陽織、楽しんだ!(子育て編)
タン、と軽く3階に飛び降りた陽織は、湊人と並んで、もう一体の大物と、向き合った。
慣れてる大神はともかく、綾人は呆然としている
「うわっ、またドロドロ。きもっ。」
「陽織は見てて良いぞー。」
「うっさい!」
「なんか、懐かしー。」
大神の声に呼応するように、インカムの向こうでも、同じような声がする。
綾人1人がついていけない。
「陽織様は、その、もっと、お淑やかな、はず。」
大神が残念なものを見るような目で、綾人を見る。
「どうやる?」
「んー、さっきと同じ?」
「よっしゃー、じや、今度は俺が縮める!」
湊人はそう言って、広げた手を前に出す。
「あ、ずる!綾人さんたちが、弱らせてたじゃん!」
陽織は、大きなハンマーを生成する。
そこに、千織がやっと追いついた。
「ふたり、とも、はやすぎ。」
「お前らー、はしゃぎすぎて、明日疲れんなよー!」
と、大神は見学を決め込む。
すっかり、高校の時と同じやり取りだ。
湊人が縮めた怨霊を、陽織がハンマーで、思い切り叩いた。が、何せ陽織は、非力だ。
「おっ前、まじ、非力だなー。」
大神がハンマーをとりあげて、再度思い切り叩くと、カサカサに乾いた霊は、そのまま砂のように消えて行った。
「終了!」
「おわったー!」
「まだ、浄化!」
陽織と湊人がハイタッチする横で、千織が膨れた。
あ!
そうだ、今日の陽織は結界と浄化要員で、戦闘要員ではなかった。
「陽織ー、お前、浄化のチカラ、残ってんのか?」
「ボチボチ。」
「ボチボチって。」
「しょうがないじゃん、湊人が取りこぼすから!遅いし!」
「お前が、手を出すからだろ!一人でできたわ!」
そこに綾人が手を挙げた。
「わたし、浄化できますので。」
「さすが!万能秘書!」
「ありがとう、神柴さん!」
2人は声を揃えて、振り返る。そして、浄化できない元担任を見た。
他からも終了の連絡が入り、最後に、建物全体に新たな結界を張った。悪いものが、できるだけ入らないように。
帰り道、陽織は神柴に
「え、と、その、今日のことは、黎人さんにも、絵梨花お姉様にも、内緒で、お願い、します。」
と、頭を下げる。
綾人は、たぶん社長には気づかれると、思いますが、という言葉を飲み込んだ。
陽織は、今日、ちゃんと倒れずに終了した。
すごくない?
いつもなら、みんなご飯やお茶となるが、今日は近いし、それぞれ忙しい。
報告書は大神が作成するので、任せた。
陽織はくる時は神嶋が送ってくれた。
そう、帰り方がわからない。
病院の門を出たものの、どこから帰れば、家に着くのか。
湊人は、千織とすでに帰ってしまった。
「どうし、よう。」
その時、神柴が車を回してきた。
「よろしければ、お送りいたします。鷹人様をお迎えに行かれるのですよね?」
といわれたが、このまま真っ直ぐ、レイリーへ行くのはまずい。
「いえ、とりあえず、家に。」
と言って、家まで送ってもらったら、ものの数分だった。
う、わたし、家にも帰れない。
陽織はシャワーを浴びて着替えると、笹神に頼んで、鷹人を迎えに行く。
初めてのお遊戯が楽しかったのか、鷹人はたくさんおしゃべりをした。
「おう、オウ。うーあー!」
手足を動かしながら、ダンスのようなことをする。
「たっくんも、楽しかった?ママも、すっごく楽しかった!」
今夜は鷹人と2人きり。
明日の夜には黎人は帰ってくる。
やっぱり夜は寂しい。
「そうだ!たっくん、今日はママと一緒に寝よう!」
陽織は、そういうと、あとは寝るだけの準備をして、パソコンを立ち上げ、ネット通話で、黎人と話しをした。
鷹人が一生懸命、お遊戯で習った踊りを披露する。
「気をつけて帰ってきてね。」
「ね。」
と、2人で挨拶をして、陽織はパソコンを切った。
初めて子どもと2人、ベッドの中で寝る。
鷹人は甘えて、ぎゅっと陽織に抱きついた。
う、可愛い!
「マンマ。んまん。」
とすりすりしてくる。
「パイパイ。」
あ。
しっかり、離乳したと思っていたのにー!
もう、たいしてでないぞ!
ていうか、たぶん出ないと思うが。
「ふえっ、ウエッ。」
と泣き始め、鷹人は欲しがる。
もう!
と思いながら、たいしてでない陽織の胸を、鷹人はパクッと咥えたかと思うと、そのまま、チュパチュパしながら、眠っていた。
(そっかー、たっくん、甘えたかったんだ。)




