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陽織、魔女になる(子育て編)

前日から、ほとんど飲まず食わす、きちんと寝ていない陽織は、黎人に抱えられてとりあえず帰宅した。

鷹人は、陽織が帰って来たことが、本当に嬉しかったらしく、食事の時も、お風呂も、ずっと一緒にいる。


それは黎人も同じ気持ちだったので、鷹人が眠ると、抱き上げて部屋に連れて行った。

と言って何かをするわけでもなく、疲れた陽織をいたわるように、ただ抱きしめてくれた。

それだけで、陽織はすごく幸せだった。

「何も聞かないの?」

と言う黎人に

「何を?」

と陽織は聞き返す。

「いつもなら、囮、なんて言われたら怒るのに。」

「んー、今回は色々考えてるんだろうな、ってわかってたから。それにちゃんと言ってくれたし、黎人さんのこと、信じてるから。」

陽織はそう言って、黎人の胸にクリクリする、

「ずっと、わたしは黎人さんのこと、愛してるし信じてるよ?」

と言われてちょっと嬉しい。が、

「いつから?」

と聞くと、

「え、と、その、初めて会ったときから?」

と答えたので、

「ん?陽織、最初の頃、花嫁辞退したいって、言ってたよね?」

と、ちょっと意地悪をしてみた。

「だから、その、初めて、え、と。」

「初めて?」

黎人はわざと意地悪をしてみたくなった。

「だから、その、黎人さんに、ここで、ギュッて、されてから!」

と陽織は答えると、後ろを向いてしまった。

   やっぱり可愛い。

そんな陽織に何回も口付けをして、ギュッと抱きしめた。


翌朝、思った通り、鷹人が泣きながら部屋に入って来た。この後、陽織と2人で天神のパーティーに行くと知ったら、また大泣きしそうだ。

どうする?と聞いたが

「やっぱり、たっくんは連れて行きたくない。」

と、陽織は答えて、鷹人をベッドの上に登らせると、2人で鷹人をギュッと抱きしめた。


岡元は、神次は、天神は、こう言った幸せを感じたことがなかったのだろうか。


朝食を済ませてしばらくすると、綾人と絵梨花、将人がやって来た。

これから、神柴父は、蓮也と一緒にパーティーに参加する。万が一のことを考えて、より結界が強固な神代の屋敷で美咲と一緒に待ってもらう。

将人がいれば、鷹人も少しは気がまぎれるだろう。


千織の元には湊人を祈梨のところには悠人が行っている。昨日のうちに、全ての神家に、結界の強固をお願いした。

神次は結界が万全なところに異界を繋ぐことはできない。それは、今回の大学の綻びで明確になった。

どうして、陽織が大学の理系キャンパスでばかり狙われていたのか。屋敷の中にいる時も、レイリーにいる時も狙われないのに。

おそらく、昨年の誘拐事件で、神次は気づいていたんだ。

五号館の貼り直しをした時に、気づくべきだった。


今日は剛樹のお披露目だから、お昼のパーティーになる。美咲はまた、陽織のドレスを新しく仕立て直していた。陽織は遠い目をしていたが。

今回のドレスは、鷹人の誕生石に合わせたサファイアブルー。アクセサリーも、それに合わせたサファイアとダイヤを散りばめた細身のチョーカーとイヤリング、ブレスレットをそろえた。

前回、陽織にはイヤリングにカメラが仕込んであったことは打ち明けたが、指輪に盗聴器が仕込んだままなのは、言い忘れた。

   まあ、いいか。


ということで、左手は相変わらずアクアマリンの指輪と結婚指輪、右手にブレスレットと揃いのサファイアの指輪と、髪にもバレッタをする。

「全身、サファイアだらけで、気持ち悪い。」

と陽織が言ったら、美咲に睨まれた。

確かに、サファイアよりもルビーの方が似合いそう。

うん、ゴージャスで、これなら岡元も天神も十分に煽れる。

「んー、僕の誕生石のエメラルドは一回やっちゃったからなー。アクアマリンはゴージャスとはいえないし。次は7月生まれの子を作ろう!」

   なんのために?


全身ブルーの陽織は、いつもよりもかなり大人っぽい。仕度ができた後鷹人たちに見せたら、絵梨花は目をキラキラさせて、鷹人は口をあんぐり開けていた。

「マンマー。ママー!こあいー。」

と言って泣かれて、ショックを受けていた。

「怖いの?」

「マジョーマジョー!」

と言ったので、魔法使いのように見えたのかもしれない。

「可愛い魔女さんだろ?」

と言ったが、可愛く見えなかったらしい。

やりすぎたかな。


車に乗り込んで

「せっかくなら、陽織には魔女になってもらおう!」

と黎人が笑いながら言い出した。

「魔女?」

「うん。陽織は真面目に飛べるし、消えるし、色々できるからね!」

「それ、わたしで遊んでない?用もないのに、ハクの力使っちゃダメって言うくせに。」

陽織が膨れる。

「今回はプランCだから、用はできるかも。あとは、梓沙さん次第かな。」

「梓沙さん、本当にいいのかなー。」

陽織は顔を暗くする。

「高嶺さんがついているんだ。大丈夫だよ。それに光里さんも。」

「光里さん?」

陽織が知らない名前だ。

「うん、吉原光里さん。大和さんの妹さん。」

陽織は、吉原と聞いて複雑な気分になる。

黎人は天神を追い詰めるために、大和の甥で吉原の息子、吉原一也と組んだ。さほど仲がいいわけではないが、中学からの先輩ではあるらしい。


そう言う駆け引きが苦手な陽織を知っている黎人は、いつも「陽織は知らなくて良い。」と言う。美咲はきっと、こう言うのも上手だから、ああいう場所に君臨してるのに。

(わたし、やっぱりお荷物だなー。)













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