陽織、経理嫌い!(子育て編)
一通り話の区切りがつく。その頃になると、キッチンから美味しそうな匂いが漂って来た。
「そういえば、陽織は?」
高嶺が聞くと
「鷹人が一緒にいるから、たぶん大丈夫。」
と黎人が答えた。
??
「鷹人?」
「逆じゃなく?」
「鷹人、強いよ。」
黎人はニコニコしている。
4人は信じられないという顔をしたが、和嶺がそういえば、と神嶋の言葉を思い出した。
最年少で、霊を祓ったと。
「もう、朝なんて早起きで、しょっちゅう部屋に入ってくる。」
?
「入るって、寝室?」
「そう。」
「鍵は?」
「かけてるよ。ドアも届かないはずなのに、開けてる。」
「結界は?」
「はじめ、僕のだけ。すぐに破られて、二重にしたのも、破られた。無意識だから、怖い。」
ハハハと、黎人が笑う。
「え?黎人さんの結界破っちゃうの?」
和嶺が驚く。
「陽織のも?」
湊人も。
うん、と黎人はうなづく。
「なんか、嫌だよね。子どもに色々見られたら。」
同じ妻帯者の高嶺が、同情してきた。
「ほんと、毎回やばいところ見られて。一度は、マジでやばかった!」
という黎人に、悠人が睨みつけた。
「だから、朝はやるな!って言ったじゃない。」
う。と、黎人は言葉が返せない。
あ、そういうやばいとこ。
それを聞いていた蓮也が、
「黎人、お前、全く反省してないのか?」
と、怖い声で聞いて来た。やばい!
咄嗟に
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」
と、黎人が謝っている。
「前の反省は口だけか?高樹にも、怒られたよな。土下座じゃ済まないぞ!」
高嶺と和嶺は顔を見合わせる。
うちの父にも怒られたの?
悠人と湊人は、あまりの不甲斐なさに呆れる。
土下座って。
「やっぱり、あのとき殴ってもらった方が。」
とまで、言われてる。
一体、なにをやったんだ?
そしてお昼。
陽織と鷹人もやって来て、一緒にお昼を取る。
「鷹人くん、強いんだってね。」
と、高嶺が話しかけると、
「ん、つおい!」
と答えた。
本人は意味がわかってるのか。
とりあえず、ニコニコしている。
「たっくんは、強いよね。いつもママのこと、守ってくれるものね。」
と、陽織も自慢している。
「そっかー、じゃあ黎兄いなくても、心配ないじゃん!」
と湊人に言われ、黎人はちょっとムッとした。
「湊人、バイトなしにするぞ。」
と黎人が脅すと、蓮也が
「湊人、今年は問題起こすなよ。」
と輪をかけて言ってくる。
「ところで、陽織、レイリーの方は終わった?」
「ん、4月分が終わった。」
「え?」
「ん?4月分全部、チェック終わったよ!すごいでしょ?」
「なんで?」
「何が?」
「なんで、3時間もあって、全部終わってないの?」
「ちゃんと、1ヶ月分終わったよ。午後、5月分見る。明日の午前6月分見たら終わりだよね?」
2人の会話が噛み合わない。
「陽織、半期ってわかる?」
「半期って何?」
「6ヶ月分。」
「だってまだ7月終わってないじゃない!」
黎人がちょっとイライラし始める。
陽織は膨れる。
「ちゃんと、会社の規約読んでる?」
「そんなのわかんない!」
「なんで、ちゃんと読まないの!」
「ちゃんと説明してよ。」
「説明しようとしたら、わかるって言ったよね?」
う。
「だって、説明されても、よく、わからないんだもん。」
それを聞いて黎人はため息をつき、湊人が笑い出し、高嶺が呆れた。
「ねえ、それでよくバイトしたいって言ったよね。」
黎人は厳しい。
う。
「え?陽織、バイトできるの?」
和嶺まで、呆れた。
「だって、湊人だってやってるし。」
「お前、俺をバカにすんな。」
湊人が怒る。
「バイトしたいって言ったら、レイリーの中間報告作れって言われた。わたし経理なんて、わかんないのに。」
陽織が膨れた。
「陽織、医者だって経理的なことわからないと、病院経営が成り立たなくて潰れるんだよ。得意なことだけじゃ、世の中はやっていけないんだ。」
と、高嶺が陽織に話すと、やっと、わかった、と渋々うなづいた。
そんなこんなで、お昼を済ませて、また陽織は鷹人を連れて家に戻り、他は話し合いの続きをする。
「高嶺さん、ありがとうございます。」
黎人がほっとして、礼を言う。自分だったらきっと怒って喧嘩したな、と思っていたので。
「まあ、伊達に18年見てないので。」
「確かに、あのままじゃ、わかんないからやらないって泣き出したよね。」
と、和嶺が隣で笑っている。
「なんだそれ?」
と、湊人が驚くと
「陽織が、わからなくても、頑張ってやるようになったのって、高校生になってからだよ。だから言ったじゃん。湊人たちのおかげだって。」
和嶺が笑いながら、湊人の頭を撫でた。
「ちよ、やめて下さい!」




