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陽織、大型結界を貼る(子育て編)

食事が終わると、それぞれが帰宅する。

陽織たちは見送りをし、家に戻ろうとすると、美咲からまたバゲットを焼いてほしいと言われた。

奥様方に配るらしい。


そして、部屋に戻ると、黎人から白の正装を出すからという話をされた。

陽織は何をするのかよくわからなかったが、とりあえず用意をする。

途中で着替えるということなので、全部を着物用のバッグに入れた。


「明日のことを考えたら、陽織がメインディッシュを作ってくれて、助かったよ。」

と言われたので、おそらく明日、何かあるのだろう、ということだけはわかった。


翌朝、神代家は美咲を残して全員が天神家がある上野方面へ向かう。

美咲の代わりに神明神社の宮司、黎人たちの叔父和人がくるということらしい。

天神家の屋敷の隣にある高嶺の家の前に車を止めると目立つ、ということで各自、近くのコインパークに車を止める。

高樹や和嶺、神嶋、神鬼、そして綾人は父親で会長秘書の神柴綾介と現れた。

そこに高嶺たち親子が玄関を開けて、中に招き入れる。


それぞれが着替えると、決められた位置に立つ。

とにかく、神次はもちろん、天神大和に知られないうちに済ませたい。

大和は昨日から、放送業界の会合で出かけている。

帰宅は午後遅くになるというが、安心はできない。

今回は6人ずつで、神月総合病院になる建物と、高嶺の家の両方に結界を張る、ということだった。


陽織は家の中で、梓沙と終わるのを待ち、最後に綻びがないかを確認する。


15分後、一つ目の結界が貼られた。

さらに30分後、二つ目の結界が貼られる気配がした。

そして、もうすぐ一時間、という時、家全体に澄んだ空気が流れ、三つ目の結界が貼られたことがわかった。

陽織は、そっと玄関を出ると、2つの建物全体を見回す。病院の方は、さすがに総合病院とあり、そこそこ大きい。

   うん、大丈夫!

   さすが!

と、笑顔で報告しようと振り返った。

「どう?」

と聞かれて、

「大丈夫、」

と答えた時、見てはいけないものが目に入ってしまい、ブワッと吹き出す。

紋付袴姿の湊人!


あは、あっははは、やだ、あはは。

陽織が笑い出した。

   ?

12人が陽織を見ている。

「え?どうしたの?」

黎人に聞かれるが答えられない。

「なんだよ。」

と、湊人に聞かれてやっと

「みな、湊人、あっち、行って。笑、止まらな。」

「はあ?おれ?」

   !?

「湊、湊人、七五、七五三、みた、あはははは!」

と、お腹を抱えて笑っている。

「はあー?お前、マジ、失礼なヤツだなー!」

「だ、だっ、て、へん、なんだも、ん!あはは」

とひたすら笑う。

「陽織、とりあえず大丈夫なら中に入ろう。」

高嶺に言われて、みんなゾロゾロと、家の中に入る。

「やだ、湊人、近づか、ない、あははは。」

笑いすぎて、お腹が痛い。

「わたしはこれで。」

神嶋が言うと、神鬼も、同じように帰る。

神柴親子も、失礼します。

と帰って行き、親族だけになった。


「うん、確かに湊人くん。七五三の写真を大きくしたようだねー。」

と、叔父の和人にまで言われた、湊人は膨れた。


一応、全員が着替え終えると、解散ということになる。一度に帰ると目立つので、初めに悠人と湊人、蓮也が。そして黎人と陽織が帰る時、陽織は高嶺たち家族に、別な形のお守りを持たせたかった。

そこで、白桃を出すと、高嶺、梓の、2人の子どもに違う結界をかかる。

家の外でも、危険から避けられるように。


その翌日、陽織は大学で想像もしなかった人物に遭遇した。岡元修也、いや神次修也だった。

1日の講義を終えて、いつものようにキャンパスの正門玄関に向かう。

隣には羽織がいる。

後ろには真凛と菖蒲。

もちろん、黎人のお守りも持っていた。


そんな陽織の目の前に、修也は何食わぬ顔で現れた。

陽織はどういう顔で彼をやり過ごすのが正解かわからない。

素知らぬ顔?それとも驚いて?

迷ったまま、素知らぬふりで横を通り過ぎようとして、いきなり腕を掴まれた。

その途端、修也はビクッとする。

たぶん、黎人のスタンガン並みの電流が流れたのだろう。


それでも、一瞬腕を離したが、陽織の前に立ちはだかる。

「これはこれは、お初にお目にかかります。私、神次修也と申します。」

まるで芝居がかった口調に、陽織は顔を顰めて、また、彼を無視して横を通り過ぎようとした。


神代陽織は、男嫌い。

見知らぬ男性には恐怖する。

それは、多くの人が知ること。

だから、間違った行動ではない。


ところが、再度陽織の腕を掴もうとして、今度は真凛が修也の腕を掴んだ。

「陽織様に、触れないで下さい。」

真凛はキッと睨みつけ、すぐに目を逸らす。

しかし、その時、修也は咄嗟に羽織の腕を掴み上げようとした。羽織はそこをすかさず、合気道の技でかわす。

真凛、羽織、菖蒲に囲まれて、武が悪いと思ったのか、そのまま修也は、まるで異界の中に引きずられるように、陽織たちの前から姿を消した。

修也は人を操ることができる。

結菜の話では、ある言葉に答えると、言われた。

だから、絶対に会話をしてはいけない。

なんとかそれをかわしたものの、修也が消えた方法が3人はわからなかった。

唯一見てしまった陽織は、その場に立ちすくんだ。

「気持ち、悪い。」


黎人が帰宅すると、鷹人が1人ご飯を食べて、陽織はただ隣に座って泣いていた。理由はすでに、真凛たちからの報告で知っていた。

神次修也に会った。

腕を掴まれた。

「陽織、怖かったね。」

優しく陽織を抱きしめると、陽織はギュッと抱きついてきた。鷹人は、そんな様子にびっくりする。

「いや、気持ち、悪い、あの人!わたしと一緒に、いたの。」

「え?」

「あの人が消えた、異界の中、わたしがいたの!」

黎人は2階で着替える間、鷹人に

「ママに良い子してあげて。」

と言って上がっていった。

鷹人は、陽織の頭を

「良い子、良い子。」

と撫でてくれる。

陽織は

「ありがとう。」

と言って、鷹人をギュッとする。

そのうち、黎人が着替えて降りてきて、夕飯を食べ始めた。

「陽織は?」

と聞くが、首を横に振る。

「鷹人、ママにアーンして、ってこれ食べさせて。」

黎人はそういうと、陽織の前に買ってきたチーズケーキを置いた。


陽織は、自分が食べたくなくても、多少忙しくても、美咲から言ってもらわない限りは自分でちゃんと食事を作る。

今日も、自分は食べていないのに、ちゃんとおかずに味噌汁と、黎人の分と鷹人の分は作ってあった。


「たっくんも!」

と言うので、黎人は2人分を置く。

今日はレアチーズにした。

これなら鷹人も食べられる。

鷹人は、自分のスプーンで、食べながら、もう一つのスプーンに乗せて、陽織の口に運ぶ。

さすがに子どもにまで心配されては、と、陽織もなんとか半分くらい食べた。


そして、気づくと残りは鷹人が食べていた。

デブになるそ!


鷹人とお風呂に入って、部屋に連れて行って寝かせる。その間に陽織は後片付けをして、自分もお風呂に入る。

陽織がベッドに入ると、黎人から、

先ほどの話を詳しく聞きたいと言われた。


突然、陽織の前に現れたこと。

知らないふりをして通り過ぎよとしたこと。

腕を掴まれたけど、すぐにびっくりしたように手を離したこと。

また手を出されたけど、真凛が庇ってくれたこと。

羽織が掴まれそうになって、逆に返り討ちにあったこと。

菖蒲と3人に囲まれて、逃げたこと。

みんなの前から、急に消えたこと。

その時、一瞬異界が開いて、その中に陽織そっくりの顔があり、修也はその誰かの肩を抱いて、異界に入って消えたこと


それを聞いた黎人が、顔色を変えた。

狙いは梓沙ではなく、陽織だった。

最初から、あの誘拐のときから。

狙っていたのは亮一ではなく、修也自身だったとしたら、納得できる。

「明日から、大学休んで、って言っても、無理だよね。」

陽織は一瞬迷って、無理と言った。

「それなら、明日からしばらく僕が送迎をする。」

「仕事で遅くなる時は、陽織をハクで僕のところに呼ぶ。。


「異界から、他の場所って移動できるの?」

「うん。ほら前に4人が銀座の地下鉄入り口でいなくなった時、みんなバラバラで見つかったよね。日比谷公園とか、新橋駅とか。」

あー、と陽織は思い出す。

「ただ、あれは引き摺り込んだ子どもにとって、思い入れのある場所だった。」

そこで、黎人は考える。

「もしかしたら、その異界は神次の思い入れがある場所に繋がっているのかも。」












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