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陽織、階段の悪夢(就職編)

陽織は朝起きて、下着姿であることに驚いた。

が、たまにあるので、良しとしよう。

(おでこ、痛い!)

と触ったら、コブができてる!

しかも、脱ぎ捨てられた昨日の服に血がついていた。

   なに?


とりあえず、下に降りて朝食の支度をしようとして、昨日の夕飯のつもりで作ってあった煮物に全く手がつけられていないことを知る。

記憶を辿るが、カナダと通話したこと、バーベキュー、チョコレートのお菓子?

そこから、よく覚えていない。


ご飯は炊いてあった。

たぶん、黎人がやってくれたのだろう。

とりあえず、煮物は今日の朝ごはんと、お弁当にも入れよう、と、味噌汁、卵焼き、青菜の胡麻和えを作り始める。


今日はレイリーに言って、年度末の準備をする。

中間の時頑張ったので、なんとなくわかった。

美織に手伝ってもらってはいけないことが!


先にお弁当を盛り付けて、しっかり冷ます。

傷まないように。

黎人と陽織の分を作る。

レイリーの給食を食べても良いが、払っていないのに、食べるわけにはいかない!

ただでさえ、報酬をもらっていると、知った以上は。

(頑張って、お仕事しなければ!)

そのあと、さっとシャワーを浴びた。

シャンプーの時、おでこがしみる!


濡れた髪をまとめたまま、陽織がテーブルに朝食を並べていると、

「おはよう。」

と、黎人と鷹人が一緒に起きてきた。

「ママ、痛い痛い、大丈夫?」

と聞かれた!鷹人も知っているのに、自分で覚えてないなんて!

「まだコブ、残ってるね。」

黎人が陽織のおでこを見て、苦笑している。


ご飯を食べながら、

「あの、わたし昨夜なにがあったのでしょう?」

と聞くと、黎人が笑い出す。

「うん、いつも通りの陽織で、安心した。」

   ん?コブがあるのに安心なの!

「ほんと、久しぶりだよね。寝たら起きないの。」

と言いながら、くっくっと笑ってる。


「あの?たしかソファーで寝てたような?」

と聞くと

「ママ、階段、寝てた!」

と、鷹人に言われた。

   階段?

「階段上がってる最中に寝ちゃったのかな?」

黎人も、よくわからないらしい。

「なんか、すごい音したよねー。」

「よねー。」

と、2人で顔を見合わせている。

「見に行ったら、血まみれで、階段の途中で、陽織が寝てた。」

   えーっ!?

「そんな、惨状、起きないわけが!」

と言いかけて、やめる。

   うっ。

お風呂で寝て、美咲に迷惑をかけたことを思い出す。

その頃は、真面目に一度寝たら起きない、どんな惨状でも起きない、と友人はもちろん、親たちにも心配かけていた。

自転車通学していた時も、漕ぎながら寝ちゃって、そのまま倒れて、近くの通行人に学校に通報された。あちこち傷だらけな上に、制服も破けて、自転車も壊れているのに、陽織はまったく起きなかった。

危うく、救急車を呼ばれるところだったらしい。


「とりあえず、わかりました。他の人にご迷惑をかけてなければ、良いです。」

と、陽織は俯いた。が、

「みぃちゃんが来た!」

と、鷹人が言う。

「え?」

「あー、なんか用事があって母上がちょうど来たんだよね。陽織がいないって言うから、もう寝てるって言って、階段の話をしたら、びっくりしてた。上に確認しに行ったよ?呆れて降りてきたけど。」

(なんでそこで階段のことまで言うかなー。)

「あ、階段のことを先に言ったのは、鷹人だからね。」

(う、たっくんなら、仕方ないかー。)

「ん?先に?」

「ママ、痛い痛い、階段、ばばば!ねんねって、たっくんいったー。」

「どうして、そこで誤魔化してくれないの?」

もう、恥ずかしい!

と、黎人を睨んだ。


そのまま、一緒に黎人の車でレイリーに行く。

車に乗る時美咲がちょうど、蓮也の見送りに出たところだった。

「陽織ちゃん、大丈夫なの?まだコブがあるわよ?」

と、笑いを堪えている。


レイリーで鷹人と車を降りると、他の保護者の人に会う。おはようと、挨拶をすると、決まっておでこを見られる。

先生や他の職員の人にも

「痛そう。」

と、言われて、本当に恥ずかしい。

しかも鷹人が、今朝と同じことを、話している!

やめて!


2階の事務所で、帳簿と領収書のにらめっこをする。

自分の確定申告は済ませた。

(あ、だからわたし、確定申告必要だったんだ!)

初めて知った。

報酬のことなんて、全く知らなかった。

   通帳持ってないもん!

   父様から取り返さなくちゃ!






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