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ラクリマの群青  作者: 日輪猫
仕組まれた偶然と誰も知らない必然
34/59

No.10 歪んだ塔と蒼い剣 - 7

今回は少しだけ文量多めです!

よろしくお願いします(_ _)

 


 ──ピロリン


 そんな音がプレイヤーとプレイヤーとの腕に連鎖して響き渡り、それと同時に軽い振動を覚えたのは、斜塔アストリア EXステージ転送直後に現れた大樹の地下へと、全員が辿り着いた直後であった。


 その音が耳に届くと反射的に皆がログに視点を合わせ、タップし、メール メッセージフォルダを目の前に表示させた。

 ログの中心部分を発信源に出てきた青白い小さな電子版が、風が吹く度に鋭い音を立てて軽く乱れる。


 送信者不明。現在転送されてから約25分が経過していた頃。

 彼らが見たものは、一枚の正方形をした画像。

 アリの巣の様な形をした、絵なのか地図なのかよく理解出来ないような、そんな画像であった。


 ※


「絵...いや地図か...?」


 表示された画像を目を凝らしながらよく見るソーマ。送られてきた画像を不可思議に凝視するものは彼ひとりではなく、他のプレイヤー達も例外ではなかった。

 右隣にいるアリスも、左隣で挙動不審になっているベルも、自分達の少し先で皆を引き連れていたスウェントル達もジッ...とその画像を見ている。


 幸い、今の所モンスターらしきモンスターは一切出現しておらず、戦闘になるという展開は起こりそうにない。

 この場所は大樹の階段を降りてすぐである「第2の始まりの場所」であるからか、比較的何の変化も起きない場所であった。


 他の者達の行動を一度確認するために、顔を上げ周りを見回すソーマ。そうしてまだ動きそうにないと確認した後、もう一度これが何なのか仮説を立てようとしたその時であった──、


「...ん?」


 画像の名前を「アリの巣」とでも言っておこうか。

 ソーマがそのアリの巣の何通りにも広がった道やいくつもある穴にもう1度目を張り巡らした頃。先ほどとは異なる点が、一つだけあったのだ。


 アリの巣の右上の空間と、中央から真下の方に位置する空間に「一つの大きな赤い点」と「複数の小さな青い点」がチカチカと騒がしくも静かに点滅していたのだ。

 その「青い点」は第二の始まりの場所から一切動いておらず、小さな点々がまるで脈打つかのように別々のタイミングで反応を示しているだけである。

 しかしその一方で「赤い点」は、1回点滅する事に如何にもゆっくり、のそのそと言うように他の空間へと移動していたのだ。


 一体この地下空間がどれだけ広いのかはよくわからない。

 そのためハッキリとした距離感は掴めないが青い点と赤い点の離れ具合から、お互いが重なり合うと言う可能性は今のところ無いに等しいと思われた。


 これが重なり合った時に、一体何が起きるのだろうか。

 そんな好奇心を掻き立てられながら、一度体内の呼吸を入れ替えるように、ソーマはゆっくりと深呼吸を行った。溜めていた息を吐き出すと、動かなかった手足が呼吸を始めたかのように少しだけ痺れた。


 首だけを少し斜めに上げると、何故か明るいこの空間に映える美しい木々や葉が体を揺らしている。

 それに伴い、視界の上方にかかっていた黒髪もサッ、と横に靡く。

 そうしてそれらを揺らす源である新鮮な風が、彼の身体を軽く、スッキリとさせた。


 そのお陰なのか何なのかは分からない。しかし、その直後にソーマはある考察が頭に出てきた。

 それはまるで答えを直接頭に出されたかのような、そんな感覚であった。

 

「なぁ、思ったんだけどこれってさ...」


 まともに話を聞けそうにないベルではなく、比較的冷静なアリスに自分の脳裏に浮かんだ言葉をそのまま伝えようとする。

  ソーマがこちらの方を向いたことに気づき、アリスも首を傾けようとする。


 そんな時であった。スウェントルが再び皆に収集の声を掛けたのは。


「みんな、もう1度だけ集まってくれ! ダンジョン内での進み方と、この地図について話したいことがある!」


 ソーマ達一行の少し先の方で、左手を挙げ、右手を口元に当てながら力強く大声を響かせるスウェントル。それに合わせて、彼のパーティーメンバーも手を挙げて収集を手伝う。


 ソーマが言いかけていた事は、運悪くその声に被せられ、掻き消されてしまった。


「ソーマ? ごめん、何か言った??」


 そしてそれは当然、話しかけていたアリスの耳にも届いていなかった。


「あー、いや、何でもねぇよ。取り敢えずほら、集まろうぜ」


 申し訳なさそうに首を傾げ、少し上目遣いでこちらを伺ってくるアリス。そんな可愛らしい仕草をする彼女に、別に言おうとしていた事が大したことでもなかったソーマは自らの運の悪さに合わせてそれを伝えるのを止めることにした。


 そして皆がその声を聞いてからゾロゾロと奥の方へ集まっているのを見て、自分たちも行こうと話題を変える。これは、彼女が自分が言おうとしていたことに興味を持たせる暇を与えないという目的でもあった。


「ほら、ベルもさっさと行くぞー」


「へ? あ、はいっ!」


 半ば放心状態にすら入ろうとしていたベルにも声を掛ける。

 そうして3人はもう1度作戦会議に参加することになった。


 ※


「さてと、やっとこのダンジョンに着いた所で一度僕が考えている作戦を言っておこうと思う」


 スウェントルが、先程プレイヤー達を集めた時と同じような声量で会議の進行を行う。皆が真剣に耳を傾ける中「何か意見があったら気軽に言ってくれ」と言う声掛けもあった。


「まず、みんなも見たと思うけどこの地図についてだ」


 そして、一度皆がこちらを見ているか確認するためにぐるりと視線を張り巡らした後、彼がまた話し始めた。


「いきなり送られてきてびっくりしただろうが、僕が予想するにこれはこのダンジョン内の地図だ」


 ログをタップして彼が皆に拡大して見せてきた、理解に苦しむあの画像。あれをスウェントルはこのダンジョンの地図であると言い張った。

 それを聞いて、まるで兄弟かの様にみんな同じように驚きを見せたり、やっぱりかと首を頷かせるプレイヤー達。

 ソーマはどちらかと言うと、やっぱりかと頷いていたプレイヤーの方に部類した。


 しかしソーマの考察はこれを前提にしたものであり、彼にはまだもう少し先の考えがあった。

 それをアリスに言おうと口を開いたのだが、結果的にこれは、同じ考えをしていたらしいスウェントルが答えることとなる。


 あの「一つの大きな赤い点」と「複数の小さな青い点」の正体は──、


「これも予想ではあるんだけど、この点は僕達とダンジョンのボスだ」


 彼は堂々を、ソーマと同じ考察を述べた。

 そして、結果的にそれは考察通りのものとなる。


 そんな風に話している間にも、動かない青い点に向かって、大きな赤い点がゆっくりと近づいてきていた。


 こんな明らかにプレイヤー達が有利になるアイテムが何故配られたのか。それが分かるのは、もう少しだけ後の話である。



今まで場面転換の所を ☆ にしていたんですけど、これからは ※ にしていこうと思います!

後、戦闘描写は擬音少なめで頑張りまっす!

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