↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
233/290

陽織、カナダの日々(就職編)

カナダ4日目、早朝黎人や綾人はトロントへ飛んだ。

陽織と鷹人はまた大学へ行って、今日は鷹人が昨日お世話になった保育施設に行く。


海外の保育園は、学年別になっていないところが多い。

ランチ持参の施設も多い。

鷹人がお世話になったところも同じなので、マギーにお願いしてキッチンを借りて、お弁当を作った。

カナダの子どもたちのランチはサンドイッチが多い。

鷹人がおにぎりとおかずを持っていると、他の子が興味をもって寄ってくる。

鷹人は仲良くなった、同年代の子どもに、「ライスボール」と言って、見せていたらしい。

ほかにもフライドチキン?唐揚げとどう違うのだろう?に、卵焼き。

卵焼きと言えば、ベイクドエッグで目玉焼きが主流の海外で、卵を攪拌して中にホウレンソウやチーズを入れたものは、オムレツに入るのかもしれない。


マギーと二人、市内にある大きな幼児施設にも訪問し、栄養事情についての話を聞くと、家庭によってはお弁当がマフィンやドーナツ、果物、サンドイッチならいいほうだ、ということを知る。

陽織が、日本では給食制度が多いことや、必ず栄養士がメニューを立てて、毎日変えることを話すと、驚いていた。

せっかく海の幸が豊富なカナダなのに、もったいない。


今日は鷹人に大量の塩サケを混ぜたおにぎりを持たせたので、おそらくお昼にみんなに分けていることだろう。

   DHAは大切なんだよ!


その日の夜、黎人たちは遅くなるということだったので、陽織は鷹人を連れてマギーのところで夕飯をとる。ということになり、以前エリサからのリクエストに応えて、陽織が和食を作った。

結菜も久しぶりの和食に喜んで、一緒に作ることにした。

懐かしい調理実習だ。また、羽織たちに怒られるかもしれない、と思いながら。


「マンマ、おいしーねー。」

鷹人が好きな茶碗蒸しに、鮭の胡麻味噌焼き。

味噌汁と高野豆腐と切り干し大根の煮物。

鮭も高野豆腐も、鷹人と陽織は2人で一人前でちょうど良い。

そんな陽織を見て、マギーは昨日の陽織の言葉を思い出した。


食べたくても、食べられない。

こんなにも食が細くなるものなのか?


翌日は、カナダにいられる最後の日。この日も午前中、黎人たちは国内の製薬会社の人と、会合をする。

陽織と鷹人は帰国の準備をして、モントリオールからトロント、そしてナイアガラの滝を見に行った。

全くの観光なしでは、鷹人が可哀想。

そう思って、カナダらしい景色。

子どもの頃から、カナダに来ると必ず一回は見に来た景色。今は冬のため正直寒い。


慣れた電車に乗って、最寄りの駅で降りる。

陽織は鷹人に雨用のポンチョを着せて、自分も自転車用のポンチョを頭から被った。


ナイアガラの滝を前に、鷹人を連れて行くと、はじめはあまりの大きさと、真っ白な世界、雪景色にびっくりしていたが、徐々に慣れてくると、その大きさに目を丸くする。

「うおー!しゅごーい!」

「たっくん、寒くない?」

今は2月だけど、そろそろ終わりだからなのか、ホワイトワンダーランドと呼ばれる氷の世界も、ほんの少し柔らかく見える。

「ママの大好きな景色だよ!」

陽織も、目を輝かせて見入る。

今まではほとんど夏に来ていた。

実際のホワイトワンダーランドは、思った以上に美しい。大好きな氷の世界。

このまま、この世界の中に溶けてしまいたくなる。


鷹人と2人、スマホを向けて写真を撮っていたら、日本人観光客が声をかけて来て、自撮りではなく、写真を撮ってくれた。


そのあと展望タワーに登り上からの景色も楽しんだ。鷹人もそれを見た途端、大興奮してはしゃぎ出す。

「ママ、おっきい!しゅごい!」

「すごいねー、大きいねー、ママ大好きなんだー!」

展望タワーの上で、2人でランチを取り、と言うか1人分で。また、下に降りた。


そのまま、トロントまでまた列車に揺られて、これから日本に帰る。

トロントの飛行場には、黎人の他に綾人と、研究室の社員三橋がいた。

綾人と三橋はエコノミークラスに、陽織たちはファーストクラスに搭乗する。


鷹人は飛行機に乗ってすぐは、黎人にナイアガラの滝の話をしていた。

「しゅごーい!ばばはーって。」

?

「でね、たっくん、わーってなった。」

「うん。そうなんだ。」

陽織は写真を見せる。

「真っ白だったよねー。」

「よねー。」

「でねー、もぐもぐもぐって、いっぱーい!」

(もぐもぐって、なんだろう?)

興奮して、テイクオフの耳がキーンとなるのも忘れたのか、とにかくずーっと話し続ける。

「でねー、ママがしゅきーって。で、たっくんも、いっぱい、わーいってなった!」

「ママが好きなの?」

鷹人はコクコクうなづく。

「で、怪獣さんが、ゴオーッて出てくるーって!」

話は、飛行機が安定するクルーズまで続き、ドリンクが出される頃になると、往復4時間の列車で疲れたのか、眠ってしまった。


「そうか、今日ナイアガラに行って来たんだ。いいなー、僕も行きたかった。」

黎人は淋しそうに言う。

「えー、だって旅行じゃなくて、視察と出張なんでしょ?」

と陽織が言うと、うっとなる。


そのあと、黎人が何度か陽織をチラチラ見てる、

なんだろう?と思っていたが、よくわからない。

「陽織は、またカナダ、来たい?」

「うん。やっぱりまた、来たい。」

窓の外を見る陽織が、泣きそうな顔に見えた。


マギーの家に入るとき、

「ただいま!」

と言って、入った姿が忘れられなかった。

エリサの横で、スケートを教えている陽織の姿も。

「ズルした。」

と言いながら、楽しそうに滑っていた陽織。


もし、陽織が花嫁ではなかったら。

もしも陽織が、普通の何の力もない女の子だったら。

きっと今頃は、カナダで、好きなだけ、スケートを滑っていたのだろうか?



























評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。