↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
154/285

陽織、記憶を失う(子育て編)

陽織がいつもなら大学の門に来るはずなのに、まだ来ない。なんの連絡もない。と言う連絡が笹神から入ったのは、午後5時半のことだった。

今日はGW前の金曜日のため、学生の数は少ない。

見逃すはずもない。


今日の最後の授業は、昨年休んでいた間に受けるはずだった専門科目で、一緒に受ける友人がいない。

仕事中の連絡だったが、神柴に話し、すぐに警察に連絡を入れる。

最近、ストーカーがいるみたいだ、と羽織から聞いていたので、用心していたのに。


陽織が目を覚ますと、見知らぬ倉庫のような建物の中だった。


男の声がする。

「え?売るんですか?まあ、確かに上玉ですか、もう傷物ですぜ。」

   売る?傷物?

しばらくすると、違う人の声がきこえる。

「どうせ売るなら、俺たちでやっちまおうさ!傷物なんだ。気づかれやしないさ。」

   やる?何を?


扉が開き、見知らぬ男が3人入って来た。

   怖い!

心音が高鳴り、額に汗が滲む。

   怖い!

   何?

動けない!動かない?

手足が縛られていた。

   痛い!


男の1人の顔が陽織の顔に近づいて、舌を出して、ペロリと舐める。

   気持ち、悪い!

「なるほど!細いくせに、胸は立派だなー!」

下品な声が響いた。


「手足縛っても、やれることあるよなー。」

そう言った。

   何をやれるの?

咄嗟に顔を背けた。

でも、ぐいっと、顔を男の方に向けられて、いきなりくちを開けられた!

やだ!触らないで!

   ハク!ハク!黎人さん! 


バチッと静電気のようなものが走る!

そのすきに陽織は顔を背けて、口を固く閉じた。

しかし、一瞬男たちは怯んだが、大したことないと、薄ら笑いを浮かべ、ますます陽織に近づく!


3人の男は、徐にズボンを下げ見たくないモノを出して、陽織の目の前にそれを見せつけるように近づけた。

   やだ!気持ち悪い!

次に陽織の口を無理矢理こじあけられる!

背けた顔に何かが触れた!

   !!!

「いつも、旦那にやってんだろー?」

   やだ!やだ!気持ち悪い!


他の男が、何を考えていたのか、陽織の足のロープを切り、いきなり陽織の足を触る!

   やた!やだ!やだ!

   黎人さん!助けて!

そして、最後の1人は、徐に、陽織の服の前ボタンを外すと、胸に触れて来た!

   やめ、て!いや!

   たす、けて!黎人、さん!



陽織の声が聞こえた!

黎人は、神柴と、話を聞いていた社員に断りを入れて、陽織の元へ飛ぶ!


「陽織!」

陽織が横たわる周りに、下品な顔の男が3人いた。

黎人は、力の限り1人を突き飛ばす。

陽織は、ぐったりと横たわっている。

そして、陽織は荒く息を吐く。何度も何度も!


黎人は陽織の足に手をかけていた男を突き飛ばし、最後の1人を殴り倒した。

「陽織に、何をしたんだ!」

その時、外にサイレンの音がした。

横たわる陽織は、そのまま気を失う。

黎人が抱き上げるも、全く返事がない。


陽織がそのまま搬送されることになったので、救急車の中で、黎人は神柴に連絡を入れた。

神柴は会長と、黎人の家、陽織の家に連絡を入れた。


陽織は病院に担ぎ込まれた後、様々な検査を受けて、一応異常はないと判明した。

しかし、今回担当した、女性の犯罪捜査官は、身体以上に心の異常を気にかけていた。

「性犯罪の被害者は、心のケアが一番大切です。」

と。


翌朝、陽織が目を覚ますと、黎人は捜査官の言っていた言葉を思い出した。



陽織が目を覚ますと、見知らぬ男性がいた。

誰?この人?陽織は眉間に皺を寄せた。


黎人がそばによると、

「な、誰なんですか?なんで、あなた、人の部屋に?マ、ママ、ママ!父様!」

陽織が怯えて叫んだ。


黎人が、いつものように抱きしめ、落ち着かせようとすると、

「やだ、何するの!触らないで!」

と叫ぶ。


慌てて駆けつけた陽香に陽織は抱きつき

「ママ、ママ、陽織、どこにいるの?ここどこ?この人、だれ?」

と黎人を指差す。


「陽織?何言ってるの?黎人さんじゃない?あなたの旦那様の?」

その言葉に陽織は、思い切り嫌そうな顔をする。

「何言ってるの?ママ知ってるじゃない!陽織、男の人大ッキライッて!結婚なんか、するわけないじゃない!気持ち、悪い!」


黎人も、陽香も、呆然とする。

そして陽織は、泣き出した。


そのうち、高樹もやって来る。

「父様!父様!陽織、なんで病院なんかにいるの?陽織、病気も怪我もしないよ!なんで、こんなとこ。お家に帰りたい!」


陽織は中学生の頃のように、泣き出した。


黎人はそのまま、外に出され、とにかく色々な医師の話だけを聞かされる。


MRIなどに異常は見られなかった。

色々な医師の診断は、総じて、一過性の心的な記憶喪失。

何かのきっかけで、戻るだろう、とのことだった。

しかし、それは今日かもしれないし、いつの日になるかわからない。何がきっかけか、わからない。


ただ、黎人は自分自身ではないことだけはわかった。

   気持ち悪い‥。


それどころか、陽織は母乳が出た途端、さらにパニックになって、泣き出して陽香から離れない。


「なんで?陽織、病気なの?なんでオッパイなんか出たの?気持ち悪いッ!胸、痛いよー!」

「陽織はね、大人になって、赤ちゃん、産んだのよ!」

「赤ちゃんなんて、産まないよ!だって、男の人、嫌いだもん!」

「でも、赤ちゃんは好きでしょう?」

「赤ちゃんは、好きだよ!でも、陽織、赤ちゃんが1人じゃ産めないことくらい、知ってるよ!」

「だから、陽織は結婚して。」

「だから、絶対結婚なんかしない!」


その日は何を言っても、この繰り返しだった。


ただ陽香も、黎人も、高樹も、鷹人のことが可哀想だから、どうにか陽織を元に戻したかった。


「お願い、陽織。赤ちゃんが、鷹人が泣いてるんだよ。ママって、陽織のこと、呼んでるよ。」

「だから、そんな子、知らない!」

流石に陽香も陽織を叩きたくなった。でも、ここで叩いても、何も良くならない。

それ以前に陽織は、訳がわからず、ただ泣いている。


黎人は、その日家に戻ると、美咲と蓮也に陽織のことを話した。

とにかく、黎人はもちろん、鷹人のことも覚えていない。知らない、と言う。


「そんな‥。」

美咲は、鷹人の顔を見て、真っ青になった。

「お母さんが、自分の子どもを、忘れちゃう、なんて。」

「知らないって、男の人は嫌いだから、結婚も、赤ちゃんもありえないって。」


両親だけでなく、帰宅した湊人も、聞いていた。

「忘れてた。最近は誰とでも頑張って話してるから、もう平気だって。

本当は僕以外の男の人が、ちょっと触れるだけでも、怯えることがあって。

たぶん、湊人たちは、同級生だから、大人の男性っていう意識、あんまりなかったんだ。

陽織は、極端に男性恐怖症だったのに、あんな奴らに!」

黎人は鷹人を抱きしめながら、唇を噛み締める。


「ごめんね、鷹人。ママいま、ちょっとだけ、病気になっちゃったんだ。」



神鬼に陽織の記憶のことを相談すると、神鬼の顔が強張った。

「今回も、陽織の記憶をなんとかできないんですか?」

黎人が聞くと、隣に座る高樹が同じように強張る。


「おそらく、今までに何度か陽織の記憶をいじったのが、今回の引き金になってるのかも、しれない。」

   何度か?

「あの、アレだけじゃないんですか?」


2人はしばらく、黙っていた。


「今回が、初めてじゃないんだ。」

え?

「陽織が、その、男性恐怖症って。」

黎人は、聞いたことがあった。


『黎人さん以外の、男の人、気持ち、悪い。』

高校生になって、何度か依頼を受けてる時に話してくれた。悠人や大神のことすら、少し、警戒していた。でも、理由はわからないと言っていた。


「始めは、小学生の頃でしたね。」

神鬼が複雑な顔をした。

「学校へ行ったはずが、無断欠席で、リンクにもいなくて。警察が、その、裸にされて泣いている陽織を、見つけてくれて。あの、見た目、だから。捕まった犯人から、どうもストーカーされてたのではないか、と警察から聞かされた。本人は全く気づいてなかったみたいで。」

「え、と、か、身体は?」

「ずっと見えなくても、白兎様を付けてたから、それ以上のことは。」


小学生。

黎人は真っ青になる。


「同じようなことが、中学の時もあった。」

「その度に、陽織さんの記憶を、消したんです。」


「高校生になってからは、いつも誰かと一緒だったから。でも、新聞記者に捕まったって聞いた時は、また!と、本当に、どうしたら良いのか、って。

神代が助けてくれた時は、本当にホッとした。

黎人くんが、たくさんのお守りをつけてくれた時、心から安心できた。」


だから、これ以上のことをすると、逆に陽織が全て思い出す可能性の方が高い、と言うことだった。


その翌朝、陽織は目を覚ますと陽香に

「夜中に、赤ちゃんが泣いていた。」

と言った。














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。