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陽織、ズレてる?(新婚編)

明日から大型連休になる、金曜日の夜。

陽織は明日、やっと退院して黎人との愛の巣に帰ってくる。


その夜、神代家のリビングで2組の夫婦がお酒を片手に話をしていた。

先日、黎人から聞かされたこと、これまでのこと、2組の息子と娘の話を。


「それにしても、陽織ちゃんって、色々ズレてるわよねー。」

いきなり美咲が言うので、母親の立場として陽香はムッとした。

「以前ね、悠人が陽織ちゃんから面白い相談を受けたんだって。その、自分たちはそんなにイチャイチャして見えるのか?って。」

高樹は思わず、口にしていたビールをふきだしそになる。


「それで分かったのは、陽織ちゃんて、海外生活が長かったんでしょ?周りの人は、親しい人や恋人、夫婦って、ところ構わずハグやキスするじゃない。陽織ちゃんにとって、キスとかハグは、普通のことだと思ってたらしいの。ところかまわず、人目も気にせず!」


美咲に言われて、陽香は色々思い当たった。


そう言えば、中学のころ、陽織がスケートの大会後、キスandクライと呼ばれる、得点を見る席で、よく投げキッスをしている姿が、可愛いと、動画で話題になったことがあった。


それが、通っていた中学から自重して欲しいと、注意を受けたこともある。

さらに、それが原因かと思われる、ストーカー被害もあった。

でも、本人は意外とケロッとしていた。


そうかと思うと、知らない男性がちょっと触れただけでも、泣き出して大騒ぎした。

バスや電車になど、一人で乗せられなかった。


とにかく、スケートのコーチや栄養士、振付師、衣装は全て女性で固めていた。

インタビュアーも、男性だと露骨に嫌な顔をするので、女性が、というのは、当時有名な話だった。


「その上、黎人はなにせ陽織ちゃんを15年も待ってたから、とにかく大事で、可愛くて、愛しくて、自分の中に閉じ込めておきたいくらいなのよ。もう、新年会の後、酔って帰ってきた後、弟2人に、あんまりにも惚気話を延々するから、最後は口塞がれて、二階の元の自分の部屋に放り投げられてたわ。」

アハハと、美咲は遠い目をしながら言った。

コレは、他にも何かあったな!


「まあ、あの子も、高校の時は色々遊んでたけど、ある意味、子どもで世間知らずで、箱入りなのよ。」

美咲の言葉に、蓮也もはあー、とため息を吐く。

「陽織も、そう言われると、本当に、黎人さん以外知らないから。」

陽香の言葉に

「黎人くんに教えてもらったことが、たぶん陽織の全て、なんだと思う。おそらく、他の人とデートなんて、したことないだろうから。」

高樹も付け加えた。

「それ以前に、陽織はたぶん黎人さんが初恋よ。」

それを聞いた蓮也と美咲が頭を抱えた。


「もう、あの子ったら、本当!陽織ちゃんとのデートって、必ず最後は、たぶん、ベッドの中だったんだわ!」

と美咲はちょっと怒りと恥ずかしさで、顔を赤くしていた。


「だから、きっと陽織ちゃんにとって、好きな人とキスをするのは当たり前、最後はベッドで、も当たり前、になってたのよねー。本当に申し訳ない。」

確かに、年齢的にズレているから、どうしても学校の帰りに、といったことはなかっただろう。

しかも、結婚前と言ったら、2人が会うのは、事情が事情なだけに、大半は除霊などの仕事がらみだ。


仲良く手を繋いで、公園を歩く、とか、映画を見る、という頻度よりも、二人仲良く手を繋いで、心霊現象の案件のなか、だ。そして必ず、陽織は最後全開で力使って意識を失う。


それは、確かにズレる。


「それだけじゃないのよねー。」

美咲は、いつも家にいたせいか、2人のことを色々知っていた。

「黎人って、お酒弱くて、酔うと必ず、陽織ちゃんの話をするの。するのはいいのよ。」

黎人が二十歳になった時、ちょうど陽織と出会い、結婚の約束をし、一番気心がしれたころだ。


お酒を飲み始めた時には、もう陽織の存在が、黎人の中でかなり大きく締めていたのだろう。


「ただ惚気だけなら、いいの。ただ、ちょっと、その、困ったことも口にしちゃって。その、なんか、サイン?」

「サイン?」

「くせって言うの?」

「くせって、陽織の?」

陽香と高樹が顔を見合わせる。


くせ?くせ?泣くことくらいしか。

あ、下向いて唇噛んでることも。


「陽織ちゃんの甘える時のくせ、知ってた?」

「?泣いて、しがみつく、くらいしか。」

「いつも、そうよね?」

「詳しくは、わたしからは言えないけど、その本人のプライバシーっていうか。」

美咲が言葉を濁すと、陽香がずるい!と怒る。

「ウチの娘のことよ!」

「んもー!内緒よ!なんか、甘えたい時は、黎人の胸に頭とかおでこをクリクリってすり寄せるんだって。それが、可愛いんだって!」


それを聞いて、2人は顔を見合わせた。

そんな陽織を見たことがない。


「ほかにも、触って欲しい時とか、キスして欲しい時とか、その、挿れて欲しい、とき、とか?」

最後のには、流石に顔色が変わる。


美咲も、蓮也も真っ赤だ。

聞いてよかったのか?

本当に、そんなこと!


「はじめはね、真面目な話ししてたのよ。ほら、陽織ちゃんが1月からここに住むって決まった時。それを聞いた義父が、それなら卒業と結婚祝いに、自分が退任して、主人に会長、黎人に社長の座を譲るって決めたの。それで、ね、主人と2人で、飲みながら仕事の話、してたのよね?」


蓮也が、あー、と思い出しながらうなづいた。


「まあ、黎人もかなり気分が良かったんでしょうね。で、主人がポロッと陽織ちゃんは、可愛いなー。って、言ったところから始まっちゃって。」


相当飲んではいたが、仕事のことを、という緊張感が、その言葉で一気に飛んでしまったとか。

はじめは、可愛い、可愛い、と惚気を散々言っていた。

陽織の手が可愛い!

陽織が振り向く姿が可愛い!

陽織が「黎人さん」て、呼ぶ声が可愛い!

もう、可愛くて、他の男に見られたくない!

ほんとうは披露宴もやりたくないけど、でも、自慢もしたい!


「て、さっきの話。もう、最後はこっちが困ったわよ!本人は酔って言った話、全然覚えてないし!」

もう!と、美咲が膨れた。

「一番困るのは、外で飲んだ時よ!」


あ、確かに。


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