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陽織、お正月に足を挫く(就職編)

お正月2日。

今年の十神家の新年会は荒れた。

天神に変わる新しい家を選ばなくてはならない。

それが重鎮たちの意見だった。


上座にいる黎人は呆れ顔で隣の大神を見る。

そろそろ、若手に全部譲れば良いのに。

それが黎人と大神の総意だ。

いつもは正座している黎人が、足を崩して顎を片手に乗せて珍しく胡座になっている。

それくらい、長引いている。


陽織は鷹人が飽きたので、とっくに子ども部屋の方へ行った。

そちらには大地や将人がいる。

始まってから3時間。

どこの家が入るか。9家でいいのではないか。

意見が割れに割れて、全くまとまらない。

黎人や大神の意見を聞くような態度もない。


蓮也や高樹、神岡や神城の当主の意見も、聞く耳を持たない、いわゆる老害たち。

ホテルは神代家が贔屓にしている、いつものホテルなので、ほぼ1日貸切にはなっている。

すでに料理はない。

酒だけが入ってる、70代、80代が未だに当主の座に着く家は少なくない。

実際に、神代家の当主も黎人ではなく蓮也だ。

神月も同じ。神口や神明に至っては、未だに祖父たちが務めている。

その老害たちが、いつになっても、意見を纏めず、黎人たちの意見も聞かず、ただ時間を費やしていた。


「陽織ー、まだ終わらないの?」

いつもなら1時間前にはお開きになっているだけに、大広間の隣にいる、大学生、若手組も飽きている。と言うか、中学生、高校生など受験生などは帰りたい。

大学生だってバイトに行きたい人や、勉強したい人もいる。

「帰っちゃだめなのかなー。」

飽きてぐずる子ども部屋の幼児たちに至っては、限界を超えている。

小さい子がいる母親たちもぐったりだ。

「陽織様、様子を見てきましょうか?」

綾人が声を掛けてきた。

陵介が広間にいるので、神柴家も帰るに帰れないらしい。


先ほどから子ども部屋にいる陽織に、色々な人が聞いてくるが、陽織も部屋を出てから1時間以上、全く中の様子がわからない。

だいたい、陽織はこの中では新参者だ。

むしろ兄たちや美織たちよりも、詳しくない。


「え、と。それでは綾人さん、お願いできますか?」


やっと綾人からの一言で、陽織も次の手を打つことが、できる、かもしれない。

あくまでも、かも、だ。

広間以外は、すでに若手も高校生も、子どもも、別れることなく、ごちゃ混ぜで、話したりお菓子を食べたり、遊んでいる。


一応、中高生部屋には大学生や若手たちが、勉強を見て欲しい人と、見てあげる人が集まって、静かに勉強している。

和嶺や湊人、宏輝たちは、ここで勉強を教えて時間を潰している。


はじめは陽織も、美織や羽織、千織とおしゃべりしながら鷹人を遊ばせていた。

しかし、ほとんどの女性は慣れない着物で和室のため、徐々に足を崩して限界の顔を見せている。

振袖の羽織や幸穂たちは完全に足を投げ出していた。

最初は後輩の幸穂たちに

「きちんと座りなさい。」

と注意していた千織も、足を横に出していた。

絵梨花や梓沙でさえ、子どものことにかこつけて、立ったり座ったりしていた。

正座をしているのは、すでに美織と陽織だけだ。

陽織は痺れすぎて、動けないだけだが。


「こういう時でも、お母様はきちんとしているのかしら?」

陽織は美咲が足を崩す姿が想像できない。

陽香は?たぶん、絵梨花や梓沙と同じだろう。


すると、綾人が陵介、蓮也、高樹を連れて子ども部屋、と言うか、すでにごちゃ混ぜ部屋にやってきた。

「なんだこれは?」

「なんか、すごい惨状だなー。」

「綾人!どう言うことだ!」

はじめは部屋の中のひどい様子に、高樹は陽織を見つけて、怒り始めた。しかし、陽織を立たせようとしたら、そのまま痺れて転んで、足を挫いてしまった。 


陽織は足が痛くて立てない。

「もう!父様たちが悪いんじゃない!いつまで経っても、こんなところに子どもたちを閉じ込めておくから!子どもだって忙しいんだからね!」

と、陽織が座り込んだまま、逆に怒った。

とにかく足が痛い!

立てない!歩けない!

「痛いー!足、痛い!」

今まで、どんなにハードな練習でも、足を挫くなんてなかったのに!

でも、正座して足が痺れた人が、骨折した話をきいたことがある!

骨、折れたかも?


それを見た綾人が、もう一度広間にもどり、黎人を連れてきた。


「えー、足挫いちゃったの?」

「だって、父様が無理矢理立たせようとするから!陽織、足痺れて動けなかったのに!」

「うわっ、本当だ!腫れてる。」

陽織が半泣きで、怒っている。

高樹が慌てて足を見る。

「骨は大丈夫そうだな。」

そう言って高嶺を呼び、カバンを持って来させて、陽織の足をシップとテーピングで固定した。


流石に、黎人もキレていたのか、陽織を抱き上げると広間に戻る。


足をテーピングされた陽織を抱いた黎人が広間に入ると、散々言い争っていた重鎮たちが、シンとなる。

「もう、今日は解散にしましょう!各自、春の会合までに、きちんと意見を纏めて下さい。纏められない方は、すでに判断力低下、認知機能低下、ということで、当主の交替を命じます!」

黎人が、言い放った。

はっきり言うと、あなた方は、このままなら認知症と判断しますよ!と、言うことだ。

わかりやすい。













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