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陽織、誕生日プレゼント(就職編)

陽織がバタバタと就活やら、卒論で忙しくしている5月、黎人の誕生日。

黎人は25歳になった。

でも、見た目は相変わらず20歳の時と変わらない。


元々大人びた落ち着きはあったから、ほとんど周りは気づいていない。

わかるのは同じ不老不死の陽織だけだ。


誕生日の日は平日だったので、前倒しの日曜日。

家族3人で出かけた。

最近、喧嘩ばかりだったので、少し休戦?と言った数日間だった。

先週の湊人の誕生日は、陽織がご馳走を作って、盛大に祝ってやった!

肉尽くしパーティー!

ちょうど千織と依頼に行った翌日だったので、千織も一緒に来た。

その時、千織と就活の話をした。

千織は金融系と外資系に絞って受けている。

「もう、陽織よりも英語下手なのに、不安だよー。他の言葉も話せないし。」

と言う悩みを聞きながら、おくらばせながらカナダのお土産が渡せた。

「でも千織も、2年の時イギリスにステイしてたでしょ?すごく綺麗な発音になったよね。」

と言うと、千織は喜んだ。

千織は、今まで自分の親のことを口にしなかったが、国家公務員、省庁に勤めるお役人で、その関係であまり神代の家と密にするわけにいかなかったらしい。

とは、言っていた。


官民何ちゃら、とか、黎人が言っていたような。

それに関しては、羽織や美織も知らないらしく、千織の親関係については、かなりの秘密主義で誰も知らない。姉と兄がいるらしい、と言う話だが、10歳くらい離れているようで、美織や湊人も会ったことがないと言う。


黎人は十神家の長になったときに初めて知った。しかし、千織の親は天神を信用していなかったらしく、これまた黎人以外に知ってるのは大神だけ、湊人も知らない、と言うかなりヤバめの話をされた。

だから、陽織にも話せないと。と言うか、詳しくは千織すら知らないらしい。

知らされた黎人すら、知らなきゃ良かった!と、言っていたくらいだ。ちょっと、ミステリー。


陽織は、小声で千織にだけ就活が難航していることを話す。湊人が知ったら、今度は兄弟喧嘩になりかねない、

「えーっ、そんなことになってるの?」

「うん、千織となんで違うんだって、聞いたら、なんかお母様と2人に怒られた。なんでよ!」

陽織は納得いかずに怒ってる。

「しょうがないよー。おばさまにとって、陽織ちゃんだけがやっぱり、嫁なんだよー。」

「えーっ、やだよー、そんなの!」



そして黎人の誕生日前の土曜日、頑張ってご馳走を作り、日曜日は外食、と言う二段重ねでお祝いした。

「ごめんなさい。わたし、あまり買い物とかできなくて。」

陽織が手作りのプレゼントを渡すと、黎人は喜んでくれた。今回は、忙しい中本当に頑張った!

なんと、黎人と鷹人にお揃いの浴衣を縫った!

「これで、今年の神明神社のお祭り行こう!」

と言われて、ちょっと嬉しかった。

「もう1つは?」

と聞かれたので、

「もう1つ?」

と返すと、

「だから、僕が1番欲しいものだよー!」

と膨れられた。なんとなく察したが、それだけは譲れない。

「えー、わかんない!」

と返すと、そのあとがちょっと、面倒で大変なことになった。


夜鷹人を寝かせたあと、陽織はフニャフニャと寝ていた。それを起こしたのが、黎人のお怒りモードだ。

「なんで怒ってるのー?」

「色々。」

「意味わかんなーい!」

「だって、陽織。前は僕の誕生日は一番にお祝い言いたいって、わざわざ泊まってくれたじゃない。」

陽織は古い話を持ち出されて、ますます意味不明になる。

「今は毎日一緒にいるじゃない。それに、お誕生日は木曜日でしょ?」

そう返すと、いきなり陽織の腕をつかんで

「わかった。じゃあ、約束だからね!絶対だよ!僕次の日休むから!」

陽織はそれを聞いて唖然とする。

「わ、わたしは休みじゃないよ?それに、たっくんに見られたら、恥ずかしいじゃない!」

鷹人に、と言われて、半年ほど前蓮也に怒られたことを思い出す。

「うー。わかった。じゃあ、木曜日の夜だけで我慢する。」

「黎人さん、それ子どものセリフだよ?」

陽織にも呆れられたが、黎人も譲れない。


木曜日の朝、黎人は思い切り顔を綻ばせて仕事に行った。

「陽織、今夜楽しみにしてるからね!」

と言って。

「ん?今夜?そんなにケーキ、楽しみなのかな?」

陽織も今日は午前中で大学がおわるので、午後はケーキを焼く。

「たっくんも、ケーキ楽しみ?」

「ケーキ、ケーキ!」

「良かった!じゃあママ頑張って、ケーキ焼くね!」

そう言って2人は、レイリーと大学に向かった。


黎人は一日中ご機嫌で仕事をしていた。

誰が見ても、今日の社長は機嫌がいい。

どうやら誕生日ということだが、ただの誕生日で、あそこまでご機嫌だなんて。

と、周りの社員たちが驚いている。

「あ、神柴、悪いが今日は終了と同時に帰るから。」

綾人に言うと、少し驚かれたがすぐに仕事の配分を考えてくれた。


大学が終わってすぐに、陽織は帰るとケーキを作り始めた。小麦粉にバター、お砂糖、などなど。

卵白と卵黄は別に混ぜて、卵白はしっかり泡立てる。


オープンに入れて飾りにするチョコレートクッキーも一緒に焼く。いちごを洗ってヘタをとる。

その時、美咲と鷹人が帰ってきた。

「あら、いい匂い。久しぶりね、陽織ちゃんが本格的なケーキを焼くなんて。」

「はい、黎人さんも楽しみにしてくれているみたいなので。」

陽織が答えると、美咲が不思議そうな顔をする。

「陽織ちゃんの手作りだからかしら?」

「今朝、出かけに今夜楽しみにしてるって、言ってたから!」

と陽織がニコニコ笑って答えると、美咲の顔が引き攣った。

なぜ?


「そうだ、鷹人、今日ねおじいちゃまが、すごいお土産買ってきてくれるかもしれないわよ!みぃちゃんの家に、お泊まりしない?」


蓮也は黎人が昼間わざわざ会長室に来て、鷹人を泊まらせて欲しい、と言ってきたことに驚く。はじめは理由がわからなかったが、よくよく考えると、今日は黎人の誕生日だ。きっと陽織と、何か約束でもしたのだろう、と、黎人の願いを了承した。

そして今、孫のために巨大怪獣のぬいぐるみを土産に買った。


黎人はいつもより早めに帰って来たので、早めの夕飯とデザートにケーキを出した。

「お誕生日おめでとう!」

「パパ、おめとー。」

そう言われて、黎人はニコニコする。

鷹人のお風呂が終わる頃、蓮也がものすごく大きな怪獣のぬいぐるみを持って迎えにきた。

黎人さんの誕生日なのに、なぜ怪獣?


たくさん疑問を浮かべながら、後片付けとお風呂が済んで、部屋に入った途端、理解した。

   そう言うことか!

「陽織、約束だよねー。木曜日って!」

「や、約束は、してない、よ!」

「誕生日を一番に、お祝いしてくれなかったんだから、それくらいいいじゃない。」

そう言って、黎人が久しぶりに陽織を強引にベッドの中に引き摺り込んだ。

「もう、ずーっと相手してくれないんだもん!陽織分が枯れそうなんだけど!」

そう言って、黎人が陽織の首にキスをする。

「もう!」

「陽織は?平気だったの?」

と聞かれ、思わず黙ってしまった。

「平気、じゃない、けど。でも、またわたし、」

陽織はいまだに自分のせいで、亡くなってしまった命のことが忘れられない。

だから、ちゃんと産んであげられる時が来るまで、その時までは気をつけなくちゃと、ずっと頭にあった。

「大丈夫だよ。たぶん。」

「なんで?」

「んー、なんとなく。」

   また、なんの根拠もない!

   仕方ない!お薬使うかー。

その晩、黎人は陽織が溶けそうになるまでキスをして、抱きしめた。本当に久しぶりに、陽織のうっとりしたような顔を見る。

   あー、やっぱり可愛い!

   絶対に誰にも渡さない!

「陽織は僕のものだよ!」

陽織は、ちょっと驚いて顔を上げた。

すると

「ね。」

と、黎人にキスをされた。

初めての誕生日を迎えた日のように。


黎人は翌日も上機嫌だった、

部下のミスを見つけて、いつもなら烈火の如く怒ったり、ブリザードが吹き荒れるのに、気持ち悪いくらい優しい?

「なんか、昨日、今日の社長が気持ち悪いくらい優しいんだけど。」

総務課の若手がヒソヒソ話している。

「おれ、いつもならすげー怒られるのに、さっきは、次は気をつけるように、って言われただけ。」

「なんか、いい事あったのかなー。」

綾人はそんな声を聞いて、少し呆れた顔をする。

(そう言うところが、まだまだなんだよ。)

と、口に出したくなる。


ただでさえ、つい先週くらいまで、本当に不機嫌だった。ここのところ、陽織の就活問題で、ことあるごとに喧嘩しているらしい。

でも、就活はまだ始まったばかりだ。

きっとまた、荒れる時が来るな、と思うと、頭が痛くなる。












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