陽織、緊急女子会(子育て編)
大学二年生が終わる。
春休み、陽織は管理栄養士の臨地実習の最終日に倒れて入院してしまった。
しかし、その前にすごく気になって、ずっと聞かなかったことがあった。
それは美織も、同じだった。
千織も、同じ気持ちでいた。
と言うことがわかり、急遽羽織を呼び出して、
神代の母屋で、緊急女子会を決定した。
「はあ?陽織、鷹人くん、大丈夫なの?」
と羽織に余計な心配をされたが、鷹人は黎人がいれば大丈夫だ。
そこで、年度末決算期のクソ忙しい黎人の事情も脇に置いて。しかも、自分がやらなければならないレイリーの決算期も、黎人に押し付けて。その上、鷹人の面倒まで。
と、お願いしたら、流石に怒られた。
仕方なく、鷹人を寝かせるまで、待ってもらい、緊急女子会を開く。
すると、そんな陽織に美咲が助け舟を出し、鷹人は美咲が一緒に寝てくれることになった。
「ありがとうございます!」
と陽織は感謝感激したが、美咲自身、可愛い孫と寝たかったらしい。
「というわけで、緊急女子会!」
夕飯と、お風呂を済ませて、前回と同じように和室に4組の布団を並べ、4人は羽織を中心に話しを始めた。
「なんで、わたしみんなに囲まれてるの?」
また、新学期と言って別れたはずの陽織から連絡があった時、羽織は一体何事か、と思った。
「それは、誰も羽織と、翔太くん、宏輝くんのことを、ちゃんと聞かされてなかったからよ!」
と美織が怒る。
「本当だよ!羽織、最近笹本さんとばっかりで、私たちに何も教えてくれなかったんだもん!」
千織も怒る。
どうやら知らなかったのは、陽織だけではなかったようだ。
「そういうわけで、緊急女子会!」
と、陽織が宣言した。
「陽織!そんなことより、流産したばっかりで、大丈夫なの?」
「羽織!話をすり替えない!」
3人に凄まれて、いつも元気な羽織がしゅんとなる。
「で、いつ頃そうなったの?」
「え?え、と、去年の5月ころ?」
3人はブーっとなる。
「もう、一年近く前じゃない!」
「わたしだち、その間ずっと騙されてたの?」
「イヤイヤ、騙してなんかないよ!なかなか会えなかっただけで。」
「でも、陽織のことで、会ってたよねー。」
千織が珍しく羽織を睨む。
それはそうだ。千織は中学からの親友。
陽織たちはずっと知らなかったが、羽織的にはもう一年近く経ったことなので、今更感があるらしい。
しかも、佳織には相談していた。
そして、そのことが、千織と美織の琴線に触れた。
なんで、私たちを差し置いて!
ということらしい。
「で、でもわたし宏輝と一緒に、夏休みアルバイトしてたじゃん!」
「それでわかると思ってるので?」
「アルバイトが一緒だから、って付き合ってると思わないじゃない!」
「じゃあ、わたしも今年は神代のバイトする!」
千織が宣言する。
もう、何を言っても3人は羽織から詳細を聞くまで、寝かせるつもりはないらしい。
「羽織、話せないなら、湊人も呼んでこようか?」
と陽織まで言い出してる。
「5月ころ、ホラ陽織色々バタバタしてたじゃん。その、誘拐、とか、記憶、とか、湊人の話だと、黎人さんと喧嘩してる、とか。」
「え?そんなことあったの?おばさんだけじゃなくて。」
と、千織が驚く、が、その時すでに、3人はあってるじゃん!なんで、その時に話してない!
「いや、その頃、黎人さんも陽織も依頼どころじゃなかったじゃない。」
「そうだったねー。」
2人もしみじみと言う。
「だから、話をすり替えない!」
と、陽織が睨む。
「で、その時、わたし2人、あ、翔太と宏樹、ね。と葉鳥と幸穂と5人で、ちょっと容量オーバー気味の案件受けてたんだ。
まじ、最後大変で、そしたら、その相手が狼で、それが白狼に悪霊が取り憑いていたのが原因だったんだ。
そしたら、宏輝に白狼が取り憑いて大変で、わたし必死に宏輝から、悪霊を浄化して。
気づいたら宏輝が、白狼を使役していて、わたしが巫女になっちゃったの。
そのあと、翔太からわたしが宏輝の巫女になったら、もう終わりだよね、って言われて。」
羽織はちょっと悲しそうだった。
高2から付き合いだして、翔太の受験も応援していた。
大学に入って、本当に仲の良いカップルだった。
なのに‥。
「それから、1ヶ月も経たないウチに、翔太、看護の女の子と付き合いだして、正直言って、はあー?って感じだった。
こっちは真剣に悩んでたのに!
しかも、わたし、その、翔太とちゃんと付き合っていたじゃない。そんなわたしが、宏輝の巫女なんて、って。無理!って。だって、宏輝の家って、美織の家くらいすごいんだよ!
もう、紹介されて、びっくり!」
あー、ドラッグストアケイオー、の創業家。
神代の100周年にも来ていた。
「もう、うちなんて普通の旅館だもん!絶対に身分が、とか、格がとか思っちゃった。」
3人は、あははと笑う。
「それ言ったら、わたしなんかどうなるのよ!湊人くんの家は、神代だよ!」
「それに、羽織の家も宏輝の家も、どちらも十神家直系で、問題ないんじゃない?」
「うん、祈梨さんなんて、某系だからって、巫女なのにいまだに結婚には二の足踏んでるって、言ってたもん。」
千織の言葉に、陽織は、え?そうなの?と言う顔になった。
「まあ、家柄とかで問題ないのなんて、陽織ちゃんや美織ちゃんくらいだよね。」
「いやいや、ウチだって、ママは美咲お母様に、すっごく経済的格差を感じてるよ、今も。」
あー。と3人はうなづく?
天神家に対してだって、高樹は正直複雑な気持ちがある。マスコミ大手の天神家、超金持ちと、一介の勤務医。格が違いすぎる。経済力があまりにも違う。
和嶺にしても、食品大手の神城家だ。
こちらは再従兄妹同士と言うのも、すごく気にしている。
「まあ、そんなものだよ。経済力に関して気にしてたら。ただ、羽織ちゃん知ってる?宏輝くんのお母様は、美咲お母様のお茶会友だち、だからね!」
「お茶会、友だち?」
「和風旅館の娘の羽織なら、着物慣れてるから大丈夫だと思うし、お客様に対する礼儀作法もできてるから、安心だけど。」
と、陽織はここで言葉を切る。
そして、美織と顔を合わせる。
美織もわかる。自分の母も、その1人だ。
「羽織ちゃん、ママ友以前に、まずはお茶会友だちになろうね。」
と、陽織はここまで隠されたことへと仕返し、と意地の悪い笑顔で言った。
「で?もう宏輝くんとは、当然巫女としての役割、果たしてるんでしょ?」
千織も、意地悪そうに言う。
そう、今までは巫女じゃない、と気楽な羽織への仕返し。
「う、みんなの苦労、身に染みました。」
「で、神嶋の依頼受けた時、神嶋来てなかった?」
と、美織まで、ノリノリだ。
「一度。色々言われました。」
長々と巫女について語られたらしい。
子供の頃から、巫女としての教育を受けてきた2人と、突然、ではかなり、常識も違うだろう。
「頑張ってね!羽織。」
「ハオちゃんがんば!」
「何かあったら、必ず相談して、」
と、3人から生温かいエールをもらい、4人は眠りについた。羽織は、あまり眠れなかったが。
朝、3人が起きると、陽織がすでに朝食を作ってる。
そのうち美咲も起きてきて、鷹人も起きた。
「ママ、ママ。」
と縋りつかれてから、配膳だけ美咲と交替した。
そんな陽織の姿を見て、羽織は改めて、無理!と、思ってしまった。




