陽織、嵐山の別荘(子育て編)
京都の別荘には、事前に送ったもののほかに、陽織がお願いしていたした食材や日用品、特に鷹人の紙おむつが届けられていた。
「今日の夕飯は予約してある。京料理のお店だよ。」
と黎人が教えてくれた。
「その前に、陽織が行きたがっていた、車折神社へ行こう。」
そう言ってくれた。
少し休んで、荷物の整理をする。
部屋は、ほぼ軽井沢の別荘と同じ作り。
こういう作業は、高校生の頃、黎人と依頼を受ける間に身についた。
ずっと行きたかった車折神社は、陽織が映像で憧れた以上に素敵な神社だった。
ずっと並ぶ赤い玉垣には、芸能人や小説家などの名前が入る。
テレビをほとんど見ない神代家では知らない人も多いが、それでも知っている有名な人の名前もある。
神社の鳥居の前には、嵐電が走る。
厳かという雰囲気ではないが、見ているだけでも楽しい神社だ。
源氏物語の舞台に建てられら神社では縁の品も置いてあった。
二人、もとい鷹人もいれ三人で参拝すると、神社の境内から周辺までが清浄な空気に代わるのも、慣れてきた。
そのあと、黎人が予約した個室のお店で、久しぶりの京懐石を堪能した。
ちゃんと子供向けのメニューもあり、鷹人はそれを喜んだ。
夜、お風呂の後、一つのベッドに入って、川の字で寝たが、疲れていた鷹人はすぐにぐっすりと寝入ってしまう。
陽織が、鷹人を撫でていると、黎人が狭い、と言って別のベッドのほうに移動した。
クスクス笑っていたら、そのまま陽織も抱き上げられて、そちらへ連れていかれた。
やっぱりそういうことか!
となんとなく想像はついていた。
陽織が流産してから、ずっと黎人は慎重に、慎重に、ほとんどキス以外手を出してきていない。
珍しいとは思っていたが、ここまで我慢していたらしい。
「でも、明日は神月、紗香さんのお祝いで、岡崎のほうへ運転するんです。大丈夫ですか?」
と陽織は心配したが、何もしないほうが集中力が欠ける、と訳の分からないことを言っていた。以前にも勉強や仕事が忙しいときに、同じことを言われたことがあった。
そうなの?
「だから、陽織のほうこそ、仕事とかアルバイトとかで疲れるのは、ダメ!とにかく他で体を壊すのは論外なんだから。仕事なんてしちゃだめなんだからね!」
と訳の分からない、注意をされてしまった。
うーん、やっぱり就活するって言ったら反対されるのかな?
そのわりには、レイリーの会計報告とか自分で何とかしろと言ってくる。
どこかで勉強させてほしいというと、絶対に黎人が教えるにきまってる。
それは、今までの経験上、絶対に嫌だ。それこそ体を壊す。
陽織が悩んでいると、急に黎人が顔を上げる。
「また!何か考えてるでしょ!」
なんでわかるの?
「集中!!」
え?抱かれるのに集中って、嫌だよー!




