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陽織、涙の新婚生活(新婚編)

お風呂の中で、互いに謝って仲直りをする。

そのあと、明日からの予定を確認して、やっと初めての夜を迎えた。


翌日からは、以前プレ新婚さんごっこの時と同じように、朝起きて朝食を作り、黎人を見送ったら、掃除、洗濯。

大学の入学式までの間は、美咲と一緒に披露宴に来てくれたお客様に、お礼の手紙を書いたり、実際にお茶会などでお会いして、改めてお礼をする。

そうやって、陽織は顔つなぎをするのも大切だと、美咲から言われた。


一方黎人は、車から降りて会社の玄関を入った途端、固まった。

本社の社屋は、大小様々な花かご、フラワーアレンジ、花が生けられ、花だらけだった。しかも、すれ違う社員がとにかく、ニコニコしながら

「おめでとうございます。」

と、祝いの言葉を投げかける。


社長室の扉を開けて、机に向かうと、社内報の号外が置いてあった。その一面を見た途端、顔が青くなる。

『祝!ご成婚!』と言う見出しの下、限界寸前の陽織に口付けした時の写真がドアップに、なっていた。


「神柴、広報室長を。」

そう一言言って、社報をくしゃっと握り潰した。


陽織は3年前にパパラッチ被害にあっている。今でもその傷は癒えてない。マギーとジェフからも、以前ストーカー紛いのファンがいた話も聞かされた。

とにかく、陽織の素性が知られるのは、絶対に避けたい!あの時会社にいた重鎮なら、おそらく父から揉み消しの手伝いをさせられて、知っているはずだ。


始業前だと言うのに、黎人の呼び出しに答えた広報室長の八神がすぐに飛んできた。

「申し訳ありません!花嫁様のお顔がはっきり写っていない写真を選び、社員にレイアウトはまかせたのですが。その、陽織様のお顔が写っていない写真を持つ者が少なくて。」

「それなら、式場内の料理や、花でも写せば良かっただろう。」

と黎人が睨め付けたが、流石にそんなモノを撮っていた人もいなかったようだ。

八神が縮こまっている。

「後ろ姿とか、あっただろう。」

と言うと、

「あるにはあるのですが、その、そちらの方が。」

と言葉を濁す。

??

八神から、全ての写真を回収して見せてもらうと、陽織の後ろ姿は、カラードレスのものが多く、しかも倒れる寸前だったのて、黎人がほとんど腰に手を回して支えている。


しかも、ベアトップのドレスの背中は、はっきり言って、かなり際どい。ほぼ陽織の背中は、細くて綺麗な素肌が丸見え状態だ。こんな姿を衆人の目に晒していたなんて!


その途端、黎人は頭を抱えた!

そうだ、当初は陽織の長い髪で、背中が半分は隠れるようになっていた。

しかし、人形供養の事件で、陽織の髪は肩下くらいまでになり、しかも、今回その髪をアップにと、変更していた。


「わかった。」

と、黎人は一言言って八神を下がらせた。

陽織の髪が短くなったのだって、今でも自分に責任がある、と感じている。


昨日、黎人がいない間、社内は宴の写真を持つ部長クラス以上の者が、社員にねだられて見せていた。

   撮影禁止にすれば良かった!


黎人が毎日忙しく働く間、陽織は彩奈から声がかかり、簡単な依頼に連れて行かれることもあった。


3月も半ばになると、桜の花が咲き始めて、陽織は初めて美咲が主催のお茶会に出席した。

出席された方はご本人、またはご主人が披露宴に来てくださった取引先の方ばかり。


あの時はドレスだったが、今日は初めて訪問着を着て、美咲の隣に立つ。

緊張の中、お淑やかに、お淑やかに、と始終自制し、とにかく疲れた。


朝起きて、ご飯作って、いってらっしゃいをして、掃除をして、洗濯をして、夕飯を作って、夜は黎人の要望に答えて。

そんな毎日が続いた。


しかし、挙式から三週間がすぎた日曜日の朝。

いつもなら、早く起きて朝食の支度をしている陽織が、隣に寝ている。

「陽織?おはよう。」

と声をかけると、

「あ、寝坊した。」

と言って、立ち上がろうとした。

途端に、ベッドに崩れ落ちた。

?

「ごめん、なさい。ちょっと、貧血?」

そういえば、赤ちゃんができたかも、と陽織が言ったきり、色々あって忙しくて、忘れていた。

「病院、まだ行ってないよね?」

と確認すると、

「ん、黎人さんと、一緒が良い。病気じや、ないし。」

と笑った。

確かに病気ではないが、また痩せてきたのでは?と抱くたびに、思ってはいた。

慣れない生活かな?と、思っていたのだが。

と、陽織が突然トイレに駆け込み、嘔吐している様子がわかった。苦しいのか、泣きながら。

もしかしたら。


とにかく、美咲を呼ぷ。

母は飛んでくると、陽織をベットに寝かせた。

「そういえば、ここのところ、気分悪そうだったよね。あまり食べられなかったし、悪阻、始まったのかな。」

母は呑気そうだが、陽織は辛そうだ。

吐きながら泣いている。

だいたい、知っていたのなら、教えてほしい!

そう言うと、一緒にいる自分の方が、なぜ気づかなかった、と怒られた。


「今日は日曜日だし、とりあえず、食べられないようなら、スポーツドリンクか、経口補水液を飲んでおこうか。」

と美咲が言う。陽織はどちらも嫌いなので、モロに嫌な顔をした。

「仕方ないでしよ!そのままじや、赤ちゃんが死んじゃうよ!」

と言われて、渋々経口補水液を口にした。


それでも、数分経つと、全部、戻してしまう。

美咲が食べられそうなものや、陽織が好きなものを作って持ってくる。

食べても、また、すぐに戻す。

そして泣く。

その日は一日中、それを繰り返していた。


その後も、黎人がやっと休みが取れて、一緒に病院へ行ける日まで、それが続いた。








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