陽織、ドレスの試着
4人は、東京駅で降りると、そのまま八重洲南口の先、京葉線の乗り場近くまで、地下街を歩いた。
地上に出ると師走の街は、地下よりだいぶマシだ。
有楽町の手前、首都高の下を東に向かって京橋方面に歩くと、途中にアンテナショップや、人気のパン屋さんがある。さらに、その先にハルのお店がある。
「こんにちはー。」
と陽織が入っていくと、ハルがいつもと違う、若い女の子の集団に、目を丸くした。
「試着に来ました。」
「ん、いらっしゃい。どうしたんだい?今日はまた、大勢で。」
「え、と、お友だちです。」
陽織は3人の女の子を紹介する。
3人はハルのお店にある、見たこともないアンティークな道具や、ドレスの見本、たくさんのボディに興味津々だ。
「ハハ、陽織が初めて来た頃みたいだね。」
ハルは笑って言った。
ハルは、まず陽織の髪がかなり短くなっていたことに、顔を顰めた。
「ずいぶんと、切っちゃったねー。」
一応、これでも編み込みで、まとめてきたのだが。
たぶん、イメージが違ってしまったのかもしれない。
陽織は全部で4着のドレスを着るが、夜の会社関係には、3人は出られない。そこで、そちらのドレスが、まずは見たかった。
夜用、イブニングドレス、と言うことで、肌の露出が多い。
ワンショルダーのトップは、まだ少しぶかついている。
「もっと太る、って言うから、少し余裕持って作ったけど、ダメならパッド入れることに、なりそうだねー。」
ハルが眉間にシワを寄せた。
「う、が、がんばり、ます。」
ウエストから下はAラインで後ろに長くトレーンを引くようなデザイン。前は全体に細かく花の刺繍が施されている。しかも、全て白い糸で。
「ウワーッ。」
「きれー!」
「素敵ー!」
三人三様の歓喜の声が上がる。
トップにも、スカートにも、たくさんの小さなリボンも散りばめられていた。
ワインカラーのカラードレスはさらにベアトップで、大きなリボンが左胸についていた。陽織の桜と龍のアザを隠すように。しかし、
「む、ね、胸が、落ちます!」
「しょうがない、カップの中に詰め物するかー。」
と、ハルさんが、残念そう。
スカートはベルラインで、可愛らしい。
「いえ、その。透明なストラップで、お願い、します。」
陽織も、流石詰め物は嫌と言うこと、らしい。
(女装じゃないんだから!)
陽織がドレスを着るたびに3人はパシャパシャ写メをする。特に、夜会用は当日見られないので、一緒に写真も撮った。
「うー!当日、見たいー!」
羽織が叫んでいた。
そのあと、午後の友人関係の時着るドレスを試着した。
白は、可愛らしいジュリエットスリーブだ。ドレスの形もハイウェストのエンパイアスタイルで、陽織の可愛らしいさを強調していた。
ベビーピンクのカラードレスは、大きめのパフスリーブに、目一杯裾を広げたプリンセスライン。こちらも、たくさんのリボンとスワロフスキーを使った花が、散りばめられていた。
特に、中に履くパニエがすごい。
「これ、どうやって座るの?」
と、3人は不思議そうだ。陽織にも、わからない。
「でも、お式は神前なんだよね。」
「うん。こちらも白無垢と打ち掛けを、お母様が用意した。十神家用。なんか、すごくゴージャス。」
と、陽織が遠い目をした。
「神代家、怖い。」
と、羽織がつぶやいた。
それを見た千織の顔が不安に変わる。
「ひ、陽織、ちゃん?だけ、だよ、ね?」
美織と羽織は、うーん、とうなる。
「たぶん、わたしのをそのまま回すんじゃない?」
と陽織が言うと、ハルが
「着物の方はともかく、ドレスは、かなり痩せないと、無理だろうねー。」
と言う感想だった。
千織だって、決して太ってはいない。普通より、ちょっと細身な方だ!
千織がみんなで撮った写真を湊人に送ってきた。
ちょうど教習所でお昼ご飯を食べてる時だった。
「何?何?」
宏輝が覗き込む。
「うわっ、陽織ちゃん?スッゲー可愛い!」
克哉が言う。
「湊人ー、残念だったねー。」
翔太の余計な一言が、湊人の傷心を抉った。
「陽織ちゃん、やっぱ、可愛いよなー。」
「こんな可愛い子が、兄のお嫁さんかー。」
葉鳥まで追い討ちをかける。
湊人は、写真を見ながら、心の傷を癒した。
陽織の隣で笑う、千織を見ながら。




