陽織、本当に久しぶりの現場(子育て編)
9月半ば、黎人は会議で九州へ出張。今回は神柴ではなく、他の秘書と違うグループ会社の社長が一緒だ。
会議そのものは明日からだけど、開始時間が早いことと、事前打ち合わせをしたいとのことで、シルバーウィーク飛び石の月曜日に、出発した。
9月は中間決算もあるため、祝祭日でもレイリーは特別に保育園を解放している。鷹人たちは今日、園内で初めてお遊戯というものをやるらしい。簡単にいうと幼児ダンスのようなものだ。
陽織は、黎人を見送ると、鷹人にお遊戯参加した方が楽しいよね、という口実で、レイリーに連れて行った。
そして、9時半、決行の30分前に神楽大学附属病院に集合した。千織が手を振っているが、湊人はハア?という顔。そして、神柴も目を見開く。最後の1人は、大神だった。
「な、なんで、先生、いるの?」
と陽織が、指差して驚くと、
「それは、こっちのセリフだ!」
と、返された。さらに
「なぜ奥様が!」
と、神柴に言われ
「名前でお願いします。」
と、俯く。恥ずかしい。
「か、神柴さん、こそ。」
知ってた、けど。
「それでは、陽織様も、名前、で。」
「綾人、さん。」
「湊人ー、とりあえず、去年みたいな失敗はなしね!今日は、サクサク行こう!わたしも、鷹人のお迎えあるし。」
と、陽織は久々の現場に、やる気満々だ。
「うっせー。」
と湊人は、返して陽織を追いかける。
「また、追いかけっこ、してる。」
「んじゃ、わたし建物全部に、軽く結果張って、他所から入らないようにしまーす。あとは、よろしく!」
と、陽織が叫ぶ。
「軽くって。」
インカムの向こうで、誰かが呟いていた。
陽織はインカムで他の現場とのやり取りもしていた。他現場では、
「なんで、陽織がいるんだ!」
「陽織ちゃんおひさー!」
「え?陽織先輩ですか?」
と、さまざまな声が聞こえた。
「じゃ、彩奈さん、和兄様、行きますよ!カウントダウン。」
「ちょ、まって、こっち結界まだ!」
「早くして下さーい。」
インカムは全部で5つの現場を繋いでいた。
万が一大物がいて、それを取り逃した場合の対処のためだ。
「行きます!10、9、8」
「ゼロ!」
と、一斉に5つの巨大病院の除霊が始まった。
陽織は今日は結界要員と、最後の浄化と決めていた。が、5分も経つと、上の階担当の湊人と千織は、早いが取りこぼしが多い。
下の階を両端から担当している、大神と綾人は、反応が遅い!
イライライラ。
なんでー!?
「先生、右前方20メートル、4体、縦列でいます!」
と、陽織は叫んだ。
外からのんびり見てられない!
結果、中に突入したが、陽織の周りにウジャウジャ湧いてくる。
今日は、白桃は鷹人につけてきた。
今頃黎人は、九州に向かう飛行機の中!
「もう!来ないで!」
陽織が次々、氷漬けにしていく。
「神柴さん!後方から3体きてます!湊人、五階、まだ取りこぼしが4体いる!」
陽織が階段を駆け上がり、五階の取りこぼしに急ぐ。取りこぼしの1つはかなりの大物だ。
なんで、あんな大物気づかない!
?もしかして、移動している?
途中て、千織たちとすれ違った。
「上は、任せて!」
陽織はそう言うと、五階に駆け上がる。
「あれで、子持ちか?」
湊人が呆れた。
4体のうち、3体はあっという間に氷漬けにし、そのまま消す。しかし、最後の一体は。
う、ドロドロ。
にが、て。
陽織は、目を逸らしたいが、今日は誰もいない。
自分で選んできた場所!
自分で、やらなきゃ!
陽織は、ドロドロに向けて手を開く。
そして、それを力の限り握る。
縮め!縮め!縮め!
陽織はドロドロから水分を蒸発させて、固めていく。
四階の浄化が終わった湊人たちが上がってきた。
1、2階は、大神と神柴でなんとか終えた。
「湊人たちは3階へ!」
陽織が叫ぶ。
おそらく、陽織が対峙しているのが、この病院のボスだ。
「陽織、1人じゃ無理だ!」
湊人が叫ぶ。
「湊人、わたしが縮める、高野豆腐!」
「ラジャー!」
「陽織、湊人くん!結界張ります!」
千織が叫んだ。
高野豆腐って何?
湊人は、力技で1番効力のあるハンマーを出す。
すると、陽織が完全に凍らせて乾燥させた、モノを上から思い切り叩いた!
ズッバーン!
という音とどに、ドロドロだったモノが破砕する。
すると、陽織は階段へ向かい三階へ急ぐ。
はじめは駆け降りていたが、めんどくさいと、踊り場から飛び降りた。
タン、と下に降りると、上から湊人も飛び降りた。
「ちょっと、湊人!骨でも折ったらどうすんのよ!」
「それは、こっちのセリフだ!」
「千織1人置いてきちゃダメでしょ!」
「四階はもう、完璧だ!」
「そう言って、取りこぼしたくせに!」
階段の上から、2人の怒鳴り声が聞こえる。
3階の大物相手に、大神と綾人は思わず上を見上げると、陽織と湊人が踊り場から降ってくる!
「?!」
綾人は、目を見開く。
「な!」
大神は、呑気に片手をあげる。
「オウ!」
スタッ、トン、と2人が3階のフロアに降りたつと、空気が変わった。
「お待たせ!」
「先生、あとは休んでな!」
「お前ら、偉そうだなー。」




