陽織、怒られる!?
目が覚めると、自分のベッドの上だった。
(あれ?何してたんだろう。)
陽織はうーん、と首をひねる。
(かき氷、食べたよね?)
(地下鉄、乗ったような?)
陽織は、どうして自分が家にいるのかわからなかった。何か忘れてはいけないことを忘れたような?でもしばらく思い出せない。
ふとスマホを見ると、千織と羽織から、連絡が入っていた。
『陽織、大丈夫?』
『ひお!今日は本当にありがとう!』
陽織は再度頭を捻って、ポンと手を打った。
そして、二人に返信をする。
『わたし、どうして家にいるの?』
しばらくすると、千織からの電話が鳴った。
千織は黎人たちと別れたあと、帰宅し湊人からの連絡を受けたらしい。
湊人は千織を心配して電話をかけて来たが、なぜか黎人が廃人のようになって帰宅した、と言っていた、というのを聞いた。
(なぜ、廃人?)
おおよその話しを聞いたあと、あの後の展開はなんとなく想像がついたが、高嶺と和嶺が黎人たちに怒っていることは、想像がつかなかった。
陽織はとりあえず汗をかいていたので、お風呂に入ろうと部屋を出た。すると、ちょうど部屋の外で高嶺がお風呂からあがって来たところだった。
「あれ、陽織目が覚めたの?どこか痛いところはない?頭がクラクラするとか?」
高嶺がいつもと違った、グイグイくる。
「た、高兄様、大丈夫です。汗かいたから、お風呂入ろうと。今、誰も入ってない?」
「今、あいているよ。そうだ、上がったら声かけてくれるかな?」
(うん?)
陽織がお風呂を上がりリビングに行くと、母と兄二人がソファーに腰掛けて待っていた。
母は陽織が入ると、夕飯を食べ損ねたことを気にして軽食を持ってくる。
「お父様は今日お仕事で遅くなの。陽織お腹空いたでしょ?もう遅いから、おにぎりね。」
そう言って、母がおにぎりと麦茶、桃を陽織の前に置いた。
陽織は千織から、兄が迎えに来てくれたことを知らされていたので、まずは礼を言った。ただ、黎人と悠人があそこにいたことは、ほぼ記憶になかったので、千織たちから聞いて驚いたことも。
「まったく、千駄木なら迎えに行ったのに。」
「神嶋さんも、きちんと情報をくれないと困るわよね!あの地下鉄は陽織のお友だちだって利用しているのだから。」
「まさか陽織が地下鉄に乗っているとは思わなかった。」
と三人三様に話し始める。
陽織は三人かバラバラに話すので要領を得ない。
陽織の顔が疑問符で溢れてたあることに気づき、やっと三人とも口を閉じてくれた。
そして高嶺がまとめて今回の件で分かったことなどを教えてくれた。
陽織も、自分の記憶を整理しながら話す。
「でも、地下鉄のゲートを乗り越えてまでって。」
陽織が言うと、三人ともうなづく。
「高校以前に、中学からのイジメが続いていたらしい。はじめは、親が学校を起訴する気になっていたが、実は家庭でも酷かったのでは?ということも、明るみになった。そこで、警察は虐待の件でも調べが進んでいる、と言うことだった。神嶋さんは、どちらもどちらだ、と呆れていたがな。」
と、高嶺が説明する。
陽織な最後に少女が言った言葉を思い出した。
「声をかけてくれて、ありがとう、か。」
陽織が呟くと、和嶺が察したように答えてくれた。
「きっと、陽織が大丈夫かと、気にかけてくれたのが嬉しかったんだろう。綺麗に消えたなら、ちゃんと行く場所に行けたんだな。」
「陽織、頑張ったな。エライ!」
それを聞いて、自分がやったことは間違いじゃなかった、と感じた。なのに、なぜ黎人が廃人?兄たちと何かあったの?
と疑問に思ったことを口にしようとした時、
「陽織、黎人にはちゃんとキツく言って置いた。二度と陽織に関わるな!って。陽織が花嫁にならない方法を模索していると言うのに、まったく!」
高嶺が苦々し気に言った。
「とにかく、陽織は危ないところに近づかないように。もしよければ、また車で送迎するが。」
高嶺は、陽織のことを本当に心配してくれている。
「え?あ、はい。ありがとう、兄様。」
陽織は高嶺と和嶺が何か怒っているのはわかった。ただ、その理由まではわからないままだった。
翌朝、学校へ行く道で、徐々に嫌な感じがしてくる。なんだろう、この感じは?
教室に入りしばらくすると、ものすごい怒気を孕んだ空気を感じた。
(まさか、また先生?)
陽織の頭には中間テスト明けの大神の顔が浮かぶ。
と思ったが、その正体は湊人だった。
「お、ま、え、はーっ!」
なぜ怒られるのか、陽織は見当もつかない。
「何やってくれてるんだ!黎兄が昨日帰ってから、マジで、マジで、マジで、へこんでるんだそう!このまま再起不能になるくらい、やばいんだぞ!」
と怒鳴られた。
なんで?なんで?なんで?
わたし昨日、顔も見てないのに!




