陽織、泡に包まれる
DNAの結果はやはり源田紗奈だった。
そこから、今回の人魚は彼女ではないか、という推測で明日進めることにした。
「ちょっと、明後日帰るんだよ!明日も調査じゃ遊べないじゃん!」
宏輝と翔太が騒ぎ出す。
「今日、ロープウェイ乗っただろ!」
湊人がちょっとキレる。なかなか進まないので、イラついている。
「もう、今日これから海行って、一気に終わらせようよ!」
「そうだよ!夜なら出るって!」
「出たところを一気にたたこうぜ!」
男子がうるさい。颯斗が一人茫然としている。
「うるさい!」
和嶺がキレた。
「行ってもいいが、男だけだぞ!女子はおいてくからな!それでも良いか?」
和嶺が言うと、一瞬顔を見合わせて、
「うおー!」
「行こーぜ!」
「やったー!」
と、まるで遊びに行くのりで盛り上がった。
「君たち、もうすぐ大学生って自覚あるか?」
悠人が呆れた。
というわけで、女子4人を置いて、男子たちは大人組2人と一緒に夜の海へ出掛けて行った。
呆れた羽織が
「わたしたちは、お風呂でも行こうか。」
というので、4人は温泉に行くことにした。
前日は話し合いなどであまりゆっくり入らなかった温泉に、4人はのんびり浸かる。
「気持ち良いー!」
「あったかーい!」
口々に湯船に浸り、温泉を堪能した。
「卒業旅行、温泉って良いかもね!」
千織がニコニコ笑いながら、陽織の方へ寄って来た。
「うん、わたし温泉初めて。」
陽織が言うと、3人はえ?と驚く。
「今まで、こういうホテルも泊まったことなかったから。」
言われてみると、羽織も初めてだった。
いつも親が忙しくて、家族旅行なんて行ったことがない。美織も温泉旅館は、初めてだった。
結果、こういったホテルに泊まったことがあったのは、千織だけで、意外とみんな初体験ということがわかり、笑ってしまった。
4人はホテルで借りた、自分で選べる可愛い浴衣を着て、部屋に戻ろうとした。
しかし、その時、異変が起きた。
4人が歩く廊下の電気が突然消える。
「停電?」
美織が周囲を見回すが、窓の外に見える、隣の建物は電気が付いている。
陽織はすぐに美織の手を握った。
羽織も、千織の手を握る。
12月のことを思い出し、できるだけ体を寄せる。
すると、どこからか生臭いような異臭が漂ってくる。
そして暗い廊下の奥から、水が流れ流ような音が聞こえる。
チョロチョロと流れる水音に混じり、時折ピチヤン、と水が跳ねる音。
さらにゴボッという、水の中に空気が漏れたような音。
そのうち、4人の目の前を人魚が泳いでいるような景色が現れた。
「人、魚?」
どうやら人魚が見えたのは、一人ではなく、全員が見えたようだ、それを知りお互いにほっとした。しかし、その後人魚のような姿はどんどん大きくなり、ちょうど人魚の足になる魚の尾鰭だけが4人の目の前を塞いだ。そして、4人の足元にはどんどん水が増していき、膝下まで、水に浸かるような感じがしていた。浴衣の裾は濡れて、足が思うように動かせない。
水はさらに増えて、いつのまにか腰のあたりまで来ていた。浴衣の裾は翻り、素足が顕になった。
陽織は美織と繋いだ手をさらに、ギュッと握り直す。
足が床から浮きあがり、そのまま、水の中にいるような錯覚に陥り、溺れそになった。
「美織、ちゃん!」
「ひ、おり、ちゃ、ん!」
4人はそれぞれの名を呼ぶが、ごぼっという水音にかき消され、互いの手が離れそうになった!
後ろにいた千織は、すでに水の中で、もがくような姿勢になっている。
その時、陽織の中から白桃が出て、4人を空気の大きな泡で包んだ。水を大量に飲み込んだ4人の意識は朦朧としている。
その時、
「千織っ!」
「羽織!」
と、それぞれの名を呼ぶ声が聞こえた。




