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陽織、長い1日(新婚編)

いよいよ2人の長い長い結婚式の1日です。

朝5時、陽織たちは神社専用の美容室に連れて行かれ、花嫁衣装を着せられ、化粧をし、綿帽子を被された。


8時になると、両親が来た。

父が今にも泣きそうな顔をしているのに、気づいた。

「3年前。陽織の封印を、解かなければ。」

と、ポツリと呟いた。

陽織は、顔を上げて

「違うよ、父様。わたしは、神様の花嫁になるんじゃないよ。黎人さんの、花嫁になるんだよ!」

と、笑った。

陽織の目には、もう涙が溢れていた。

「大丈夫だよ。父様、母様、わたしはちゃんと、黎人さんと、幸せに、なる、から。」

涙てお化粧が、と美容師に言われて、目元をなおされている。


朝9時、神明神社の大鳥居に白無垢姿の花嫁と、白い紋付袴姿の花婿が現れた。神殿に入らない、一般の礼拝客が、その姿にため息を吐く。

少し緊張している陽織の手を、黎人がギュッと握る。

すると、ずっと俯いていた陽織が、ちょっと顔を上げて笑った。

花婿の後ろを花嫁が歩く。


そして神殿に入り、いよいよ神前での挙式が始まった。黎人の祖父が、斎主を務める。

2人が神殿に入ると、一気に神聖な空気が、神社全域に流れた。

神様とその花嫁の挙式。鳥居の中にいる、普通の人でさえ、他とは違う清らかな空気に、圧倒されていた。


11時、十神家の披露宴が始まった。

各家の当主や代理が並ぶ席とは別に、和嶺と美織、湊人と千織、と必ず巫女同伴の席を設けた。

その他の席に、羽織、神林、三神、大神が座る。このメンバーは、次の友人関係にも出席する。

「ウチも3人目が夏に生まれるから、忙しいよー。」

と大神と神林が話している。

「へえ、先生の奥様、陽織とママ友になれますね!」

と羽織は口が滑ってしまった!

「はあ?陽織、子どもいんのか!?」

しまった!

「いえ、まだ、確証では。」

まずいまずいまずい!


14時。次の披露宴までの間に役所へ行き、婚姻届を出す。忙しすぎるが、昨日はまだ17歳だったから。

役所の人も、誕生日に婚姻届を出す2人に驚いていた。


黎人はとにかく、時間が許す限り陽織を座らせた。立ちっぱなしは良くない。昨日、散々両親から注意されたから。


15時、白いエンパイアスタイルのドレスを着る陽織を、白いタキシード姿の黎人がエスコートし、会場に入ってきた。

友人関係なので、一番気楽で楽しい披露宴だ。


陽織は高校3年間を共にした仲間9人グループ、3人の親友、そしてお世話になった先生と写真を撮った。

黎人も同じように、大学や高校からの友人たちと、写真を撮ったり、お酒を飲まされたりしていた。


さらにこの中に、2人は彩奈たちも呼んでいた。いつも仕事でお世話になる、術者の人たち。


一番気楽な友人知人だが、悪ふざけもしたがる。とくにいつもの男子グループ!

「陽織ー!黎兄との、いつものイチャイチャないのかーッ!?」

湊人たちが叫び、黎人がそれに答えて、キスを何回もしてくる。


うおー!と盛り上がり、黎人の友人たちもパシャパシャ、写メを撮る。


マギーと、ジェフも、子ども2人を連れてきてくれた。陽織は初めて、黎人に2人を紹介した。

自分のもう一つの家族。

そして、エリサとマイクから、花束をもらい、陽織は嬉しくて泣いてしまった。


途中、薄いピンクのドレスに変えて、黒いタキシードの黎人に手を引かれる。

2人で大神のところへ行くと、

「お前ら、贅沢だなー。」

と呆れられた。

「絶対、黎人の給料、俺の10倍以上だよなー。」

と、白い目で。

「先生、僕たちの子が入学するまでに、校長くらいになってくださいね。」

と黎人が言うと、

「はあ?15年後なんて、まだ何とか主任くらいだ!」

と返された。でも、担任だけは、絶対嫌だ!と。

「あ、でも、黎人呼び出すのは、楽しいかも。」

と、不吉なことも、添えて。


17時に新郎新婦退場で、2回目の披露宴がお開きになる。陽織は、結構足が痛い。

「陽織、座って。お腹は大丈夫?辛くない?」

黎人は何回も、陽織に聞く。

黎人も、朝からお酒を飲まされすぎて、ちょっと辛そう。

「ほら、陽織、何か食べて!」

白のイブニングスタイルのウエディングドレスに着替えながら、母が陽織の口にサンドイッチを押し込んだ。アイスティーも一緒に。

美容師が、髪型をアップにする。


美織たちはここでさよならだ。

美織、千織、羽織の3人はもちろん、2回の披露宴に出た人は、もうお疲れ様解散をしている。


「あと、一回‥‥‥。」

陽織の目がちょっと虚になりかける。

「陽織、次は僕だけで。」

と、黎人は言いかけたが、そういうわけにはいかない。

花嫁ないない披露宴なんて、どんな羞恥プレイだ!


18時。

夜の披露宴。会場には、神代グループをはじめ、取引先大手の重鎮や社員たちが招かれていた。

とにかく、陽織を座らせなければ。

黎人の頭は、それが最優先だった。


現在、19時。

白いドレスからカラードレスに着替えた陽織は、黒いタキシード姿の黎人に連れられて、あちらこちらに挨拶をする。

額には汗が浮かびはじめ、立っているのも、正直辛い。でも、予備校に行ってた頃と比べれば!と、斜め上の比較対象を考え踏ん張る。

まだ、7時!

「予備校なら、あと1時間は授業がある!」


その時

「社長、花嫁様が。」

と、神柴が黎人に耳打ちした。

「陽織、少し、休む?」

黎人が聞いてきた。

「ん、大丈夫。予備校にくらべれ、ば。」

と陽織は答えた。

正直、体力も、精神力も、霊力もヘロヘロだ。

すると、

!!?

突然、黎人が陽織に長く激しい口付けをしてきた。

(あ、精神力と霊力が。)

陽織は目を閉じて、とりあえず、意識だけは手放さないようにした。気持ちが落ち着く。

  このままじゃ、寝ちゃう!


その様子に、周りが、うおーッ、と盛り上がった。

(そっか、今日は結婚式だから、どんなにイチャイチャしてもいいんだ。)

そう思ったら、少し気が楽になった。


会社関係は、あまりイチャイチャできないかも、そう思って、特に緊張していた。

それに気づいて陽織は目を開けると、笑って、黎人に甘えるように寄りかかった。

先ほどまでは、普通に腕を組んで歩いたが、黎人は陽織を背中から抱きしめるように、リードする形に変えた。

「寄りかかって、良いからね。」

黎人は優しく笑った。


「え?見た?今の!」

「な、あの社長が!」

「絶対、今の顔は写メしとくんだったー!、超レアで、女子社員に自慢できた!」

「おれ、キスシーン、撮ったぞ!」


夜8時、新郎新婦退場で、やっとお開きになる。

2人は招待客を見送り終わると、陽織は意識を手放した。

「陽織!」

「陽織!」

「陽織ちゃん!」

客と話していた黎人よりも、湊人の方が早く陽織を受け止める。


うっすら目を開けた陽織が

「湊人。」

と、呟く。と神代三兄弟全員の顔が強張った。

なぜ花嫁が花婿以外の男の名を!?


「英語のノート、見せてあげる。」

そう言うと、陽織は、本格的に気を失った。


「はあ?なんで、俺がお前のノート借りるんだよ!俺だって、満点だったんだからな!」

陽織を湊人が落とそうとしたのを、黎人が受け止めた。

「あ、そういえば、予備校がどうとか言っていた。」


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