陽織、結菜の行方が知りたい(子育て編)
神嶋と、湊人、千織が来ると、リビングはいっぱいになった。
陽織が鷹人をお昼寝させて戻ると、座る席がない。
下にクッションを置いて座ろうとすると、無言で黎人の膝の上に乗せられた。
羽織、千織、佳織は3人がけに座っている。
「申し訳ありません。まさか小林さんがいなくなるなんて。今、防犯カメラを解析してますが、可能性として高いのは、署内に共犯者がいた、と言うことです。実は一人、署員が消えてまして。」
神嶋は珍しく苦々しそうな顔をしている。いつも、自信満々なのに。
「それだけ岡元の信奉者はいる、と言うことですね。思っていた以上に、厄介だ。」
黎人も、悔しそうだ。
「ただ、いくつかわかったことがあります。まず、小林さんには、そう言ったチカラは一切ありませんでした。おそらく、アレはなんらかの、トリック。または、誰かが裏から、彼女が出したように見えるよう、技を出した、と言うことでしょう。」
「あと、幸穂と宏輝が依頼受けてるなら、2人も呼べばよかったのに。」
湊人が言うと、黎人が
「ウチは会議室じゃない。」
と冷たく言い放った。
「ところで、これが依頼となったいきさつを、ほとんどのものは知らないのですが?」
と、黎人が神嶋に聞く。
陽織は、自分の頭越しに会話をされて、なんかくすぐったい。思わず、もじもじする。すると、徐に、黎人が陽織の体制を変えて横向きにし、陽織の頭を自分の胸に押し当て抱きしめた。
「ちょ、黎人さん。わたしこれじゃ、前見えない!」
「いいから、これでじっとしてて!」
と、赤い顔で怒られた。
なんで?
周りには不審な顔で見られる。
「話を続けてよろしいでしようか?」
「この話が最初に来たのは、8月だそうです。」
「2ヶ月も、前?」
「はい。最初は他の大学の学生が、一定額の金額を払って、その政党に入れば、就職を紹介すると言われて、ある議員の事務所を紹介されたそうです。彼は法学部だったので、初めは納得していたそうですが、その議員はすぐに落選してしまい、事務所は跡形もなくなり、元々まだ学生、と言ったことで、就職をなかったことにしたい、お金を返して欲しい、と言ったそうです。」
みんなはうなづく。
それは確かに。
「しかし、政党と議員は異なる。他の議員の事務所を紹介する。と言われお金は返してもらえませんでした。それどころか、なかったことにして欲しいとお願いしたところ、違約金を払うよう、逆におどされ、警察に駆け込みました。」
「え、と。でもそれって、普通の詐欺事件ですよね?」
「はい。問題はその後です。」
「8月頃に警察に届いたこの話、他にも数人、同じような届けを出していたものがいたのですが。その後、届けを出した全員から、届けの取り消しがありました。さらに、その後、彼らの家族から、今度は息子や娘が、いなくなった、と言う行方不明の届けが出ました。」
「?それでも、まだ違いますよね?」
「届けを出した家族は、みんながみんな、自分の子の幽霊を見た。と。もう、死んでるのでは?と。」
「死、って、殺されたってこと?」
神嶋は考えた。
「幽霊って、必ずしも出るものではありません。」
佳織たちは、そうなんだ?とうなづく。
「出る場所も、選べるものなのか。」
「選べるんですか?」
「霊って選んでるんでしょうか?」
「そしたら、地縛霊とかは、霊が場所を選んでるんですか?」
「みんながみんな、家族の元にでたんですか?」
みんなが疑問を口にする。
「さらに、その後その政党の代表者はすごい力を持っていて、世の中を変える力がある。その政党を支持すると、特別なチカラを持つことができる。そう言った噂が立つようになったんです。」
「その、急に、ですか?」
「それが、今回のようなパーティーの席で、新しく政党に入った学生が、先日の小林さんのようなことを見せたそうです。」
「それって、やっぱり本人ではなく、何者かが、と言うことですか?」
陽織は、顔だけを後ろに向けて、聞いてみる。
「神次って言う名に、聞き覚えは?」
「神次?」
「神次!」
「かみ、つぎ!?」
陽織は顔を上に向け、
「黎人さん、知ってる?」
と聞く。
可愛い、可愛い!
「名前だけは。たしか、明治の初めに消えた元十神家の一族ですよね?」
「はい。当時の長をやっていた、トップの家です。明治維新のどさくさで、一族のほとんどが殺され、滅びました。」
「まさか、その一族が関係あるのか?」
湊人が隣に座る神嶋に聞く。
「はい。今の十神家への、報復ではないか、と、考えています。」
「報復?それと、詐欺がどう関係が?」
「それに、さっきの幽霊って?殺されたとは限らないってことですか?何かトリック、とか?」
「ちょっと待って!殺人みたいなことは、どこにいったんですか?」
神嶋の話が複雑すぎて、みんな頭が混乱してる。
「わかってるのは、全てに公進党が関与してること。そして、岡元が代表の、光和と言うサークル。そして神次です。
大学生の行方不明。素人が急に力を持つ。
幽霊としてでてきた若者たち。と言った事件に。」
黎人はそれを聞いて、今朝、徹夜しても全てのニュースを消して良かった、と思っている。
???しかし、陽織は眉間に皺を寄せる。
「黎人さん、陽織、全然わかんない。」
陽織が知りたいのは、結菜のことなので、こんな話を聞いても、他人事。
「それで、神嶋さん。結菜さんからは何か聞き出せましたか?」
黎人が代わりに聞いてくれた。
「まずは、結菜さんは昨夜保護した時は、しばらく防災としていましたが、落ち着くと、泣き出しました。
陽織さんに申し訳ないことをしたと。思ってもいないことが、口から出たと言ってました。」
佳織と羽織は、ホッとした顔をする。
「もう、陽織さんに会わせる顔がないとも。できれば早く謝罪したいけど、その前に、ちゃんとやらなければならないことがある。とも。」
「やらなければ、ならなこと?」
陽織は黎人の顔を見る。
黎人はまだ信用できない、と言った様子だ。
「とりあえず、彼女が一週間の間にいた場所は分かりましたが、おそらくそこはもう、間抜けの殻、でしよ。他にも、聞き出せることは、きいたのですが。彼女も、記憶が混乱していて。」
「記憶?」
「その、神次って奴は、神鬼先生みたいなことができるんですか?」
黎人が聞くと、陽織は不思議そうな顔をしていた。
神鬼先生が記憶を?
しかし、神嶋は陽織のことなど構わず、話を続ける。
「神鬼さんみたいに、記憶を消すのは無理でしょうが、もしかしたら、ありもしないことを植え付けたり、洗脳のようなことは、できるかもしれませんね。
だいたい、詐欺師の常套句です。」




