陽織、パーティーデビュー(子育て編)
100周年?
陽織はその言葉にびっくりする。
神代グループ生誕100周年と言うことで、3月に大々的なパーティーが開かれる。確かに100周年なら当然だ。すごい!
ただ、唯一の不安は、それに陽織はもちろん出席しなければいけない、と言うこと。
鷹人は6ヶ月になるがまだまだ手がかかる。しかも最近ハイハイを始めて、目が離せない。
しかも、それを知らされたのはまだ鷹人が2ヶ月の11月のことだった。黎人の隣でまた挨拶をしまくらなければならない。披露宴の恐怖再び?!?
とりあえず、美咲は自分の着物を引っ張り出して、陽織に合うものをさがすが、どうも気に食わないらしい。これも過去振袖の時にあったデジャブ。
陽織は鷹人を抱っこしたまま、美咲の着せ替え人形にされ、結局、お気に召した工房の職人を呼び寄せ、陽織の色留袖を作ることにした。
訪問者?付け下げ?色留袖?
どう、違うの?
毎度のことになると、陽織は考えるのをやめて、美咲の言うことを大人しく聞く。
そして3月。陽織が19歳になって間も無く、そのパーティーの日はやって来た。
ホテルは昨年、散々お世話になった都内の一流ホテル。色々とお世話になった人の中には、黎人と陽織のことを、覚えていた人もいた。
今回は会場に鷹人用のベビーベッドが用意されたが、大人しく中に入ってくれるなんて、期待できない。
陽織は始まる前から不安いっぱいで、とりあえずお腹いっぱいにした鷹人を母の陽香に託した。
今回は外国の取引先、各国の大使。各企業の取引先。全国屈指の病院の事務長や院長、ドラッグストア会社の社長も呼ばれている。
つまり、陽織の父や宏輝の父も招かれていた。
他にも、メディア大手、天神の社長を勤める梓沙の父、食品大手の社長である美織の父の姿もあった。
神代は製薬会社がメイン。しかし、実際には貿易や金融、スポーツ、文化などさまざまな分野にも出資していた。それだけでない。世界には、神代の息がかかったモノはたくさんある。
黎人と蓮也の挨拶と乾杯の後、陽織は黎人の隣に並び挨拶をする。3回目の披露宴以来の人もいて、陽織にも色々話しかけてくれた。
1時間ほど過ぎた頃、陽香が慌てて陽織を手招きしていた。鷹人が起きてぐずっているらしい。
陽織は周りの人に、外すことの礼をし、鷹人の元へ急いだ。その様子を見ていた客の1人が
「もしかして、黎人くんのお子さん?」
と聞いて来た。
黎人は恥ずかしそうに
「はい。」
と答えると、周りの人から、ぜひ見たいと言われ、陽織に連絡を入れる。
陽織はとりあえず、鷹人のおむつを変えて母乳を飲ませ、綺麗にした後、黎人から連絡があった。
''みんなに紹介する“
?たぶん子どものことだろう、と思い、抱っこしたまま会場に戻った。
会場に戻ると、
「なんだ、最初から見せてくれればいいのに。」
と、皆が口々に言う。
「そうだよ。せっかくの6代目だろう?」
6代目?
「お、元気そうだなー、男の子か?」
「黎人くん、そっくりじゃないか!」
「神代は安泰だなー。ちゃんと男の子がいて。」
男の子‥。
「いくら男女平等の世の中になっても、この世界は、やっぱり女性が生き抜くのは難しい。蓮也さんもだけど、黎人くんも男の子がいれば、そう言う心配をしなくていいって言うことだよ。」
そう言って、皆、少し離れた場所で談笑する梓沙の父をチラリと見た。
陽織はわかるような気がした。以前京都であった紗香。そして、高嶺の巫女の梓沙。どちらも一人娘だ。
紗香は一人娘というだけで、難しいモノを抱えていた。
鷹人が黎人の方に手を伸ばしたので、陽織から受け取り抱っこをした。黎人が抱くと、鷹人は何が楽しいのか、キャッキャと笑い出した。
たぶん、目線が高くなるのが嬉しいのだろう。
そのまま、鷹人が黎人の胸におでこをつけてムニムニすると、黎人はものすごく幸せそうに笑った。
(うわっ、陽織そっくり!)
その顔が珍しかったのか、周りからどっと湧くような声が上がった。
その後も、鷹人は黎人に抱かれたまま、ずっとご機嫌だった。陽織が手を出しても、戻ろうとしない。
もうすぐお開きになる。
たぶん、最後にも挨拶があるはず。
そう思ったが、黎人も何故か嬉しそうに、あちらこちらに行って、鷹人を見せて歩いていた。
陽織はいつ泣かれてもいいように、チョコチョコ後ろをくっついて行くが、コンパスが違い過ぎて、時々追いつけない。
「たっくん、パパご挨拶があるから、ママの方に戻りましょ。」
と陽織が声をかけたが、黎人も大丈夫と言って、そのままにしていた。
んもうー!
しかも、最後の挨拶を抱いたまま始めてしまった。
マイクに興味を持った鷹人が、涎まみれの手で、マイクを掴み振り回す。黎人は楽しそうにしているが、見ている方は、気が気ではない。
慌てて、ハンカチを差し出して、また鷹人に手を差し出したが、プイッと拒否された。
なんでー?
もう、ママは気が気じゃないから、
とにかく戻って来てー!
2時間のパーティが終わる頃、鷹人は黎人の胸でスヤスヤと眠り始めている。
やっとこれで受け取れる。と思ったのに、何故か黎人が、いたずらっ子のように、しっ、と唇に人差し指を立てた。
そのまま寝せてあげたいというのか?
でも、黎人はもちろん、陽織もお客様の見送りがある。
会場から出る様々な人が、黎人の腕の中で眠る鷹人を覗こうとするが、一向に起きない。
大した大物だ。
帰る人は、黎人だけでなく陽織にも挨拶してくれる。
宏輝の父や、美織の父も。
「陽織さん、宏輝のこともよろしくね。」
と、宏樹の父が。
いえいえ、わたしの方が世話になってます。
「陽織さん、また遊びに来てね。」
と、美織の父も。
最後に
「陽織、いい加減に黎人くんに迷惑をかけるのは、やめなさい!」
と、父に怒られた!




