陽織、対策会議(子育て編)
神嶋は、そう言った経緯から陽織が狙われていることを説明した。
「納得しました。」
黎人は、改めて疑問に思っていたことが、ここでスッキリと整理できた。
陽織が誘拐されたとき、いくら内部の学生の手引きがあっても、そうそう結界は破れない。それに白桃を持っているはずなのに、なかなか居場所がわからないかった。陽織からの助けての声があるまで、行くこともできなかった。
そして、岡崎の事件。この時明らかになったのが神次の存在だ。
結菜は神次のことはあまり知らなかった。
知っていたのは、岡崎亮一のことで、亮一はいま現在、拘束はされているものの、様々な裁判待ちで、判決はまだ出ていない。
その亮一でさえ、神次の情報が曖昧だった。
本当にバカなやつは使えない!
黎人は苦々しく思っている。
結局、亮一も神次に利用されただけかもしれない。
「天神さんも、ただ利用されただけなら良いのですが。もちろん、タダでは済まされませんが。」
「あの、兄は、高嶺兄様はどうなる、のでしょう?梓沙さんとお子様は!?」
陽織は断絶させられた神次のことが頭を過ぎる。
もし、高嶺がそんなことになったら。
陽織は自分を犠牲にしても、他人を守るところがある。でも、そんなことはさせられない。
7月末。大学の前期試験が終わってすぐの土曜日。
蓮也と黎人は、高嶺と和嶺、悠人、湊人を集めた。
陽織も話を聞きたがったが、自分の家で、美咲と鷹人と一緒に待つように言われた。
「暇なら、レイリーの帳簿と領主書の最終確認でもしていて。」
と言われた。
暇じゃない!
陽織はお茶だけを出した後、退席させられた。
黎人からは、決まったら話す、と言われた。
もう、仲間外れは嫌だ。
挨拶が終わると、高嶺がまず、黎人と話したこと、と、現在の状況を説明する。
「今、自分たちの家、神月総合病院の土地、建物は、僕と梓沙の共同名義になりました。」
その発表に、オーという声が上がった。
「このまま、義父としても吉原に自分の土地、財産を奪われるのは不本意だったのでしょう。これで、天神が持つ、本家屋敷の半分は、今神月のものです。」
高嶺の言葉は和嶺も知らなかったらしく、驚いている。もちろん、黎人以外の全員が。
「それから、神次のことで、僕が知る全てを話します。彼の本名は岡元修也。」
岡元?
「現在は岡元議員の養子となっています。形だけですが。おそらく現在いるのは、この岡元が持つマンションのいずれか、もしくは、義父が持つ別荘のどれかと思われます。」
「それって、どれくらい?俺らも、岡元のマンションは一通り調べました。」
湊人が答える。
「なら、別荘。3箇所あります。伊豆、軽井沢、そして沖縄です。パーティーのことを考えると、沖縄はないかと。」
高嶺はそう言って、住所を書き出す。
「ただ、他にも協力者がいれば、それ以外の可能性もあると思います。」
高嶺はそう言いながら、神次の写真を出した。
映像に映るのは二十代半ばの青年の姿だ。
それは、湊人たちが防犯カメラの映像から割り出したものと、ほぼ一致した。
「僕が知る限り、彼の能力は、他人を操る。他人に護符のようなものを持たせて、能力を貸与する。と言うものです。」
「小林さんは、それで陽織を攻撃したのか。」
「姿を変える、とかは?」
「それは聞いていません。ただ、操ることで、自分を見なかったことにしているのかも。
岡元議員の息子の記憶が曖昧なのは、おそらくそれが原因でしょう。」
「神次は幼い頃に、奇妙なことができる、平気で嘘をつく、気持ち悪いと、精神的な障害を持つ子どもの施設に入れられ、最後は両親から見捨てられたようです。」
そう高嶺が言うと、
「だからと言って、同情するなよ!」
と、蓮也が叱咤した。
その時、悠人が
「修也、修也、修、どこかで?」
と呟き出した。
そして
「あ、え?でも、苗字は違ったような。」
と言う。
「なに?悠人知ってるの?」
と黎人が聞くと
「ほら、以前マルチ商法と殺人で壊滅した宗教団体の跡地を除霊に行ったことあったじゃない。陽織ちゃんが宙を跳んだ。」
と、悠人が話し出す。
「あー、そんなことあったねー。」
と和嶺も懐かしがる。
「宙を跳んだ?」
湊人が驚くが、今大事なのは、そこではない。
「その時、犠牲者の中に泉谷修也っていう男の子がいたんだ。たぶん4、5歳くらい。」
「よく覚えていたねー。」
と黎人が感心する。
「たしか母親が騙されて、子どもも巻き込まれた、っていう何人かの一人。」
「たしか、あの事件って、子どもたちは全員助かったよね。」
「だとしたら、神次の両親というのは、実親ではないな。おそらくあの事件で親がなんらかの犠牲に遭った子どもを養子にした人だろう。それなら、気味の悪い子だと、見捨てるのもうなづける。」
「そうですね。どんなに周囲から色々言われても、自分の子なら、ちゃんと守りますよ。ウチの母もそうでしたから。」
和嶺は陽織のことを思い出して答えた。
「確かに。まあ、あれは陽織さん、というより、高樹に責任があったから。」
蓮也は苦笑いした。
その後も、高嶺、和嶺、湊人、と次々と神次についての意見交換は行われた。




