陽織、紗香と再会(子育て編)
岡崎にある神月家総本家に来るのは、4年ぶりだ。
あの時は両親と3人、神様の花嫁について教えてもらうために来た。
そして、黎人さんにそっくりな神様に会った。
今朝、車の中でその話しをしたら、黎人さんが少し考えていた。
神月家に着くと、紗香さんが子どもと一緒に迎えてくれた。最近、何にでも興味を持つ鷹人は、自分よりも小さい赤ちゃんに、興味津々だ。
「赤ちゃん?」
「そう、赤ちゃん。」
紗香は、陽織たちだけでなく、鷹人にも挨拶してくれた。
「鷹人くん、神月友樹です。よろしくね。」
黎人に抱き上げられた鷹人は、そう言われて、友樹をなでなでしている。
「かあいい。」
「ありがとう。さ、黎人さんや陽織ちゃんも、上がって、時間までくつろいで。お着物で運転、大変だったでしょう。」
きちんと紋付を着ている黎人を労う。
時間になり、3人が奥の座敷に招かれると、紗香の両親と紗香の夫、神月友春氏、そしてそれぞれの祖父母や、京都にいる十神家の人が出迎えてくれた。
前回と違う、厳かな雰囲気に、陽織はたじろぐ。お正月の会合のようだ。
2人が部屋に入ると、途端に空気が変わった。
苦手。
陽織は、会合だっていつも最後までいるのが苦痛だ。
でも、今回は代表して京都に来ているので、そう言うわけにはいかない。
うーっ。
「大丈夫?」
黎人が前を見たまま、小声で囁く。
大丈夫じゃない!
顔に出たのか、黎人が苦笑して
「我慢、我慢。どうせ、飲み始めたら、わからなくなるから。」
と、笑った。
今日の主役は紗香たちなので、上座ではあるものの、前に座ることはない。それだけが救いだった。
「たっくん、おねむになったら、ママに言ってね。」
と、手を繋ぐ鷹人に言った。
鷹人は、着物ではないけど、一応蝶ネクタイをしていて可愛い。そして、蝶ネクタイが気に入ったらしい。
2人は真ん中に鷹人を座らせて、両脇に座った。正座だ。これも陽織は、正直苦手。やっと慣らされた。
はじめ、友春の挨拶で会が始まり、粛々と進行される。友樹は、途中ぐずり始めて、紗香は退場する。陽織もそれに合わせて、鷹人を連れて席を離れた。
友樹は一歳になったばかりなので、鷹人よりも一年下になる。それでも、一歳時なんて似たり寄ったりだ。
「たっくんも、オムツ替えよう。」
と、紗香がオムツを替えてる横で、鷹人を追いかける。
一歳でよちよち歩き始めた友樹と比べ、最近ちょこちょこ走る鷹人は、オムツ替えの時、わざと逃げることがある。
「たっくん、ほら、友くんよりもお兄ちゃんなのに、笑われちゃうよ。」
と言うと、お兄ちゃん、と言う言葉が聞いたのか、おとなしくなった。
「にいに?」
「そうだよ。たっくんは、お兄ちゃん。もうすぐ2歳だもんね。」
その様子を見て、紗香が
「陽織ちゃん、手慣れてるね。わたしより、すっかり先輩!」
と言われて、照れてしまう。
「いえいえ、黎人さんみたいに怒れなくて、わたし基本、舐められてます。」
「でも、前に来た時は、陽織ちゃん、神様の花嫁にならない方法をずっと考えていたのに、すっかり、お嫁さんになっちゃったじゃない。」
と、紗香が笑った。
座敷に戻ると、黎人が車の運転があるから、とひたすらお酒を断り続けていた。
それを見て、どうして着物なのに自分の運転できたのか、やっと理解できた。
(お酒を断る口実が欲しかったんだ。)
宴会が終わると、帰りの運転のために、黎人は着替えた。流石に、往復着物は嫌だったらしい。
黎人が脱いだ紋付を畳んで、きちんとたとう紙に入れる。いつのまにか、こう言う作業も慣れた。
陽織は訪問着を着ていたが、特に着替えは持ってきていない。
帰りも、鷹人の隣に座るだけだし。
広間では、いつのまにか鷹人友樹が遊んでいる。
一歳児は意思疎通が謎だが、やはり何か通じるものが、あるのかもしれない。
黎人と陽織が帰る時、紗香と友春は見送りに出て
「また来てください。きっと、子どもも喜びます。」
と言ってくれた。
その日は、流石に疲れて、また、夕飯は帰りがけに買うことにした。ただ、昼間に食べ過ぎたので、簡単に、京都で人気のパンのお店で。
夜、お風呂から上がると、一つのベッドで鷹人と黎人が並んで寝ていた。
(疲れたんだー。)
陽織は笑うと、今日はのびのび、と隣のベッドに1人だけ入った。




