない!と思った湊人は、思い切ってみんながいる前で、和嶺に聞くことにした。

(他人がいる方が、ちゃんと取り合ってくれるかもしれない。)

「和嶺先輩!どうしてうちの兄が、先輩たちの不況を買うようなことになったんですか?」

他の生徒会役員がいる前で、堂々と私的な用事を大声で尋ねると、

「わっ、バカ他の人がいる前で!」

と和嶺は湊人の腕を引っ張り廊下に出た。


廊下に出ると和嶺はごめん、と小さく謝る。

「兄上、あ、高嶺が、この前陽織を迎えに行った時、正直あんなに怒ると思わなかったんだよね。まあ、簡単に言うと、嫉妬みたいな?」

和嶺の言葉に、湊人はえ?となった。

「俺はいつも学校で、陽織のこと見てるし、お祭りの時の2人の様子も見たから、陽織が良いなら、良いかな?って。」

「は?あー。」

「でも、兄上は忙しいから、まだ陽織が神様の花嫁には絶対なりたくない、って泣いてた頃のままなんだ。」

「そういえば。そんなこと言ってましたね。」

「その上、5月に続いて、また、だろう?前は病室にいた陽織見て、マジで兄上真っ青になってたし、今回も、連絡もらった時、試験前で忙しかったのに、行くって自分で車出して。ウチはさー、基本、みんな陽織に甘々だから。ただでさえ、花嫁なんてやだ!って泣いてた陽織が黎人さんに抱えられていたから、もう、理由も聞かずに、プッツン、って感じだった。」

和嶺は本当に参った、と言った感じで話してくれた。自分だって受験生で大変なのに。


和嶺の話から、黎人が相当高嶺にきつく言われたのだ、ということが想像ついた。

ただでさえ、双子の兄は子どもの頃から、高嶺に憧れていた。自分が和嶺に憧れているくらい。

とくに黎人は、自分の花嫁が高嶺の妹だと知ると、舞い上がりそうなくらい、嬉しそうだった。

その、大好きな先輩に大好きな女の子のことで、拒絶されたのだろう、と思うと、黎人が気の毒になって仕方ない。

「わかりました。まあ、出来る限りフォローします。」

「うん、ほんとごめん!まあ、運命っていうなら、誰が何言っても、きっとなるようになるんだろうけれどね。」

和嶺はそういうと、先に生徒会室に戻って行った。


陽織は、そんな兄たちのことを何も知らず、とりあえず赤点を回避した成績表片手に、ニコニコ顔で帰路についていた。


夏休み突入したが、学校は夏期講習と名前を変えただけで、普通に朝から授業がある。

一年生の夏期講習は苦手なものだけで良い、と言われたので、陽織は古文と日本史だけで、あとはオフになる。

ちなみに湊人は生徒会、美織はクラス委員長として、秋の学園祭の準備に入っていた。


その合間にも、みんなで映画に行ったり、買い物したりで、あっという間に7月が終わる。

その間、陽織は千織に誘われた合気道の道場に通うことになった。

道場には、他のクラスメイトもいて楽しい。教室が終わる夕方になると、湊人が千織を迎えに来ている時もあり、羨ましいな、と、ちょっとだけ思う。







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