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陽織、一カ月検診(子育て編)

10月のはじめ、鷹人の初めての検診。

午前中は陽織が産後の検診で婦人科に、お昼を挟んで、午後は小児科で一歳までの乳児の検診だ。


ここで生まれた乳児は、1ヶ月、3ヶ月、半年、一歳と、4回の検診を受けることができた。


本当なら黎人と来るはずだったが、色々あって陽織の両隣には陽香と美咲がいた。

「美咲ばかりずるい!」

と言った陽香もついて来た。


今日の陽織は秋に合わせて、ダスティピンクの前あきワンピースに、レンガ色のカーデガン、白い靴下に、ダスティピンクの靴を履いている。

その両隣にはまだ40代前半の2人の母が座っていた。

3人が並んでいると、一体誰が母親なのか、わからない人もいた。


今、鷹人は陽香に抱っこされて、すやすや眠っている。

その時、

「陽織様?」

と言う声が聞こえた。絵梨花だった。

「お姉様!」

陽織は、トコトコ絵梨花のそばに近寄って行く。

絵梨花は3ヶ月になる息子、将人を抱いている。

「うわー、初めましてですね!可愛い!」

と陽織は将人を覗き込んだ。


「陽織様は1ヶ月ですか?」

はい、と陽織は元気に答えた。

「あの、黎人さんが、その、すみません。ご迷惑をかけて。」

陽織は絵梨花に頭を下げるが、絵梨花は主人は仕事のことは家では話さないから、と優しく言ってくれた。

むしろ、1ヶ月休みを貰えて助かったと。

陽織は楽しくて、つい絵梨花に色々と聞いていた。

しかしその時、絵梨花の後方に、将人と同じ3ヶ月にしては小さな赤ちゃんを抱く母親の姿があった。子どもの周りには黒い影がある。

陽織の顔が強張る。

「陽織様!こちらを見てください!

様子に気づいた絵梨花が、陽織の腕を掴んでキツく言い放つ。


陽織なら、アレを祓うことは造作もない。

しかし、たとえ今祓ったとしても、またあの影は子どものところにつくだろう。


少し離れたところにいた、母2人も気づいたのか、陽織を呼んだ。陽織は、絵梨花に失礼します。と頭を下げて、母たちのところに戻った。

たぶん、あの赤ちゃんは長くない。

生まれつきの病気なのだろう。


いくら外側に結界を張っても、中にいる人までは防げない。陽織自身お守りはあるが、攻撃して来ないものには効果は、なかった。


母2人の間に挟まれると、陽織はホッとする。陽香は美咲に鷹人を預けると、陽織の腕をギュッと握った。

まだ、心臓はドキドキしているが、少しずつ落ち着いて来た。

2人とも元巫女だ。陽織よりも、そう言ったことは、ベテランの大先輩。

「陽織は小さい頃から、視ない訓練、受けて来なかったから。」

と陽香が言う。


「小児科は、どうしても多いわよね。子どもの命なんだもの。親の方も、やっぱりネガティブになりやすいし、どうしてもマイナスの空気になるし。」

午前中も、お産をしたものの、死産で生まれた赤ちゃんの霊が見えてしまい、陽織はギョッとした。


鷹人は健康そのもの、身長も体重も、充分に育っていた。逆に陽織がまた痩せ始めて、心配されてしまった。

「母乳はお母さんの身体全部を使ってあげてるんです。しっかり食べましょう。」

と言われた。


検診が終わり、帰宅する時、陽香が今日は夕飯が1人、と言う話になった。美咲はそんな陽香を黎人の家に誘って、3人で夕飯を取ることにした。

「どうせ、ウチもみんな遅いし。」

と言う美咲の案で。


陽織は帰宅すると、鷹人をお風呂に入れて、夕飯の支度をする。その間は2人の母が見ている。

「今日は、何にするの?」

と美咲に聞かれたので、

「今夜は肉じゃがと、小松菜の辛子和え、油揚げと大根のお味噌汁です。簡単なものですみません。」

と答えた。


黎人はどんなにおそくても、夕飯を家で取るので、ちゃんと4人分作る。


その日の朝、黎人が会社に行くと、社員のタブレットに、会長から一斉配信があった。

先日の騒ぎの黎人への処分だった。

“一ヶ月の減給(無給)、賞与5割減“

社員の中には、兄弟喧嘩で処分なんて、と驚いた者もいた。しかし、黎人にしてみたらこれで済んで良かったと、ホッとしたくらいだった。


最悪解任、左遷も考えた。しかし父は逆にわずか半年で自分が指名した社長を解任したら、会長そのものの信用にも関わってしまう。

それを考えての処分だった。


少しだけ落ち込んだ黎人だったが、帰宅したところ、陽織から聞いた言葉で、舞い上がってしまった。

「解禁?本当に?」

もう、そのまま万歳をしそうな勢いだった。


夕飯を食べると風呂に入り、そのまま陽織を抱き上げる。半年以上ぶり。出会ってから、これだけの間陽織を抱かずにいたことはなかった。


もちろん、手を繋いだり、キスはしていたけど。

でもそれ以上のことは、本当に久しぶりだ。

今までは抱きしめても、素肌に触れる程度だった。


「陽織分をやっと補給できる!」


しかし、それも束の間、鷹人が泣く。

「仕方ない。」

と黎人は笑いながら、2人のベッドの脇に置いてある、ベビーベッドから鷹人を抱き上げた。


陽織は、鷹人に母乳をあげている。

可愛い!陽織は今までもすっごく可愛かった!

母親になった陽織は、前よりもちょっと色気も出て、さらに可愛くなった。


鷹人を抱いて母乳を飲ませている陽織を、後ろから抱きしめた。








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