↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
177/284

陽織、同情?それとも(子育て編)

陽織はドレスを脱いでアクセサリーをはずすと、お風呂に入る。

黎人はシャワーで良い、と2階に行った。


2人の急な帰宅に、美咲は驚いているが、鷹人は喜んでいた。


陽織は、お風呂の後、鷹人を連れて子ども部屋に行った。鷹人は元気のない陽織に気づいて、頭を何度も撫でていた。


そんな優しさに、陽織は鷹人をギュッと抱きしめると涙が溢れた。

黎人さんは怒ってる。

たぶん、結菜に対してだとは思うが、もしかしたら、彼女を庇った陽織のことも、怒ってるかもしれない。


鷹人が眠ると、陽織はドレスとロングのグローブをクリーニングに出すためのカゴに入れ、脱ぎ捨てられていた黎人のタキシードも、一緒に拾って入れた。

ワイシャツは洗濯物置き場に、ネクタイはクローゼットに。

アクセサリーをしまいながら、結菜の言葉を思い出す。大学生が一年間バイトしても買えないネックレス。


当然と言えば当然だけど、それが陽織の枷となっている。イヤリングも、指輪もヘアアクセも、すべてアクセサリーケースにしまった。


明日、羽織たちを呼び出す、と言っていた。黎人が呼び出すのだろう。陽織はドキドキする。

寝室に行ったが、黎人は居なかった。

すれ違ったのか、と思い、下の階に降りるがいない。

もしかしたら、母屋かもしれない。


そう思ったが、なんか色々疲れてしまい、寝室に戻ると、そのままベッドに倒れ込んだ。


慣れないヒールも、

周囲の視線も、

結菜とのやりとりも、

もう、どうでもいい。


翌朝、陽織は泣きすぎて、目が腫れていた。

黎人の姿はない。

ダイニングに降りると、珈琲片手にパソコンを睨みつける姿があった。

「おはよう、ございます。」

陽織が恐る恐る声わわかけると、

「え?そんな時間?」

と顔をあげた。

徹夜していたらしい。

目の下にクマがある。


その後も、朝ごはんを食べながら、黎人はパソコンから目を離さなかった。

朝、あれから一言も話さない。


8時に鷹人の部屋に行くと、鷹人は起きて、ベッドから乗り出して降りようとしていた。

「たっくん、危ないよ。」

と手を貸すが、上手に降りてる。

階段も、一段一段、座りながら降りてる。


2人で階下に行って、鷹人が

「パパ!おあー!」

と言った時も、一瞬だけ顔を向けて、またパソコンを見てる。

??


9時になると、羽織と佳織がやって来た。

佳織は初めてだ。

「豪、邸。」

玄関の前で、佳織が呟く。


陽織が出てドアを開けると、羽織が飛び込んできた。

「陽織、大丈夫?目、真っ赤だよ!」

陽織は、顔を洗ったのに、と恥ずかしくなる。

「まあ、あれだけSNSやネットニュースでも取り上げられたら、大変だよね。」

佳織が苦笑している。

SNS?ネットニュース?

なんのことだろう?

中に案内しながら、陽織が意味がわからないと、言った顔をすると、羽織がスマホの画面を向けて来た。

そこには、陽織が黎人と手を繋いでパーティーにでている様子がアップされていた。

『神代製薬社長夫妻、岡元議員のパーティーに出席』

『岡元議員を支持か?』

と言った見出しもある。


2人がリビングに入ると、黎人がやっとパソコンから顔を離して、肩をトントン叩いている。

「疲れたー。」

その様子を見て、羽織が黎人にネットニュースを見せようとすると、途端に画面が消えた。


「え?え?」

羽織だけでなく、陽織も佳織も、驚く。

「あれ?あれ?」

羽織はスマホが壊れたのか、と、あちらこちらに触れていたら

「あ、羽織さん、もう見られないよ。全部消したから。」

と、黎人が答えていた。


どうやら、昨夜から徹夜で、黎人は昨夜の岡元議員のパーティーと黎人と陽織に関するニュースを、片っ端から消していたらしい。

「手伝ってもらった社員にも、残業と休日出勤手当出さなくちゃ。」

と呟く。


陽織は、とりあえずソファーにかけてもらうと、珈琲と紅茶を出した。

その前に、黎人と鷹人が座る。

「陽織、僕、もう、珈琲飲みたくない。」

黎人が言うので、なぜか鷹人と同じ牛乳になった。

「パパ、ニューニュー。」

と、鷹人が喜んでいる。


「あの。えと、お疲れ様、でした。」

陽織は、紅茶にミルクをたくさん入れて、黎人にぺこっとお辞儀をする。


「それでは。」

と、黎人が2人に昨日のことを話し出す。

光和というサークルのこと。

岡元議員とその息子。

そして結菜のこと。


「え?結菜が焔を放ったの?」

「うそ!だって、結菜って普通の子だよな。わたしだって、やっと見られるようになったくらいなのに。」

「で、これからは、陽織、話せる?」

ずっと黙っていた陽織は、急に話を振られて戸惑う。

「やり取りは、陽織しか知らないから。」

それはそうだ。

黎人が知ってるのは、陽織が炎を防いだところから。


陽織は、またあれを思い出すのか、と思うと気が重い。でも、確かめたいこともある。あれは、結菜の本心になるのか。


陽織は、結菜に言われたことを、思い出しながら話す。

バカにしてたのか。

同情してたのか。

良い服を着て、勉強も、苦労もしてない、お金持ちで、アルバイトもしてなくて。

自分は奨学金もあるから、成績下げられない。でも、バイトもしなくちゃならない。 

バイト代一年分でも買えない、陽織のアクセサリーのことも。

などなど言われたことを。


「わたし、どれだけの人に、嫌われてるんだろう。」

陽織は、実験の時に高田に言われた言葉も、思い出す。陽織は、また、泣きそうになる。

「ちょっと待て!」

羽織は陽織の言葉を遮った。


「前も言ったけど、わたしは陽織のこと、好きだからね!付き合いも長いから言うけど、陽織は勉強だって、絶対楽なんてしてない!予備校行ってた時のことも知ってる!ホント、いつも一生懸命だって。

受験の時だって、陽織が必死だったのも、ちゃんと知ってる!」

黎人もうなづく。

「それに、千織たちから、陽織が子どもかばって溺れた話も聞いてる。陽織は、絶対、楽して良い思いばっかりしてない!むしろ、バカみたいに苦労背負って、死にかけて、ほんと、クソ真面目で。」

「うん、わたしもそう思う。この前、5号館の結界の時だって、陽織、お腹大きいのに、わたしを守るために、結界張ったり、霊を祓ったり、色々してくれた。危なかったのに!

高校の時、湊人くんとの時だって、陽織が千織ちゃんのことかばって、自分がターゲットなったり。階段から落ちたり。」

2人の言葉に陽織は嬉しかった。

じゃあ、あれは、なに?

やっぱり結菜は、そう思ってたの?


「確かに、羨ましいって思うこともあるよ!こんな素敵な旦那様!もう、羨ましくて、羨ましくて!」

「そうだねー。イケメンで金持ちで、優しくて、陽織に甘々で、真面目で、こんな良い人滅多にいないよ?」

黎人は恥ずかしそうな、嬉しそうな。

「だいたい、陽織のために徹夜したんでしょ?今朝も。」

と羽織。しかし、黎人は

「いや、あれはうちがアイツを支持してるなんて、なにがなんでも思われたくなかった。」

と、アッサリ答えた。

   いや、そこはウソでも陽織のためって言えよ!

と、羽織は睨んだ。


「キクリは絶対、陽織を羨ましいなんて、思ってないしね。」

「あー、惨めな子って言ってたねー。」

そう、菊池日緒理は、陽織がいじめに遭ってた中学時代をよく知っている。

「それは、それで、嫌なんだけど。」

陽織が呟いた。


「あの時、結菜いなかったっけ?」

「いたけど、黙って聞いてた。」

「まあ、部外者だったしね。」


2人はうーん、と色々思い出す。


「陽織がお嬢様って、認識はあったよね。言葉遣いとか。父様?とか兄様とか。」

「あれは、どっちかっていうと、ドン引いていたって感じだったよねー。」

と、2人は笑い出した。

ちょっと、黎人がイライラし始めてる。


「とりあえず、結菜さんは、このまま処分ということで、よろしいですか?」

と、黎人がいきなり、結論を2人に突きつける。

すると、処分の言葉に、さすがに2人も驚く。

「今、結菜さんは警察、神嶋のところにいます。」

「警察!?」

「なんで、神嶋?」

2人はなにも知らなかったらしく、本当に驚いていた。

「幸穂。あ、一年後輩の。が、神嶋さんから、今回の件で依頼受けていて。もう、千織ちゃんたちは動いていたみたい。葉鳥くんから聞いてない?」

羽織は、首を傾げた。双子だろう!

「アイツ、秘密主義だからなー。」

「あと、宏輝くんも。」

宏輝、と陽織が言った途端、羽織の肩がビクッとなる。

?


「警察まで出てくるくらいのことだったの?」

「んー。それがこのサークルって、明王だけじゃなく、他の大学も、関わっていたみたい。だいたい、代表の岡元亮一自体、明王大じや、なかったし。」


それを聞いた途端、2人は

「やっぱり詐欺だったじゃない。」

「詐欺ってことだよね!」

と叫んだ。


「平和に考えれば、単に若者から支持されてない議員が、若い大学生に、就職って言う甘い餌をちらつかせて、自分の支持者に仕立て上げた。ってところかな。」

黎人が苦笑した。しかし、すぐに顔が強張り

「ただ、そこに怪しい霊能力って言う話が出て来て、実際に、今回彼女は炎を出してる。これは、明らかに問題になる。」

黎人の言葉に2人は真剣にならざるを得ない。

「そして、彼女は陽織に攻撃をした。」


陽織への攻撃。

それが何を意味するか、例の陽織を誘拐するきっかけとなった先輩の処分で、よくわかってる。

彼は大学を追われ、就職もなくなった。


「だから、処分。」

「うん、それが妥当かな。」

「すみません、処分って、何をするんですか?」

佳織が焦って聞いて来た。

「とりあえず、大学は退学だね。あとは、警察が彼女を被害者とみなすか、どうか。障害事件には違いないし。」


「でも、奨学金とか。」

「うん。でも、それはあくまで彼女の家の問題で、奨学金があるから、何もなかったことにする、と言うわけにはいかない。それは、陽織もわかるよね?」

陽織は、また泣いている。


「可哀想だけど。もし、このまま大学で普通に会って、陽織は結菜さんと、今まで通りに過ごせる?」


「それ、は。だい、じょ、う、ぶ。」

「彼女は?自分がしたことが、無罪放免になって、それが陽織のおかげだって知って、感謝するかな?むしろ、また、同情されたって、思うんじゃない?」

陽織だけでなく、羽織や佳織も、言葉が出ない。


「でも、それが、誰かに操られた、とか。」

「そんな、ドラマか漫画の世界じゃあるまいし。それに、多少なりとも、彼女には、そう言う気持ちがあった、って言うことだよ?」

陽織は、その言葉に、自分を責め始める。

   わたしがパーティー行かなければ。

   わたしが結菜に、声をかけなければ。

   わたしがクビを突っ込まなければ。

「また陽織、自分のせいだとか、思ってるでしょう。まったく。」

黎人はお見通し、とばかりに、呆れた顔をする。


「確かに、弱点を責める、って言うのは、詐欺の常套手段だよね。彼女の弱点は、就職への焦りと陽織への嫉妬心だ。」


「黎人さん、結菜を救う方法ってないんですか?」

羽織も顔色が悪くなっている。

「救う方法はある。だけど、さっきも言った通り、2人は、どっちを選ぶ?結菜さん?それとも、陽織?」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。