陽織、帰京する
その日の夜、やはり紗奈は石橋の前に現れた。
石橋はただ恐ろしくて、当時の様子をベラベラ話す。
それを神嶋と地元警察官は、ずっと隠しマイクから拾って聞き取っていた。
隠しマイクは、白龍が忍び込んで仕掛けた。
しかし、その証拠はなく、たまたま容疑者として浮かび上がった青年の家を張っていた、と言うことにしていた。しかし、下手すると裁判に負けるのでは?
地元の警察官はこんなことして良いのか?と思ったが、神嶋に合法的に捉えないと、紗奈の亡霊に殺されかねないと言われて、渋々従った。
石橋誠の供述が取れると、警察は一気に家に押し入った。と、同時に黎人と悠人が紗奈の霊の前に立ちはだかる。
紗奈は石橋への恨みを晴らせない状況に怒り、警察官にも攻撃しようとしていた。
「うわっ、恨み辛み、半端ないね!」
悠人が呑気に警察官の前に結界を張る。
「紗奈さん!気持ちはわかりますが、それではあなたが浮かばれませんよ!」
神嶋が珍しくまともに説得を始めた。
まあ、3人しかいないのだから、やってもらわねば困る。
その間、きちんと紗奈を成仏させてあげようと思った黎人が、ずっと祝詞を唱えている。
彼女は元々被害者だったが、その後の行動で加害者にも、なってしまった。
そこをなんとかしてあげたい。
というのが黎人と悠人の中で一致した意見だ。
たぶんこの場に陽織がいたら、そうするだろう。
はじめは抵抗し、苦しんでいた人魚の姿をした紗奈だったが、やがて人の姿に戻り、そして涙を流すと、キラキラと光り、無事、浄霊されて行った。
終わった途端、珍しく黎人が座り込んだ。
「神様でも疲れるんだ。」
笑って言う悠人を、黎人は軽く睨んだ。
白桃を抱えた陽織は、無事に終わったことに、安堵した。
翌日、高校生組は、4人が折った紙風船を持って、情報提供に協力してくれたお店や漁協の人たちにお礼に回った。
その中の一人、高齢のおじいさんが、紙風船を持った途端、4人を拝み始めたのに、周囲がびっくりした。
ホテルでも、チェックアウトの時に紙風船を渡すと、中居さんの一人が気づき、全部貰いたい、と言ったところから、ただの折り紙ではないと、大騒ぎになっていた。
悠人は乗ってきたワゴン車の運転席を湊人に任せてみることにしたため、他のメンバーが大揉めに揉めた。
黎人は自分の車で来たので、助手席に陽織が乗ると、女子3人が黎人の車に乗りたい、と言い出した。
卒業式まであと一週間。陽織がみんなと一緒にいたい、と言ったので、女子4人は無事黎人の車で東京に戻った。




