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陽織、神次家の秘密(子育て編)

「神次家の秘密、ですか?」

もうすぐ、前期試験という6月、陽織と黎人は神嶋に呼び出された。

「今回は依頼じゃありません。神次の情報です。」

そう言われて。


結菜は今、穏やかに実家で静養している。

その話を聞いて、陽織はほっとする。

そして、本題は神次のことだった。


神次は陽織が誘拐された事件にも関わっていた。

それ以上に、おそらく裏で手を引いていたのではないか、ということだ。

さらに、神次と組んでいる、と思われるのが、梓沙の父、天神大和だ。

「そんな、梓沙さんは?兄様、は?」

陽織が驚いて、顔色が悪くなる。黎人は陽織の手をギュッと握り首を横に振る。

「兄様、兄様は、そんなこと、しない。」

それはレ黎人もよく知っている。

高嶺はみんなの憧れで、いつもしっかりしたリーダーだった。


「なぜ神次が滅ぼされたか、なぜ十神家がそれを守らなかったか、という当時の記録が出てきました。」

確か明治になったばかりのことだと聞いている。

「300年前の織子様は、有名ですよね。大神家の神様に嫁いだ、神代家の。そして、その後も神様はお二人誕生しています。たださほど強力ではなかったため、あまり知られていません。」


それは、陽織も神鬼から聞いていた。

「その1人は、狐の神様。神様は神月家の当主の息子高明、そして花嫁は神岡家の美羽様でした。ところが、神岡家からの花嫁、美羽様はお子さまがお一人しか生まれず、亡くなってしまいました。そのお子様は、陽織さんのご先祖様になります。

その後、美羽様が亡くなった後、新たな花嫁が誕生し、神月家の高明氏は彼女を娶りました。新たな花嫁は神城家でした。」

美織ちゃんの家。

「もっと話をさかのぼると、400年前は、神城家と神澤。500年前は神柴と天神、神倉。その前が、神倉と神林、そして神山。三神と神代。神月と神城。神鬼と神嶋、神澤。と、1000年の歴史の中、一度も生まれていないのが、神次でした。」

まさか。

「そう、神次の当時の当主が神城から来た新たな花嫁、神城美緒様を暗殺したのです。」

神様の花嫁は、自死できない。でも、他者は殺すことも可能。ただし条件がいくつかあるが。


それは以前、神鬼から聞いている。

「焦っていたのでしょう。自分が十神家の長となったのに、神様も花嫁も、生まれないことに。当時の十神家はもしかしたら、美羽様が亡くなったのも、神次に呪われたのでは?という話も出たそうです。」


「その後、十神家は神次を追放しました。その後、高明氏は神城の花嫁を連れ、天界に戻ります。子の少なさも、あまり知られていない理由です。

さらに、高明氏の後生まれたのが、神崎家の裕貴氏。彼の花嫁として生まれた、神代家の彩子様は、まだ赤子のうちに、神次に殺されていたのです。」

陽織は黎人の顔を見たが、黎人も知らなかったらしい。

「ちょうど、明治に入り世の中も、ゴタゴタしていた頃。赤子が亡くなるのは、珍しいことではありません。

それでも、神次の手によって亡くなったものが複数となると、ただ追放だけでは済まなくなり、十神家は神次を政府に引き渡します。

そして、神次家は断絶させられた。

というのが、ちょうど150年前に起こった出来事です。」


断絶。

「子どもたちも、ですか?」

陽織の言葉に神嶋はうなづく。

陽織は、青を通り越して、真っ白な顔になっている。

黎人は、陽織の肩を抱き寄せて、ギュッと力を込めた。


「ただ、おそらくら誰か生き残りがいたのでしょう。その後も、神次は名を変えて、ひっそりと、生きながらえた、と思われます。」

「でも、それが天神と、どんな繋がり。」

黎人はそこまで言って、はたと気づく。

男児が生まれない天神家。天神も、500年前に花嫁は存在したが、すぐに神倉の花嫁が現れている。神次ほどではないが、焦りがあったのか。


「おそらく、同じような境遇の神次に、己の姿を重ねたかと。」

神嶋の言葉に、2人は声が出なかった。





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