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陽織、家族旅行(就職編)

年明け早々に鷹人と二人パスポートをとった。

陽織は高校の修学旅行ぶりで本当に久しぶり。しかも姓が違う。

なんか嬉しい。


飛行機のチケットは黎人にお願いしてあるし、現地でのホテルもすでにとってある。

モントリオールまで12時間。

鷹人が飽きないかが心配だが、黎人はそれを考えてファーストクラスの半個室タイプをとった。

それでもずっと空の上というのは。さすがに陽織でも初めて行ったのは小学生の時だ。

3月に入ってしまうと年度末決算で難しいということで、2月末の6日間土日と祝日を入れて、渡航となった。


羽田につくと、はじめのうちは、鷹人も飛行機をたくさん見て楽しんでいる。

搭乗した後も、初めて見るものばかりの飛行機の中をきょろきょろとして、楽しそうだった。

しかし問題は、いよいよ飛行機がテイクオフするときだった。

あまりの音と圧力に、耳が痛くなったらしく、泣き出す。

黎人は、搭乗のときにもらった、飛行機のおもちゃをもって、鷹人に話しかけている。

陽織はわりと、この時の浮遊感が好きなのだが。

「鷹人、怪獣さんがくるお空に行くんだぞ!」

と、黎人が言ったら、怪獣に会えると思ったらしく、自分が持ってきた特撮ドラマの飛行機と怪獣、もらった飛行機で遊び始めた。


飛行機がクルーズに入ると、ドリンクサービスやお菓子のサービスが始まった。

スクリーンをつけると、鷹人の好きな怪獣映画を見ることもできる。

国内ならこういったものを見ていれば、あっという間につくのだが、さすがに海外となると、到着まで半日はかかる。

その間、寝てくれるといいな、と願いながら陽織は、持ってきた本を取り出した。

鷹人が怪獣映画に夢中になっている間、黎人もパソコンを開けて仕事を始めた。


今回の出張は綾人や他の人もいるのだが、黎人だけ飛行機の便を変えて、一日早くカナダに着くようにした。ホテルは同じだが、部屋も完全に違う。


少しすると、食事の時間になるが、陽織に機内食は重い。

陽織は和食、黎人は洋食と内容を分けたので、少しは黎人が陽織のほうを食べてくれるだろう。

さすが大手航空会社のファーストクラスとあって、食事はきちんとしたメニューだ。

鷹人にはお子様用のコースが提供される。が、足りない分は陽織のほうを食べてもらう。

何せ、和食の機内食のメインは魚だったからだ。


「陽織、ちゃんと好き嫌いしないで食べる宣言したよね。」

と黎人に笑われたので、半身くらいは食べた。

「機内食って、時間が不規則に出るのが、嫌なんだよね。」

と陽織はちょっと膨れている。

「最後のほうになると、断っちゃうこともあるもん。無理!」


そんな陽織の食事を見ながら、

「たっくん、これほしい。」

と小鉢の一つを指さすので、どうぞとあげた。

吸い物にはいっていた海老しんじょうも喜んで食べている。

結果、吸い物の中身が汁だけになったのを見て、黎人が笑った。


新幹線と違い、ごはんが食べられる、というのは食いしん坊の鷹人にはとても気に入る要素になったようだ。しかも、怪獣映画が見放題!

とはいうものの、映画の内容がわかるわけではないので、人間ドラマの部分になると飽きるのか、黎人に話しかけている。

一度、書類の確認をしていた黎人の邪魔をして、怒られていた。

ちょっとかわいそうだ。

「黎人さん、たっくんには旅行なんだから、飛行機の中まで仕事しているワーホリを押し付けるのは、かわいそうだよ。」


夜タイムになり、機内が暗くなっても、慣れない鷹人は眠くないのか、窓の外を見て不思議そうな顔をしている。そして

「怪獣、来ない!」

と怒る。

   うん、怪獣が来るなんて嘘をついた黎人さんが悪い!

「たっくんもおトイレ行って、ねんねしようか。」

と言ったが、お風呂も入らず、着替えずに寝るというのが理解できないようだ。

仕方ないのでトイレから帰った後、夜用の紙おむつにして、抱っこして毛布を掛けてあげた。

そこに黎人が鷹人お気に入りの絵本を読んでくれた。


とはいっても、飛行機の夜タイムも不規則だ。寝たと思ったら急に電気がついて、また朝食が提供される。

これが陽織は苦手だった。

「動かないとお腹パンパンになるよね。」

そういって、時々鷹人を連れて、機内を歩いてみた。

でも、そんなさ時間を過ごす間も、家族3人で過ごすのは、やっぱり楽しい。


普段は仕事や大学に追われて、ずっと鷹人と過ごす時間が減っていたな、と、感じる。

鷹人もそれは嬉しいのか、時々ぐずるがそれは甘えたいということも、含まれていたようだ。


機内で一番気になったのは、鷹人がぷぷしたい!と言い出して、黎人が慌ててトイレに連れて行った時のこと。

トイレから戻る間、鷹人を抱っこする黎人に、外国人女性が何人も声を掛けていたことだ。

さすが外人女性、子持ちの男性にも積極的に声をかける!


なかなか帰ってこない、と思ったら、そういう一幕があったということだった。

わかったのは、鷹人の一言。

「パパ、きえーなおねーさん、チュッ、してたー。」

え?

「黎人さん?」

「違う!違う?投げキッスされただけ!声をかけられた、だけだから!」

「ふーん。」

陽織は小がらなので、外人から見たら中学生くらいに見えるから、そういうことはない。

ないが!


12時間の飛行もアプローチに入りようやくタッチダウンだ。ここでも、鷹人はびっくりして、黎人にしがみついていた。


カナダだ。

モントリオールだ。

ケベックに、帰ってきた!









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