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陽織、霊と近づく

羽織と千織、陽織は初めてクラスメイトと休日のお出かけを楽しんでいた。

お腹いっぱいになった、帰りの地下鉄に乗った時、急に目の前がグニャリと歪む。

「どうして陽織さんが?」

「なんで陽織さんが?」

黎人と悠人が、ほぼ同時に叫んだ。

GW明け、1人の女子高生が地下鉄の前に飛び降りて亡くなった。入ったばかりの高校に馴染めなかったことが原因の自死と警察は判断した。

しかし、その翌週あたりから、女子高生が地下鉄のホームドアに挟まれて落ちそうになったり、電車の中で急に倒れた子も何人かいた。はじめは集団ヒステリーや、そういう事件があったことを気にする子が倒れたのでは?という見方だった。

しかし、倒れた子たちの中にはこの事件を知らなかった子もいた。そして共通点は女子高生。


最近地下鉄の駅はホームの内側にホームドアがあるので、簡単に落ちることはない。この路線も同じだ。全ての駅にホームドアがついている。

ホームドアを乗り越えていなければ、絶対に有り得ない事故。そして、女子高生は周囲の人が驚くまもなく、ホームドアを乗り換えて、飛び込んだのだという証言のもと、自死となった。

それほどまでに、命を断とうとして飛び込んだ子の魂だ。この世に怨恨を残しても不思議ではない。


そこから、やっと神嶋のところに話が来て、数日前から、黎人と悠人が捜査を始めていた。

「うーっ、女子高生!なんでピンポイントに条件の合う場所にいたんだ。わざと、餌にならないように頑張っていたのにー!」

黎人は頭を抱えたくなった。

「仕方ない、こちらに連れてこよう。」

そう言って悠人が歩き出したが、何かに阻まれるようにたどり着けない。

「嫌な感じだな。」


3人は電車の中が急に薄暗くなったような気がした。そのうち、どこからか、甲高い笑い声が聞こえる。

「恥ずかしい!あんたと同じ高校だなんて、思ってなかった!」

キツイ感じの声のあと、誰かの泣き声がした。

「嫌だ嫌だ、まさか高校まで一緒だなんて!」

2人の女の子のようなシルエットが、1人の子の前に立ちはだかって叫んでいる。

1人の子はうずくまってお腹を抑えている。

「中学ん時はトイレとかに閉じ込めたけど、わたしたち高校生になったら、そんな汚いことやりたくないんだよねー。」


陽織と羽織、千織はその様子を見ていられなくなって、身体を硬くして寄り添う。

「アレって、現実っ、じゃ、ない、よ、ね?」

千織が小さい声で囁く。

「この中の人の、記憶、かな?」

羽織が答えた。

1人の子は、いわゆるイジメにあっている。その後も、イジメの光景が続き、千織と羽織はその場に目と耳を塞いでうずくまってしまった。


陽織は、というとここまで酷いものは見たことはないが、違う形でのイジメは経験したことがある。学校にほとんど行かない陽織の机の上に、花が飾ってあったり、無視や仲間外れは日常茶飯事だった。ただ、陽織か大切にしていたのが、学校という世界ではなかったので、気にしなかった。

その光景をぼんやり眺めながら

(イジメを苦にして、って本当にあるんだ。)

と、陽織は漠然と思っていた。

しかし周囲は一気に暗転する。


電車が走る音。鳴らす警笛。誰かが叫ぶ声。

もうイヤ、イヤ、イヤ!と誰かが叫んでいる。ぐしゃっという音。そして、急に視界が赤く染まった。

血の、色?

「ぎゃーっ!」

と羽織が叫ぶ。

千織も羽織にしがみついた。

先日のことを思い出すと、湊人たちがあまりにも冷静に思えてくる。美織も意外と冷静だった。

あの時一番パニクっていたのは陽織だったことを思い出したら、急に冷静になれた。

(イヤイヤ、こんなことに冷静になれても仕方ないのだが。)

よく見ると、女の子が一人、うずくまっている。先ほどいじめられていた子だ。

陽織は羽織の手を離して、ゆっくりとその子に近づいて行く。


ガラスの板のようなモノに阻まれた黎人と悠人は、女の子に近づく陽織の姿を捉えた。

「ダメだ!」

黎人は必死にガラスのようなモノを叩き、叫ぶが陽織には聞こえていない。

その後も、炎や水、氷と、あらゆる攻撃を仕掛けるが、びくともしない。

「クッソ!」

「声も音も遮断されてる、ということは、霊の結界のようなモノか?」

この場では、黎人よりも冷静に考えられると思った悠人は、少し落ち着いて考えることにした。


今回の依頼はさほど難しくないと思っていた。ある程度状況を把握している。霊に出会えれば、あとは話を聞いて、説得して、なら

「黎人、陽織さんに任せてみないか?」




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