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陽織、助けを呼ぶ

目の前は暗闇。遠くから、知らない音や声。

そして足元にはたくさんの骨?

骸骨もあった。

怖い怖い怖い!

助けて、お兄様っ父様!ママ!

誰か助けて!ハク!ハク!

だ、れ、か!

誰か助けて!

叫ぶ声がする。女の子の声。男の子の声も聞こえる。

熱いよー!苦しい!咳き込む声や叫びも。

大人の人の姿も見えた。女の人?でも服がボロボロで、顔が‥。

わたしの方に腕伸ばしてくる、でも!

ごめんね、ごめんなさい。わたしは助けられない!

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!

なんで顔っ溶けてるの?子どもも、なんか変な匂い。腕も、嫌、嫌だーっ!

誰かっ、助けて助けて助けて!


目を開けると、美織の顔がある。

美織の隣には翔太が座っていた。

陽織は黒く焦げたような木の根元に背をもたれるようにして眠っていた。


うっ。気もっち悪っ。

「大丈夫か?」

翔太の声で、少し離れた場所にいた湊人と宏輝も駆け寄って来た。

「顔、溶けてた。熱い。子どもが、助けてって。」

3人が顔を見合わせる。

「やっぱ、火事だ、な。」

火事?陽織はゆっくりと顔をあげた。何を言ってるの?

「おそらく、何年か前に近くの保育園であった火事の被害者だ。」

「あれって、放火、だったよね。」

「保育士と子どもたちが大勢亡くなっている。」

やだ、どうしてみんな冷静なの?

頭、痛い!気持ち、悪い!

美織がハンカチでわたしの目を抑えている?冷たい。たぶん誰かの氷の術?


「これ以上熱くなったら、俺たちもやばい。」

翔太が頑張って、手のひらから何度も何度も氷を出す。5月とは思えない熱に晒されて、全員が汗だくになっている。翔太の氷も、少しずつ粒が小さくなっていく。

「クッソ、原因はわかった、のに。」

翔太が倒れた。力の使いすぎだ。

湊人と宏輝が翔太を支える。

美織の様子もおかしい。目を閉じたままだ。


陽織はぼんやりとしながら、氷氷氷、と頭の中で繰り返した。

陽織がずっと好きだった氷。

氷の上。氷をブレードが切るように進む。

エッジが氷を捉える。


すると、あの日。誕生日の日。初めて出したように、氷の粒が散り始めた。

5人の周りが少しずつ涼しくなる。氷の柱が立ち熱を抑える。

美織がうっすら目を開けた。

汗も少しだけ引いていく。

(今のうちに出口を。)

湊人は必死に目を飛ばして出口を探した。

しかしどこまで行っても、赤黒く続く景色しか見えない。


でも、あっという間に、一本、二本、と氷が溶け始めた。もうダメ、だ。

「助け、て。」


神明神社では、2人の青年が社務所で弟たちの到着を待っていた。

「遅いなー、湊人。」

「今出るって、連絡あったの1時前だよね。」

もう2時を回っている。

学校から神社まで、どんなにゆっくり歩いても20分もかからない。

1時間以上経っているのは、おかしい。


駅に戻った羽織と葉鳥は、大神の他に2人の先生を連れていた。いつも土曜日の授業で指導してくれている、術が使える先生たちだ。

日本史と土曜日担当の、山神。生物と土曜日担当の神林だ。

神林は何かを取り出して橋の上に降りかかる。

すると、鈴奈たちの目の前にどす黒いモヤのようなものが現れた。

「結構、でかいな。」


弟たちの到着の遅さに、黎人と悠人は立ち上がった。その時、黎人の頭に誰かの声が聞こえてきた。

「助け、て。」

黎人は声に引き寄せられるように走り出す。

「黎人?」

「こっちだ!」








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