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陽織、お祭りに行く

赤点、赤点、赤点。

一番ショックを受けているのは、あの後陽織の部屋に来た父だった。

「あ、でもね、父様、わたし数学と英語は満点だったみたい!すごくない?」

本人は、あまりショックを受けた様子がない。

翌朝、5人はそれぞれ医師の診察を受けて、午前中には退院することができた。

4人がそのまま自宅へ戻るところ、陽織はそのまま学校へ連れて行かれ、補修となった。


中間試験も、追試も無事終わり、Sクラスの生徒はまた日常生活に戻った。ただ、あの事件のことで、中高6学年のSクラス全員が、改めて注意を受け、新たに危機管理の項目が取り入れられた。


「どうしてだ!?」

金曜日の帰りのHR、中間試験の順位表なるものが、手渡された。翔太はその順位表を見て愕然としている。

「どうして、俺は赤点がないのに陽織よりも順位が下なんだー!」

あの事件からいつの間にか、湊人たちが陽織のことを呼び捨てにするようになった。

さらに陽織が一発で追試合格するように、と和嶺に頼まれた"陽織古文日本史改善隊"なるものが発足された。さらにさらに、陽織の追試合格後も、彼らは定期的に、勉強会を開くようにもなっている。


「それはね、翔太くん。君は何事も無難だけど、突出して良い点もとっていないからだよ。」

湊人に冷静に分析され、翔太はさらにへこむ。

「あ、そうだ明日の放課後、お前、時間ある?」

湊人からは、陽織はなぜかお前呼びされるようになった。確かに湊人は、学年一位。ほとんどの教科が90点以上。今回の改善隊のリーダーで、世話にもなった。

「な、何か、御用で、しょうか?」

陽織はなぜか敬語で話す。

「いや、ちっとウチに遊びに来ない?」

湊人の言葉に周囲は興味津々だけと、陽織は違う意味だと勘づいた、

「いえ、その、結構です。明日は両親と用があります、の、で。」

陽織のギクシャクした受け答えに、クラスメイトたちは何があった?と疑問を浮かべる。


「湊人ー、ちゃんと説明しないと陽織来ないよ?」

千織が陽織の背中から抱きついた。

「あ、言い方間違えた。明日と明後日さ、ウチの祖父さんのところの神社で祭りがあるから、見に来いよ。結構ウチのクラスの奴、手伝ってるんだ。千織や葉鳥も。」

湊人が説明した。

「僕らも、社務所手伝ったり、お守り売ったりするんです。」

葉鳥がニコニコと言う。

「と言うことで、わたしと羽織は巫女さんやるから、是非是非見に来て下さい!ミオちゃんも、来てね!」

千織は楽しそうに誘って来た。

お祭り!陽織は行ったことがない。初詣もあまりない。

「でも大丈夫?」

陽織は先日のことを思い出して、少し不安になった。

「大丈夫、大丈夫!ウチはこの辺一体の中で、一番霊力高い神社だし、お祭りってプラスの気が集まるから、邪悪なものは、寄せ付けにくいんだ。」


実際には、最後の例大祭まで入れると、お祭りは一週間以上にわたって行われている。木曜日くらいから始まり、金曜の今日は氏子が持つ神輿の神霊入れだ。そして土曜日、日曜日は観光客はもちろん、近年人気のアニメ好きも集まる、大イベントとなっている。


東京では3大祭りの一つと数えられている規模のため、社内の神職だけでは足りず、今年は湊人たちも手伝うと言うことだ。先日、みんなが向かっていたのは、明日の打ち合わせだったらしい。

そこまで聞くと、陽織も俄然興味が湧き、行ってみたくなった。

家に帰って、陽織はお祭りのことを家族に話す。

神明神社のことは、誰もが知るところなので、両親も反対はしない。ただ、祭り当日の人の多さだけは、慣れない陽織のことを心配した。


翌日の午後、家に帰ると陽織は浴衣に着替え、美織の家まで向かった。美織と2人浴衣で歩くと、すれ違う人が振り向くのを感じた。

(やっぱり美織ちゃんって綺麗だよねー。)


正面鳥居の中はものすごい人混みで、すぐ中に入れそうにない。仕方ないので、西側に周り公園側から入る。それでも人の多さは変わらない。

「正面鳥居からお神輿が来るみたいだけど、人が多くて、見られないかもしれないね。」

「先にチオちゃんたちのところに行く?」

そう言いながら、2人は裏手から会館の方へ動いた。


中に入るとお守りや御朱印を渡す、千織と羽織の姿が見える。2人は話の通り巫女服を着ていた。

「か、可愛い!」

そう、陽織が声を漏らすが、それはみんな思っているのか、他よりも2人がいる場所の方が、男性の列が長い。

人混みを避けて、その様子を見ていたら、奥から裃袴の湊人が出て来て、千織の列を分け始めた。

「すみませーん。こちらたいっへん混み合っておりますので、隣の列にお並び下さーい!」

よく見ると、隣の列はちょっと年配の男性が担当していた。


美織がクスクス笑いながら、その男性の列に並んだので、陽織もその後ろに並ぶ。2人がそこでお祭り用の団扇を買っていると、いつの間にか、列が陽織の後ろに移動していた。

「ナイス!陽織ちゃん美織ちゃん!」

羽織と千織がそう言ってこちらに指を立てていたが、何がナイスなのだろう?


2人で団扇片手に本殿の前に戻る。お神輿が通りに来たらしく、人だかりはそちらに移動している。

その間、2人は参拝を済ませ、お囃子の方へ移動した。




















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